一度きりの人生が幸せであってほしい。ハーチ代表・加藤が語るサステナビリティの根幹
- On 2020年11月4日
こんにちは!ハーチの宮木です。
ハーチでは、ESG(環境・社会・ガバナンス)のそれぞれの領域でサステナビリティの実現に力を入れており、以前紹介したゼロウェイストチャレンジや福利厚生だけでなく、世界のクリエイティブな社会課題解決アイデアを発信するIDEAS FOR GOODや、ESG投資に関する記事を配信するHEDGE GUIDEなど、メディア事業の中核にサステナビリティを据えています。さらに、ハーチ社員全員が参加する月次の全社会議でも、会社や社員のサステナブルなありかたを追求するためのアイデアや方法について考える機会があります。
今回は代表の加藤に、なぜハーチの経営においてサステナビリティを重視しているのか、加藤を突き動かすモチベーションの源泉となるものや、数々のアイデアの根幹にある考え方について聞いてみました!
自分の好きなことで世の中をよくする仕組みを作りたい
Q.「インターネットとコンテンツの力で、社会をもっとよくする仕組みをつくる(Content Marketing for Good)」このミッションを掲げた経緯・加藤さんの原体験とは何なのでしょうか?
Content Marketing for Goodを分解すると、「Content Marketing」と「For Good」に分けられます。「自分の好きなこと」を通じて「世の中をよくする」仕組みが作れたらいいな、という想いが創業時にありました。
僕の場合は書くことが好きなので、書く仕事を通じて社会に貢献したいという想いがあり、それを一番実現しやすいのがコンテンツづくりであり、今のウェブメディア事業だったんです。
もともとは、大学時代にベンチャーでの仕事を体験し、将来は起業したいなと考えていたのですが、そのためにも新卒では一番性格的に苦手だった営業力を鍛えようと思い、リクルートエージェントに入社しました。
ある程度自信がついたところで退職し、友人らとともにウェブマーケティングの会社を経営しました。その後、別の会社を共同創業してサステナビリティに特化したウェブメディアを立ち上げる経験を経て、改めて「書く」仕事の楽しさを実感し、30歳の手前になってようやく自分の好きなことを通じて社会に貢献する方法を見つけたのです。
Q.加藤さんは社会に貢献したいという気持ちが人一倍大きいと思いますが、そのモチベーションは何だと思いますか?
社会のためというよりも、自分がそうしたことをするのが好きだから、という感じです。これまでの原体験と、好きなことを追求してきた結果が今を作っていると思います。
例えば僕は横浜の育ちなのですが、かつての横浜はまだ自然も豊かで、友達と森を探検したり川で魚を釣ったりして遊ぶのが日常でした。一方で、そうした自然がどんどんと切り崩され、マンションが建てられていく中で育ったので、環境破壊を目の当たりにして、小学生のときにはクラスの皆で「自然を壊さないでください」という手紙を市長さんに書いたり、学校内にビオトープを作って野鳥が戻ってこられる居場所をつくったりと、いろいろな体験をさせてもらいました。だから、教育を受ける中で自然と「環境や社会問題には取り組むべき」だし、「取り組みたい」という想いも生まれたんだと思います。
また、大学一年生のときに「キャサリンハムネットロンドン」というファッションブランドに出会い、とても好きになりました。当時は「エシカル」という言葉も知りませんでしたが、このブランドは、Tシャツのデザインにとても社会性の強いメッセージを入れているんですよね。ファッションを通じて社会的なメッセージを発信するというスタイルがすごくかっこよく思えて、将来はそうしたデザインやクリエイティブの力を使って社会をよくする仕事ができたら素敵だなと当時から思っていました。それが今のハーチやIDEAS FOR GOODの運営にも活かされていますね。
願うのは、自分、家族、そして社会の幸せ。
Q.今のハーチで推進しているサステナビリティの根幹にあるものは何でしょうか?
