【提携先インタビュー#03】コロナ禍でも「つながれる」場所を。地域の社会課題と向き合う栃木の一般社団法人えんがお
- On 2022年1月27日
- UU Fund, えんがお, 一般社団法人えんがお, 世代間交流事業, 地域コミュニティ, 地域サロン, 寄付, 社会課題
こんにちは!ハーチが運営するIDEAS FOR GOODで編集やライティングなどを担当している伊藤です。
少子高齢化がますます進む日本。将来の社会を担う人手不足という課題はしばしば耳にしますが、高齢者の「生きやすさ」が取り上げられることは、そう多くありません。実は日本には、一人暮らしで頼れる人もいない、孤立状態の高齢者が数多くいます。そんな孤立したおじいちゃん、おばあちゃんをはじめ、若者や障がい者など、まちに生きるあらゆる人々が立場の違いを超えて集える居場所をつくりたい──IDEAS FOR GOOD編集部は、そうした想いから「つながり」をテーマに活動する一般社団法人えんがおさんを応援したいと思い、昨年、UU Fund(ユーユーファンド)※を通じて寄付しました。
今回は、えんがお代表の濱野将行さんに、創業の経緯や当社からの寄付金の活用方法について、お話を伺いました。
※UU Fundとは、当社が運営するウェブメディアの1UU(ユニークユーザー)につき0.1円をNPOなどの団体に寄付するという当社独自の取り組み。読者を増やせば増やすほど、環境や社会がよりよくなっていく仕組みを作りたいという想いから、昨年スタート。
回答者のプロフィール
濱野 将行 氏:一般社団法人えんがお 代表
栃木県矢板市出身、作業療法士。大学卒業後、老人保健施設で勤務しながら「学生と地域高齢者のつながる場作り」を仕事と両立する中で、地域の高齢者の孤立という現実に直面。根本的な解決に届く地域の仕組みを作るため、2017年5月「一般社団法人えんがお」を設立し、作業療法士の視点を活かしながら、高齢者と若者をつなげるまちづくりに取り組む。その他、大田原市第一層協議体委員、生涯活躍のまち推進協議会委員、栃木県協働アドバイザー、認定NPO法人宇都宮まちづくり市民工房理事としても活動。
Q. えんがおはどんな団体ですか?
一般社団法人えんがおは、設立当時20代だった3人で立ち上げた会社で、そのほか地域の行政や企業の方、学生ボランティアも運営に携わっています。
活動内容は、高齢者の生活の困りごとを支援する生活支援のほか、地域サロンや子供の居場所づくり、若者の活動拠点作りや地域食堂、空き家を活用した障がい者向けのグループホームの運営など。人とのつながりを感じられる社会を目指して、子供から高齢者、障がいのある方など、立場や世代に関係なく日常的に関わり合える環境づくりに取り組んでいます。
立ち上げたきっかけの一つは、作業療法士として高齢者施設で働いていた時に、自宅に戻って家から出ることが少なくなったことが原因で骨折したり、認知症になったりする人たちを多く目にしたこと。また、一週間に一回も人と会っていないというおばあちゃんと出会い、週に一回、電話でもいいから話し相手になってほしいと言われたことも、立ち上げた理由の一つでした。高齢者を支える国の制度はあるけれど、制度の向こう側で孤立している人がいる。“家で独りぼっち”という状況が変わらなければ、人々は健康にはならないのではないか?と感じ、えんがおを立ち上げました。
Q. ハーチからの寄付をどのように使うか、どうやって決めましたか?
スタッフミーティングで決めました。昨年コロナがちょうど広がっていたとき、えんがおのいくつかの施設も休業しなければならなかったのですが、コロナ禍でも人とつながれる環境をつくるため、屋外の席を増やした方が良いかな、という声が出ていました。そんな中で、ハーチさんから寄付の話があり、テラスセットを購入しました。当時、「コロナフレイル」つまり、高齢者が家に籠ることで健康が害されるということが話題になっていたこともあり、どうにかして屋外という感染のリスクが低い場所で集まれる場所を作りたかったんです。
Q. 購入されたテラスセットはどのような場になっていますか?
えんがおの利用者さんたちの憩いの場になっています。一人、えんがおに毎日来る90代のおばあちゃんで、家に1人でいると寂しいといつも言っている方がいます。えんがおがなかったらとっくに死んでいたと言った彼女は、テラス席ができたことで毎日人と会えてうれしいと喜んでくれていました。そのおばあちゃんは身体も弱く、コロナ禍で人と会わずに家でじっとしていたら認知症状が進んでいたかもしれず、このテラス席の存在は本当に大きかったと思います。
今後は、このテラスで地域サロンを開催したり、イベントでの食事の際に利用したりできたらと思います。日光を浴びることは骨粗しょう症の予防などに良いですし、外だったら感染のリスクも低い状況で食べられることができるので、活用していきたいですね。
Q. 今後のえんがおさんの活動
今後は、「人とのつながり」の力でもっと多様な社会課題に向き合っていきたいです。最近、身近なところで虐待や貧困などの話もよく耳にするようになったのですが、そういった社会課題のほとんどは、人とのつながりがあれば解決できることだと思っているんです。そのためにも色々な人ともっとつながって関係人口を増やし、あらゆる社会課題に向き合える組織を目指していきたいです。そのための一歩として、今後2年くらいで子ども事業(学童)と不登校生のフリースクールを立ち上げていきたいと考えています。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、私たちが家族や友人、同僚などの大切な人たちと会う機会は減少しました。感染予防のため、できるだけ人との接触を求められる今、特に高齢者や持病のある人と直接会うことが難しくなりました。しかし、感染症から身を守ろうとすることによって、新たな問題も生まれます。それが、「孤独」。SNSやビデオ電話など、オンラインで世界中の誰かと簡単につながれる時代になりましたが、誰もがインターネットでつながれる訳ではなく、対面での会話を必要とする人たちがたくさんいます。そんな当たり前のことを忘れてはいけないとあらためて感じるとともに、“取り残された”人たちの居場所をつくり続けるえんがおさんの活動は、心から応援したいなと思いました。孤独ではなく、つながりがある場──それは、どの地域でも必要な取り組みではないでしょうか。
私たちは今後も取材はもちろん、素敵な取り組みを行う企業や団体さまへの寄付を通して、一人でも多くの人が生きやすい未来をつくっていきたいと思います。
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