「もう1つのローカル」を与えられる存在に。ハーチ欧州がイベント・レポート・教育事業に込めた想い【チームインタビュー】
- On 2022年11月28日
- スタッフインタビュー, ハーチ欧州, 欧州サーキュラーエコノミー政策・事例レポート
こんにちは!ハーチの杉山です。今回は、ヨーロッパを中心に活動する当社の事業組織「ハーチ欧州」から2人のメンバーに集まってもらい、代表の加藤とともに、欧州での活動の今までとこれからについて語ってもらいました。チームの活動の背景にある想いを、ぜひお読みください!
参加メンバー
- 富山 恵梨香:ハーチ欧州メンバー。フランス・パリ在住。入社から約4年
- 伊藤 恵:ハーチ欧州メンバー。イギリス・ロンドン在住。入社から約2年半
- 加藤 佑:ハーチ代表
メディアのグローバルな情報網、欧州地域のサステナビリティ施策、新型コロナ……偶然が重なったチームのはじまり
Q. 本日はよろしくお願いします!まずはハーチ欧州立ち上げと、皆さんがチームに参加した経緯を教えてください。
伊藤:私はもともとメディアとして海外の取り組みを取り上げることに関心があり、日本にいた頃から海外の団体にオンラインインタビューをしたり、一緒にワークショップを企画したりしていました。そんな中、2021年にロンドンへの家族の移住が決まり、「せっかくなら現地で仕事がしたい」と加藤さんに相談したのがきっかけでした。もともとハーチにはオランダ・ドイツ・オーストリアなど、欧州各国にお世話になっているパートナーの皆さんがおり、社員が拠点を移すことで欧州地域単体でも動きを取りやすくなるのではないかということで、「ハーチ欧州」という事業組織が立ち上がりました。
富山:私はIDEAS FOR GOODの欧州サーキュラーエコノミー特集の取材で編集部メンバーでフランスに取材に行ったことや、パートナーがフランスにいるという事情もあり、フランスという国自体に前から興味がありました。新型コロナをきっかけに、会社が完全リモートワークになったのも個人的に大きな出来事で。そのときに「東京にいなくてもいいかもしれない」って思ったんですよね。日本にいないからこそ得られる情報を取りにいきたいなと思っていたところに、加藤さんからハーチ欧州立ち上げの話を聞き、それに合わせてフランスと日本の二拠点生活を始めたのがきっかけでした。
加藤:会社としては、サステナビリティ文脈で欧州にずっと注目してきた背景があり、欧州にライターさんが多いのもそうした意識からでした。欧州ではやはりユニークな取り組みが多く、日本の企業さんのニーズも感じています。なので、2人が渡航するタイミングでハーチ欧州という1つの組織にしてしまい、事業として積極的に作っていった方が会社にとっても、2人のキャリアにとっても良いのではないかと考えました。
ハーチ欧州としての1年間の活動
Q. ハーチ欧州では1年間どのような活動をしてきたのでしょうか?
伊藤:チームとして一番長期間にわたって取り組んだのが「欧州サーキュラーエコノミー政策・事例レポート 2022」の執筆でした。こちらのレポートは、EUのサーキュラーエコノミー政策とオランダ・フランス・ドイツ・英国の4ヶ国の事例をまとめたものです。各地域・国のサーキュラーエコノミーに関する体系的なまとめに加え、現地在住者の視点で書いたコラムも8本収録されています。執筆者であるハーチ欧州のメンバーは、政府や企業の取り組みに注目しているのと同時に現地の生活者でもあるので、企業と消費者の目線を橋渡しするような視点で書かれたレポートになっています。
伊藤:また、現地にいるからこそわかる情報をタイムリーに発信するイベントも開催しましたね。テーマは主にサーキュラーエコノミー・サステナビリティに関するものですが、中にはオランダのFashion for Goodという美術館のオンラインツアーなど、現地の団体と一緒に開催したものもあります。レポートが発行された記念に開催したイベントでは、ハーチが開催したイベントで過去最高となる257名の方に参加いただきました。
富山:IDEAS FOR GOODをはじめとするメディアでの発信にも力を入れた1年間でした。ハーチ欧州ならではの企画としては、IDEAS FOR GOOD上で「欧州通信」というシリーズを始めました。欧州通信では、「ファッション」「スーパーマーケット」「暑さ対策」「メンタルヘルス」など毎回のテーマに沿って、欧州各国の色が出たタイムリーな施策を紹介しています。普通の記事はタイトルを読めば内容の予想がつきますが、欧州通信は読んでみないとわかりません。そういう意味では、ウェブ媒体の記事では珍しく、新聞的な情報の出会い方を楽しんでいただけるものになっているかと思います。
富山:さらに、ハーチ欧州主催の新たな取り組みとして、日本の中学校の生徒さんに欧州の情報を届ける授業も開催しました。以前取材をさせていただいた宮崎県都農町にある中学校と欧州各国をオンラインでつなぎ、オランダ・フランス・ドイツ・英国のゼロカーボン施策についてお話ししました。私自身も福島出身で実感しているところなのですが、地方は子どもと大人の出会いの場が限られているなと思います。その一方で、街の規模的に「自分の意見で街を変えられる」という手触り感もあり、実際に生徒さんたちは海外の事例を応用して、都農町でできるアイデアをたくさん出してくれました。
伊藤:教育事業は特に、私たちが学ぶ機会も多いですよね。以前ロンドンで高校生のインターンを受け入れたこともあったのですが、メディアで出している記事に対して「企業の取り組みだけではなく、消費者のアクションを提案するものもあると嬉しい」など高校生からの意見をもらい、非常に勉強になった覚えがあります。