ハーチのサステナビリティの根幹には、前提として自分を含めて「幸せになりたい、幸せになってほしい」という気持ちがあります。僕もそうですが、メンバーが一度きりの人生の貴重な時間の一部を使って関わってくれている以上、自分たち自身、恋人や家族、そしてその先にある社会の未来が少しでもよい方向に変わってほしいというのが願いで、会社の存在意義はそれしかありません。だから、サステナビリティが目的というよりも、幸せになるためには環境がよいほうがいいし、どうせ仕事するなら世の中のためになることをやりたいよね、ということです。
また、読者の人の未来が少しでもよい方向へと変わっていってほしいというのはどのメディアにも共通する考えです。取材先の方々も同じで、僕たちのメディアで取り上げられたことがきっかけで、お問い合わせが来たり売上が伸びたり、事業の先にある未来がよりよくなってほしい。ライターの方々もそうです。自分なりによい経験が積めたとか、人生がより豊かになったとか。関わってもらう人全員の未来がよい方向へと変わっていけるようなメディアが理想だと思っていて、それができていれば、テーマが何であろうと生き残っていけると思うんです。それが持続可能ということですよね。
それと、大事にしているのが「自分らしさ」です。一人一人が自分らしくあること、つまりそれは自分の凸凹を表現すること。苦手なことは助けてもらい、得意なことで他のメンバーに還元する。苦手なことを素直に周りに伝えれば、誰かが誰かの役に立つ余地が生まれます。誰かの役に立つって嬉しいし、幸せなことですよね?「自分らしくあること」は「周りの人の幸せ」につながっていくと思うんです。
誰もが持っている弱い部分のセーフティネットでありたい。
いつも役員同士で話しているのですが、ハーチは弱者を前提とした組織作りをしたいと話してるんです。誰もが怪我をしたり病気になったり、弱い立場に置かれることがあるじゃないですか。だからこそ、自分が弱者になったとき、この組織があってよかったと思えるような組織をつくりたいんです。人は弱いものだということを前提とした価値観、組織づくりをしたい。そこに所属することで自分たちが救われるような。
Q.優しい世界ですね。なぜ加藤さんがそう考えるのかに興味があります。
自分が弱者だっていう認識があるからだと思います。競争の社会では勝てないと思うからこそ、コンペティションではなくてコラボレーションで生きていたいんですよね。自分にとって優しい世界を作りたいという、つまり自分なりの生存戦略なんです。自分のように弱い人はたくさんいると思うから、そうした人にとってハッピーな世界を作れば、自分にとっても幸せな世界になるかなという。
Q.加藤さんは自分を弱い人間だと思っているんですか!?
例えば学校だと弱いキャラと強いキャラっているじゃないですか。そういう社会だと僕は確実に弱いキャラだから(笑)。でも弱いからって価値がない訳ではないですよね。それに、一見強そうに見えても、誰しも弱い面ってあると思うので、そういう部分にセーフティーネットを作りたいです。
どういう会社がいいのかという答えはありません。正解がない時代で、どれだけよい問いを立てていけるか、個人的にはアートに近い組織が理想なんじゃないかと思っています。みんなで妥協せずに問い続ける組織というか。そもそも何のために売上が必要なのか、本当に組織が必要なのか、オフィスは必要なのか。与えられた枠組みの中で考えるのではなく、自分たちなりに問いを立てて、解を見出していく。一つの挑戦ですね。
売上・環境・繋がり..模索する組織の「幸せ」
Q.ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点でこれから達成したい目標は何ですか?
