【香港出張】アジアの最新ジャーナリズム動向をレポート。香港で議論されていたメディア業界の未来とは?
- On 2018年7月5日
- ハーチ株式会社
みなさん、こんにちは!ハーチの水野です。
5月下旬、社員4名で香港でおこなわれたジャーナリズムに関するカンファレンスに出席してきました。香港での熱いカンファレンスの様子についてお伝えしたいと思います。
ジャーナリズムカンファレンスとはどんなもの?
今回、New Now Next Media Conference 2018というカンファレンスに参加してきました。
SNSやテクノロジーの発達で、ニュース情報を集め配信するやり方が日々変化しています。デジタル時代に情報発信することはこれまでとどう異なるのか?そしてどう新しいやり方を適用すればいいのか?
このカンファレンスでは、世界のメディア業界で起きている最新課題について、ジャーナリズムのプロフェッショナルたちと参加者がライブディスカッションやワークショップをとおして考えてきました。
このカンファレンスは、アジア・アメリカン・ジャーナリズム・アソシエーション(AAJA)というアメリカに本部を持つ非営利教育機関が主催しています。アメリカとアジアに21支部あり、メンバーは1700名以上におよぶ、ジャーナリスト間の情報交換やサポートを目的とした団体です。
今回のカンファレンスには、Bloomberg, Forbes, NY times, CNN, Wall Street Journal, AFPなどの世界の大手ニュース配信社や、大学教授、フリーランスジャーナリスト、PRスペシャリスト、ジャーナリズムを学ぶ学生など、100名以上が参加していました。
世界の最先端のジャーナリズム事情とは?
今回3日間のカンファレンス中、合計30個ほどのディスカッションやワークショップが同時進行していました。そのなかで、私たちが出席したものを中心にとくにおもしろいなと思ったものをご紹介したいと思います。
ニュース配信にデータを活用する必要性
まず、香港で発行されている日刊英字新聞であるSouth Morning China Post(SMCP)の CEOのキーノートでキックオフした、今回のカンファレンス。SMCPは、データチームだけでかなりの人数を抱えているほど、データドリブンな配信をしているそうです。ビッグデータに基づいて読まれる記事を分析し、カスタマーのニーズに合った記事を作り、届けています。
それぞれのチャネルに合わせた情報発信
次に将来のニュースルームについて考えるパネルディスカッションに出席しました。インターネットやSNSというインフラが整ってきたことで、従来のマスメディアだけでなく、大小さまざまなメディアが乱立している現在。
そんな状況のなか、読者は多種多様なチャネルから自社や個人のサイトに訪れます。そのため、同じ内容のニュースでもそれぞれのチャネルにカスタマイズした発信の仕方が必要という話がありました。
たとえば、最初から自社サイトに来る人とツイッターのリンク先から飛んでくる人では、到着するページは同じでも求めている情報は異なります。もちろん、それは国や世代によっても異なります。
メディア業界で働く多くの人は、フェイスブックとツイッターのリード文もそれぞれに合わせたものが必要なことを頭ではわかっているでしょう。けれど、スタートアップ企業だと人手が足りないこともあって、そこまで手が回らない現実があるのではないでしょうか。しかし、良いコンテンツを作るだけでなく、いかに届けるかも同じくらいしっかり考えて、行動に落としていかないといけないと痛感しました。
プロフェッショナルが語る、良いジャーナリスト像とは?
良いレポーター、エディターとは?というテーマで、グローバルニュース配信企業で働くプロフェッショナルたちがそれぞれの考えを述べていました。
まず、Good Journalistであること。つまり、適切な疑問をもち、ストーリを展開し、良いアウトプットをする。そして、速さより正しさを追求することが求められます。また、オーディエンスを理解することも必要です。そして、ニュースに対する熱意をもち、真実にコミットするマインドセットをもちましょう、という話でした。スキルセットとして、データ処理やツイッターでの拡散方法、2分の動画でメッセージを伝えられるスキルも強みになるというお話がありました。
メディア業界の最先端を知っているプロフェッショナルからそのような話があると、良いジャーナリストになろうとやる気が出ますね!
加工してないからこそ伝わる真実
アジアのミレニアル世代についてのパネルディスカッションでは、携帯で撮った動画でも大手メディアでカバーされていないニュースを届けられることが紹介されていました。南インドのヒジャブ文化について女子生徒たちに話を聞く動画だったのですが、ほとんど編集していない生の映像だからこそ伝わってくる臨場感や本物感を感じました。
クライアントと読者をつなぐネイティブ広告の苦労
メディア業界で働く人なら一度は触れる機会があるであろうネイティブ広告についてのパネルディスカッションもありました。マネタイズに苦労するメディアビジネスの強力な収入源のひとつであるネイティブ広告。
しかし、いくらお金をもらって書いているからといって、掲載するメディアまたはライターとしての信頼性を失っては意味がありません。そこのバランス感覚については、どんなメディアも悩んでいるようでした。
フリーランスの悩みは万国共通
デジタル時代のフリーランスというパネルディスカッションでは、フリーランスならではの悩みが共有されていました。お金のための仕事とミッションのための仕事のバランスをとることや、孤独を感じるときの対処法、またタイムマネジメント、締め切りを守ることは絶対必要であるという話がありました。フリーランスの悩みは万国共通するところが多いんだなと感じました。
まとめ
私は今回はじめてジャーナリズムのカンファレンスに参加しました。どのパネルディスカッションでもジャーナリズムやメディアの実務についている人からの具体的なお話が聞けて、とても刺激的でした。また、コーヒーブレイクやレセプションでほかの参加者とも知り合うことができ、大変実り多い出張でした。
ひとつ思ったことは、私たちがメディア運営する上でいま悩んでいること、たとえばメディアのマネタイズやSNSとの上手い付き合い方、スピードとクオリティのせめぎ合いなどは、ほかの人も悩んでいるんだなということです。
また実際にグローバルメディア企業の人とお話しする機会もあり、ジャーナリズムや真実に対する熱い思いやコミットメントを感じました。それと同時に、私も努力を怠らず自分の能力を磨いていきたいといい刺激をもらいました。
おまけ
カンファレンス終了後、「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深センを見学してきました。香港から電車に乗って約1時間。パスポートを見せて深セン側に入ると、そこはまるで別世界。香港では誰かに話しかけると英語が通じやすかったのですが、深センの街中で見る・聞くのは、ほぼ中国語のみでした。
深センの一番の繁華街である「老街」に行くと、日曜日だったこともあってか、人・人・人。各店舗から大音量の音楽が流れ、店先で商品を売っている売り子たちが声を上げ、街はカオス状態でした。消費への熱を感じました。
一方で、小さな店舗でも、モバイルぺい(携帯でQRコードを読み取るだけで支払いができる)が普及しているのには驚きました。
展望台から見下ろした深センは、高層ビルが建ち乱れる場所。今回は中心部しか行けなかったので、また機会があれば、もっとディープなところに侵入できたらおもしろいんだろうなと思いながら、香港へ戻ってきました。