Q. 欧州からの情報発信をする際、大切にしていることは何ですか?
富山:現地にいて感じるワクワク感を伝えたいなと思っています。フランスに住んでいると、サステナビリティは必ずしも堅苦しいものではないんだなと実感します。市民の人が自然にやっているところもありますし、昔ながらのフランスの文化として根付いているところもあります。あとは、広告などクリエイティブを1つとっても、面白い部分があったり、ダジャレが入っていたり、人を惹きつけるのが上手だなと感じるので、そうしたコツなどは日本にも発信していきたいですね。
伊藤:そうしたワクワク感と同時に、「素晴らしさだけを伝えないこと」もチームで意識してきました。よく欧州の国はサステナビリティ文脈で「先進的」と言われますが、現地に住んでいると美しい面以外もたくさん見えてきます。そうした問題を含む背景を伝えることが大事なのかなと思っていて、欧州独自の文脈があるところや、日本と共通する部分などは整理してお伝えするように心がけています。
Q. ハーチ欧州の活動を見ていただいているのは主に日本の方かと思います。今までどんな反応があったでしょうか?
加藤:やはり「現地に住んでいるメンバーが情報を届けている」という部分に価値を感じてもらえているように思います。ハーチ欧州と一緒に活動してみたい、欧州現地に視察に行ってみたいという声をいただくことも多くなりました。
富山:イベントのアンケートなどでは「サステナビリティに関して『先進的な欧州と遅れた日本』という二項対立ではなく、欧州各国の背景も知れた」というレビューもいただきましたね。地に足がついた事例をご紹介することで、欧州との近さを感じてもらえたのではないかと思います。一方で「じゃあ日本でどうするか?」という部分に関しても、多く質問をいただきます。受け取る方が応用形をつくりやすい情報発信の仕方は今後さらに考えていく必要がありそうです。
欧州に来て感じた変化、遠隔コミュニケーションのチャレンジ
Q. 欧州に来て、自分自身になにか変化はありましたか?大変だったことは何でしょうか?
富山:すごくシンプルなのですが、IDEAS FOR GOODをはじめ仕事で情報収集をする際に、フランスだけではなく、欧州地域全体のこともより自分ごとに感じるようになり、心からの興味が湧くようになりました。あと、2022年はちょうどウクライナ侵攻もありましたが、ウクライナの人々の状況もより身近に感じるようになり、自分の身の回りのこととして考えるようになりました。そうした「身体感覚」は日本にいたときとは大きく変わったなと思います。
伊藤:私は仕事のコミュニケーションをするときの態度が変わりました。ロンドンでインタビューをしていると、本当に皆さん楽しそうに話すんですよね。「素晴らしいチームで、素晴らしい事業をしてるんだ」と言われ、来た当初は「すごい自信…」と思っていました(笑)ですが、自分のしていることに誇りを持って、そのポイントをブレなく発信するコミュニケーションにはとても感化され、影響を受けるようになりました。
難しかったことの1つは、日本のチームとのコミュニケーションです。基本ミーティングは欧州時間の朝で、日本で時短勤務をしている人とはそもそも勤務時間が重ならないことになります。そうすると「話し合いを最小限に、無駄なく」というドライブがかかってくるのですが、段々とお互いのチームの動きが点でしか見えなくなってきて、過程にある関係者の想いを汲み取ることなく、結果だけをシビアに見てしまうことがありました。
加藤:その点に関しては、会社としてもチャレンジがあった1年間だったなと思います。今後ますます働く場所も状況もますます多様になっていくなかで、ミーティング・情報共有をどうするのかは、やはり課題だなと。お互い遠隔にいると、コミュニケーションはなるべく非同期的に、文字に残して、曖昧さをなくしていくのが最適解になってきますよね。一方で、そうした極限まで無駄を削ぎ落としたコミュニケーションが取りこぼしてしまうものも多くあると思います。
どうすれば言葉を使わずとも、同期的で非言語的なコミュニケーションや思考方法を失わずにいられるか。それはハーチ自体の課題でもあり、世界規模で解いていく必要があることなのかなと思います。
2年目のハーチ欧州がチャレンジしていきたいこと
Q. 今後はどのような事業に重点を置いていくのでしょうか?やってみたいことはありますか?
伊藤:現地で本当に話題になっていること、地味だけど注目されていることなど、ミクロな情報こそ小まめに発信していきたいと思います。またレポート・イベント・インタビュー記事など今までに経験した方法だけではなく、動画・音声・新しい形式の記事など、色んな表現方法にチームとしてチャレンジしてみたいです。
加藤:「欧州」「世界」のような大きい話ではなく、読者が自分自身そこにいるかのように感じ取れる情報を発信できると良いですよね。そういう意味ではハーチ欧州のアウトプットを通じて「もう1つのローカル」を提供できるようになると良いのではないかなと思います。
富山:私も「手触り感」をテーマにしていきたいですね。日本の方々に実際に現地に来てもらうツアーもそうですが、文章だけでは伝えられないことも伝えられる動画なども強化していけたらいいなと。
加藤:ハーチとしても、パラシュートジャーナリズムでは追い切れない部分や、現地に根を張っているからこそ感じられることは、欧州という地域に限らずどんどん出していきたいです。働いている人の身体感覚に基づいた情報こそ貴重だと思うので、どこにいようがその土地で起きていることの面白さを引き出せるというのは、メンバーに必要な素質だと思います。ハーチ欧州はそういった意味でも、今後1つのプロトタイプになっていくかもしれません。