環境面では、カーボンニュートラルかつゼロウェイストを目指しています。気候変動についてはできる限りエネルギーを使わないようにしたり、証書によるオフセットをしたり、できるものから順次導入していますが、もっと大胆に進めていきたいです。ゼロウェイストチャレンジもやっていますが、もう一歩進めて、企業活動が循環の一部になり、仕事をすればするほど環境が良くなるような仕組みを考えている最中です。ハーチの事業はそんなに環境負荷が高いわけでもないので、この2つは2021年までに達成したいと思っています。
社会面においては、メディア全体として配信する記事のうち、ソーシャルインパクトの創出を目指す企業・団体に関する情報の配信比率を50%まで高めるという目標を設定しています。結果として生まれるインパクトではなく、それ自体を目指している団体が対象です。記事を作れば作るほど、社会をよい方向に変えていこうと取り組む人がエンパワーされたり、読者の方々のよりよい未来に向けた選択肢が広がるようになれば、めぐりめぐって経済的な成果にもつながると考えています。
ガバナンスについては、Bコーポレーションの枠組みを使って組織の根本から見直しをかけている所です。例えばハーチでは以前から役員の間で売上目標はありましたが、そこに加えて環境的側面と社会的側面の目標も含めようとしています。環境面・社会面のサステナビリティの土台がガバナンスです。経営メンバーの中にも様々な意見はありますが、一つ一つ丁寧に話し合いながら進めています。
Q.個人的な意見なんですが、サステナビリティを推進するうえで、何より売上の成長を第一に考えることへの疑問もあります。
本当にその通りで、売上以外の指標で「企業としてThriving(繁栄している)な状態とはどんな状態なのか」を考えて、目標を決める機会を設けたいと思っています。一方で、成長のパラダイムの中で僕たちが生きているのも事実。Degrowthといった考え方もあるなか、どこまで振り切るのかは模索していて、ここ最近ずっと考えています。
ただ、実はうちの会社の強みは、むしろ僕が「売上目標はやめて違う指標で経営したい」と思っても、経営メンバーの中ですぐには合意がとれないというところにあると思っています。
売上に直接的にはつながりづらい社会的な投資に対して、「それって本当に意味あるの?」「そうは言っても売上も大事だよね」という考え方も経営陣の中にはあるので、こういう話をすると一回は揉めるんですね(笑)。でも、そこで揉む作業があるからこそ、経済性も社会性も両立させた、より魅力的なアイデアやアウトプットが生まれるんです。この作業がなければ、理想論で終わってしまいます。
僕たちも給料が上がれば素直に嬉しいわけで、確実に成長することの恩恵は受けていますよね。自然界を見ても、「無限」ではないだけで、植物も動物も成長はしていきます。大事なのは、どのように一人一人が働く満足度を高めながら、持続可能な形で成長していけるかではないかと思います。
サステナブルな事業のあり方をどう目指すべきかを考えるうえでは、最近立ち上げたサステナブルな事業開発プラットフォーム「IDEAS FOR GOOD Business Design Lab」も、実はハーチが一番の実験場になっています。
幸せの定義が人によって違うからこそ、どんな企業がサステナブルなのかという問いにも正解はありません。「お金」に対する考え方もそうだし、「人とのつながり」もそうだし「環境」もそう。一人一人が自分なりの正解を見つけていかなければいけないからこそ、自分たちの組織にどんな問いを投げかけるかが大切になっていくのではないでしょうか。
あとがき
代表へのインタビューにもかかわらず、言葉を選ばず質問を投げかけてしまいましたが、真剣に向き合いながら本音で答えてもらえるのが、加藤の器の大きさだなと感じます。「自分や周りの人が幸せでいたら結果的に実現するのがサステナビリティ」という言葉には目から鱗が落ちました。「サステナビリティのために何かをする」のではなく、私たち自身や周りの人を幸せにするという根源にあるものを大切にしたいものです。
自分が幸せであるためには「自分らしさ」に向き合う必要があります。自分の中にある「凸凹」こそが周りの人の喜びや幸せにもつながります。この凸凹が多様だからこそ議論が生まれてより強いアウトプットに繋がり、ひいてはその会社らしい独自の幸せの指標を見つける近道になるのかもしれません。さらにその幸せを追求していくことで結果的に会社も社会も持続可能になっていく。そんなヒントをこのインタビューからもらいました。
次回はハーチ社内座談会で、ハーチのサステナビリティについて聞いてみました。お楽しみに!