ギフトエコノミーを体現する。ブロックチェーンを使ったピアボーナス制度「GIFT」を導入しました。
- On 2019年4月4日
- ブロックチェーン
こんにちは、ハーチの加藤です。ハーチでは、2019年の3月から新たにブロックチェーンを活用したピアボーナス制度「GIFT」の試験運用を始めました。今回は、その取り組みについてご紹介したいと思います。
※「ピアボーナス」とは従業員同士がボーナスを贈り合える仕組みのことで、最近は従業員のモチベーションや満足度向上施策の一環として徐々に広まっています。
そもそもの経緯:MVP制度では届かない感謝の声
詳しいピアボーナスの仕組みを紹介する前に、そもそもなぜ新しい仕組みを導入したのかについて説明したいと思います。ハーチでは、過去2年以上にわたって月間MVPという制度を導入していました。月間MVPは、その月にハーチが掲げている5つのバリュー、「助ける」「感謝する」「挑戦する」「磨く」「楽しむ」をもっとも実践していた人に贈られるもので、賞金は1万円。経営陣を除いた従業員だけを対象に、従業員同士が投票するという仕組みでした。
このMVP制度もそれなりに機能していたのですが、一つ問題がありました。それは、毎月、様々な人にたくさんの票が入り、多くの感謝や賞賛コメントが寄せられているにも関わらず、いつも賞金を持っていくのは最も多くの票を獲得した一人だけで、Winner Takes Allの状態になってしまうという点、もう一つは、従業員が一人一票ずつ持つという仕組みだと、どうしてもポジション柄、日々の仕事のなかで他のメンバーと関わることが多いメンバーに票が偏りがちになってしまうという点です。
これらの問題を解決するべく、MVP制度を廃止して、ピアボーナス制度を導入したほうがよいのではないか、という話を社内でもしていました。
しかし、ただ既存のサービスを活用してピアボーナス制度を導入するだけでは面白くないので、どうせやるのであればブロックチェーンを活用して、自分たちの好きなように仕組みを作りながら制度を運用していきたい。そう考え、ゼロからハーチに合ったピアボーナスの仕組みを創ることにしました。
ギブすればギブするほど大きくなる経済「GOOD」と「GIFT」
ブロックチェーンを使ってピアボーナスのシステムをつくるにあたって考えたのは、みんなが相手にギブをすればするほど、自分も得をするという仕組みを創るということでした。せっかくピアボーナスの制度を用意した以上、できるかぎりボーナスを与えあってほしいというのがその狙いです。
いろいろと考えた結果、当社では「GOOD(グッド)」というトークンと、「GIFT(ギフト)」という2種類のトークンを用意することで、この世界観を実現することにしました。具体的な仕組みは下記の通りです。
従業員には、毎月1,000GOODトークンを配布します。メンバーはこの配布されたGOODトークンを100GOOD単位で好きなメンバーに付与することができます。また、GOODトークンを付与するときは、感謝のコメントも添えるようにします。メンバーは、100GOODを10人ずつに付与してもよいですし、特に感謝をしている一人だけに1,000GOODを付与しても構いません。好きなメンバーに好きなだけ付与することができるようにすることで、普段から関わる人数の違いによって得られるボーナスが偏るのを防ぐ仕組みとしました。なお、この1,000GOODは次の月に持ち越すことはできないようにすることで、当月中にできる限り使い切ってもらうインセンティブを用意しました。
また、GOODとは別に、もう一つ「GIFT(ギフト)」というトークンを用意しました。このGIFTトークンは、誰かが誰かにGOODをプレゼントすると、それと全く同量のGIFTが会社共通のウォレットに自動的に貯蓄されていく、という仕組みとなっています。そのため、メンバーはGIFTを誰かにあげたりすることはできません。
例えばAさんがBさんに200GOODを上げると、自動的に200GIFTが共通ウォレットに貯まっていくという仕組みです。このGIFTは、毎月参加者全員に等しく配分されるようになっています。
そして「1GOOD=1GIFT=1円」というレートを設定し、メンバーは自分がもらったGOODに等分されたGIFTを加えたぶんの金額が、毎月の給料に上乗せして支払われるというルールにしました。
こうすることで、参加者は積極的にGOODを誰かに贈れば贈るほど、結果としてGIFTの総量も増え、自分の最終的な取り分も増えるという仕組みを創りました。
1GOOD=1GIFTとしていますので、かりに全員が自分の持つGOODを贈りきった場合、最大でこのギフト経済の規模は2倍になる計算になります。分かりやすく実際の数字で説明します。現在このピアボーナス制度に参加しているメンバーは20名で、毎月一人あたり1,000円分のGOODトークンが与えられるため、それを全員が誰かにプレゼントしきると最大20×1,000円=20,000円分のGIFTトークンが会社の共通ウォレットに貯まることになります。毎月会社が用意する予算は2万円から最大4万円となり、その総額はメンバー同士がどこまでGOODを贈り切れるかによって変動する形になります。
これが、新たに導入したピアボーナスの大まかな仕組みです。
NEMのブロックチェーンを使って実装
ピアボーナスのシステムの設計は上記の通りなのですが、実装にあたっては、NEMのブロックチェーンを活用しました。実際のシステム開発については、現在ハーチが運営している金融投資メディア「HEDGE GUIDE」でエディターとして活躍してくださっている合同会社むすびての鈴木さんのチームに開発をしてもらいました。
運用にあたってはNEMのブラウザウォレットを全社員にインストールしてもらい、そのウォレットを通じて相互にトークンをやり取りする形にしました。
実際にブロックチェーンを通じてトークンを送付するのははじめてというメンバーが多かったので、導入をする際には社内での利用方法に関する説明会も開催しました。
説明会開催後は、さっそくみんなGOODの送付にチャレンジ。はじめての体験に戸惑いつつも、楽しそうに送付していました。
初月の運用結果
気になる初月の運用結果は、下記のような形となりました。
- 参加者:20名
- 送付されたGOOD:18,600 / 20,000
全員に配布された合計20,000GOODのうち18,600GOOD、90%以上がしっかりと誰かの手にピアボーナスとして届けられました。初月の運用としてはかなりよい結果だったのではないかと思います。
感謝のコメントともに多くのGOODが流通しているのを見て、やはりメンバーからメンバーへの感謝の気持ちが可視化されるというのはとてもよいなと実感しました。
実際にGOODを受け取ったメンバーからは「peer bonus、すごいいいね!!たくさんの人に褒められてうれしい!なかなか言わないことを伝えられて、送るほうももらうほうもテンション上がる!がんばろ!」というポジティブなフィードバックももらえました。
またまだNEMのブラウザウォレットの操作に少し分かりづらい部分がある、毎回の給与反映への集計が自動化できていないなどの課題はいくつかありますが、実際にブロックチェーンを使ってお互いにボーナスを贈り合うという新しい取り組みを社員全員が体験できたことはとても良かったと思います。
今後の運用について
今後は、誰が誰に対してどの程度GOODを贈っているのかなどを分析しながら、メンバーの評価の質向上や業務分担の改善ツールなどとしても活用していきたいと思っています。やはり経営側の人事評価だけだと見えきれない部分があるため、メンバー同士の評価により少しでも経営側の評価と実際のパフォーマンスとの乖離を補完できればよいなと考えています。
この仕組みの導入にあたっては、鈴木さんに本当に助けられました!ありがとうございます。(※もしこのブログを見て、同様の仕組みを導入してみたいという方がいらっしゃいましたら、こちらよりご連絡ください。今後、合同会社むすびてさんと共同で、企業向けのピアボーナス運用サービスも提供していく予定です。)