IDEAS FOR GOODでの職業体験からイギリス在住の高校生が学んだ、よりよい社会を作るジャーナリズムとは
- On 2022年4月18日
- IDEAS FOR GOOD, ウェブメディア, ジャーナリズム, メディア, ロンドン, 編集部, 職業体験, 課題解決
こんにちは!IDEAS FOR GOOD編集部の伊藤恵です。
2022年4月上旬、IDEAS FOR GOOD編集部で初めてとなる取り組みとして、イギリス・ロンドンで2日間、現地在住の高校生1名にIDEAS FOR GOOD編集部の記事執筆からSNSのコンテンツづくりまで、職業体験をしていただきました。実際にメディアの仕事を通じて感じたこと、そしてこれからのメディアについて考えることなどをプログラム終了後に振り返ってもらいました。
プロフィール
田幸美布さん
イギリス在住の高校2年生。幼児期をロンドンで過ごした後帰国し、2019年に14歳で再び渡英する。中学・高校で学校新聞に携わったことでジャーナリズムと社会学に興味を持つ。また、現在通うインターナショナルスクールで文化や価値観の多様性を直に経験し、サスティナビリティやウェルビーイングに対する各国のアプローチに関心を抱くようになる。
プログラム内容
- IDEAS FOR GOODメディア講座(オンライン)
- 記事執筆・編集
- クリエイティブ・ソーシャルメディア講座(オンライン)
- 写真撮影・編集
- SNS投稿
Q. 実際にIDEAS FOR GOODの仕事を体験してみてどうでしたか?印象に残っていることを教えてください。
職業体験をするのは今回が初めてで、最初はものすごく緊張していました。でも、IDEAS FOR GOOD編集部の皆さんがとてもリラックスした雰囲気で仕事をされていて、おかげで私も純粋にプログラムを楽しめた気がします。記事の執筆の際には、目を引くタイトルの付け方、読者を意識した言葉遣い、文章のつながり、音読でリズム感を確認する方法など、たくさんのアドバイスを頂き、ライターとしてレベルアップできたのではないかなと思います。
ほかには、IDEAS FOR GOOD編集部の動画クリエイターのMasatoさんが、ハーチ社内で定期開催しているクリエイティブ講座で、「カメラを構えて写真撮影をする前に、まず自分が受けた印象やその場の雰囲気を意識してみよう」と仰っていて、なるほどなと納得しました。オフィスの近くにあるエキシビションを訪れたときも、伊藤さんが撮影の前にスタッフの方に話を伺うことでストーリーの深掘りに努めていて、その姿がとても印象的でした。ジャーナリズムにおいて、読者に興味を持ってもらうことももちろん大事ですが、まずは自分がトピックに関心を抱いて、先入観なしに理解しようとする姿勢を持つことが大切だなと感じました。
Q. 他のメディアに比べて、IDEAS FOR GOODがユニークだなと思った点はありますか?
以前は、メディアが情報を発信する過程は形式ばっていて堅苦しいイメージがありました。ですが、IDEAS FOR GOOD ではこのプロセスが思った以上に「軽く」行われていたので驚きました。これは、編集部の方々が適当に記事の内容を考えていたというわけでは決してなくて、「面白い」と感じたアイデアをチームとどんどん共有している様子を、意外に感じたという意味です。この編集部の「軽さ」は、IDEAS FOR GOODならではの柔軟性を投影していると思います。
お話を伺ったところ、メンバーの皆さんがジャーナリズムを専門にされてきたわけではなく、それぞれ全く違う職業経験を持っているのだそうで、ライターの興味のある分野もさまざまなことがわかりました。IDEAS FOR GOODでは、その興味関心の違いが尊重されているからこそ、食やファッション、自然環境など、バラエティに富んだテーマを扱うメディアになっているのではないかなと思います。
Q. これからIDEAS FOR GOODでさらに読みたい、見たいと思うコンテンツはありますか?
編集長のKimikaさんがIDEAS FOR GOODの概要を説明してくださった際に、「社会問題を提示するだけでなくその解決策を紹介するメディアだ」と教えてくださいました。その趣旨に沿ったポジティブな記事をこれからも提供してほしいなと思いました。最近のニュースを見ていると、少なからず社会に対してマイナスな印象を抱いてしまうような出来事ばかりですよね。そんななかで、明るい未来を作るために努力している人がいること、今あるテクノロジーを駆使すればグローバルな課題を解決する糸口も見つかること。そのような事実を読者に示してくれるコンテンツがさらに増えるとよいのではないかなと思います。
あとは、これは高校生の観点からになってしまいますが、スタートアップもしくは大企業による解決策だけではなく、いわゆる一般人である私たちがどうやってこの問題解決に貢献できるかも伝えられたらよいのかなと思います(例えば、サステナブルな食品開発に関する記事であれば、スーパーに行くときにパッケージをよく見てから買い物をしよう、とアドバイスするなど)。もちろん、メディアが「これが正しい」「これは間違っている」と考え方を押し付けるのはタブーだと思います。ただ、消費者として、社会の一員として、読者に手が届きやすい「解決策」のアイデアをもっと提示できたら素敵だなと思います。
Q. このプログラムを通じて、メディアやジャーナリズムに対して見方が変わったことなどあれば教えてください。
プログラムを通じて気づいたことは、ジャーナリズムは「共同作業」であるということです。記事の執筆などは大体個人作業ですが、コンテンツの内容を決定するとき、記事の編集をするとき、ソーシャルメディアに載せる画像を選ぶときなど、どのプロセスも複数人が関わっていることに驚きました。正直に言うと、学校内のメディアにしか貢献してこなかった私としては、ジャーナリズムにチームワークはそこまで重要ではないと考えていました。しかし、IDEAS FOR GOODで仕事をさせていただいて、この「共同作業」の重要性に気づけた気がします。
正確で偏見のないニュースを届けるには、複数の視点から同じ情報を捉えることが大切です。私も実際に記事を書かせていただいたとき、編集者の方のコメントを見て「これは見落としていたな」と思うことが何度もありました。しかし、それらの修正点を鵜呑みにするのではなくて、本当に必要な変更なのか、一つずつ伊藤さんと確認したことも印象に残っています。自分または他人から与えられる情報を常に俯瞰的に見つめ、ストーリーをよりよい形で提供すること。それこそがジャーナリズムなのかなと私なりの結論に至りました。
まとめ
職業体験の期間中、記事執筆から現地での写真撮影まで、意欲的に参加してくれた田幸さんの姿が印象的でした。IDEAS FOR GOODに掲載する情報は「未来のための課題解決策」に絞られていますが、それがすべての人々にとっての解決策であるとは限りません。IDEAS FOR GOODのチームでは、トピックの重要性だけではなく、特定の解決策が「誰かを排除してしまうことになっていないか」という批判的な視点や議論の余地も大切にしています。今回のプログラムを通じてそうしたメディアとしての態度も体験いただけたかと思います。
ハーチではこれからも教育分野に関わる機会を積極的に創出していく予定です。