【IDEAS FOR GOOD Business Design Lab】イベントレポート「先進企業2社に学ぶ。サステナビリティの社内浸透を加速させる従業員体験をどうデザインする?」
- On 2021年10月7日
- ESG, IDEAS FOR GOOD Business Design Lab, イベントレポート, サステナビリティ
サステナビリティを体現する事業を創る上で欠かせないのが従業員の理解。従業員の社内浸透を、どのように楽しく効果的に進めていくのかは、サステナビリティ・ESG担当者にとって共通の悩みです。
本記事では、8月25日に行われたイベント「先進企業2社に学ぶ。サステナビリティの社内浸透を加速させる従業員体験をどうデザインする?」の様子をダイジェストにてご紹介します。
1. 社内浸透とは
1-1. 社内浸透の意義
サステナビリティを実現できる企業の特徴として、従業員自身が会社を所有していると感じられる「従業員の心理的オーナーシップ」があります。従業員の心理的オーナーシップがあることにより、会社で何か問題が起きた時に傍観者ではなく、当事者意識を持って主体的に行動することができるようになります。
オーナーシップの形成には、?Incubation(企業の社会的意義やパーパスの特定から目標を具体化させる)?Launch(プロジェクトのローンチ時にサステナビリティについて、経済面・環境社会面の両側面について利害関係者に周知する)?Entrench(関係各所を巻き込みながら目標と現状について定点観測していく)という3つのフェーズがあるといわれています。従業員がオーナーシップを持つ最初のきっかけが社内浸透であり、従業員がサステナビリティに関する知識をもって通常のオペレーションに臨むことで、事業のサステナブル化において従業員の果たす役割が大きなものになります。例えば社内浸透の施策で得たアイデアを起点とした従業員による各ステークホルダーへの呼びかけや発信が企業のパーパスに対してステークホルダーが同じ方向を向く鍵になることもあります。
1-2. Business Design Labが独自にまとめた社内浸透施策
考えられるさまざまな社内浸透施策を、4つのタイプに分けてご紹介します。
1) 勉強会の実施(インプット×非日常)
大切なのは「なぜサステナビリティに取り組むのか」を従業員自身の言葉で語るようにすることです。環境や社会のためだけでなく、経済のためにもなるということを理解し、自分の言葉で語るようになることで、担当者レベルでサステナビリティの推進に取り組むことができるようになります。
2) 社内発信(インプット×日常)
サステナビリティに関心のない従業員もサステナビリティに関する情報に触れられるような体験や、社内発信プロセスにおける体験によって、大きなテーマがより身近に感じられます。
3) 社内イベント(アウトプット×非日常)
イベントの前半で勉強会を実施し、後半では社内で実現できそうなサステナビリティのアイデアを出し合うようなイベントが例として挙げられます。出たアイデアを具体的なプロジェクトに落とし込むことで、イベントかぎりの学びにならないような工夫が必要となります。
4) プロジェクト創出(アウトプット×日常)
社員の「やりたい」という気持ちを重視し、プロジェクトとして形にしていきます。必ずしも教育的な成果を求めるのではなく、従業員の「ナイストライ」を持続させることを目標に据えることが大切です。
2. ベネッセの取り組み
株式会社ベネッセホールディングス(以下「ベネッセ」)は、SDGsの17の目標のうち「教育」に焦点を当てています。なぜなら、子どもたちにSDGsを伝えることで、彼らが大人になった時にSDGs達成のためにあらゆる分野で活躍できる可能性が広がり、SDGs全体の貢献につながると考えているからです。また、子どもにSDGsを伝えることで親も一緒に学ぶことができ、社会が徐々に変わっていくことが期待できます。そんなベネッセが取り組む社内浸透のための施策の一つとして挙げていたのは「サステナビリティStudy」です。
世界の社会課題への意識、SDGsの基礎知識、SDGsと理念の関係、事業を通じた社会貢献などの内容のオリジナルWeb Studyを年1回社員に受講してもらい、受講後には「10年後の生きる社会とは?」「ベネッセは誰のためにどんな事業を?」といった問いかけをし、グループ社員自身の言葉でアウトプットを促します。アウトプットすることでジブンゴト化することを大切にしているといいます。
また、「サステナブルな社会へ」という営業や販売色を一切出さないブランドサイトも一例として挙げられていました。「サステナビリティとは?」の解説を子ども・大人向けそれぞれ公開し、「サステナビリティ」と検索すると上位に出るくらい、多くの方に読まれるコンテンツになっています。社員自身がそれを見て誇りやモチベーションを得られたり、お客様にも伝わったりとポジティブな感情が生まれ、サステナビリティの社内浸透の一助を担っているといえます。
3. 三菱地所の取り組み
三菱地所株式会社(以下「三菱地所」)では、サステナビリティの社内浸透策としてITインフラを活用したSDGs関連の情報を提供しています。たとえば、Microsoft Teamsを使って毎日SDGs関連のニュースを配信したり、相互の情報共有の場を設けたりしています。
ほかにも、サステナビリティにあまり関心のない従業員にも関心を持ってもらえるよう、「IDEAS FOR GOOD Museum in MEC」を毎月異なるテーマで開催しています。たとえば、プラスチックがテーマの時はプラスチック削減のための様々な商品の現物を展示します。また、飴玉の包み紙を使った投票を行う、社員食堂で大豆ミートを使ったメニューを提供するなど、従業員が能動的に楽しめる工夫を随所に散りばめています。サステナビリティへの関心が高い従業員にインフルエンサーになってもらうべく、取り組みも進めているようです。
その他、社内外へのSDGs情報発信として「大丸有SDGs ACT5」アプリを作り、サステナビリティに関する活動に参加するとポイントが付与されるようになっています。どれだけ行動が促進されたかアプリで可視化できるほか、社内イベントにもこのアプリを活用してアクションへの参加を促進しています。
4. 社内浸透を進めるための工夫
パネルトークの時間では、社内浸透を実現する際のキーワードとなるようなポイントが話されていました。ここではその代表的なものを紹介します。
4-1. 事業との関連性
サステナビリティへの理解を深めるための施策を実施しても、事業との関連性が薄いとそもそも関心を持ってもらえなかったり、上手く伝わらなかったりすることがあります。たとえば三菱地所の場合、オンラインセミナーを実施した際、タイトルを「ウェルビーイングとは」とすると社内の参加者が少なかったものの、「ウェルビーイングを通じたまちづくり」というタイトルにすると社内参加者が増えるといった傾向があったようです。自分の事業とサステナビリティがどう結びつくのか、参加する前に具体的なイメージが湧く方がサステナビリティを理解しようという意欲も湧きやすいといえます。
4-2. 経済的メリット
現時点ではサステナビリティ推進における経済的メリットが見込みづらかったとしても、大切なのは現時点での経済的メリットの有無では判断しないことです。事業そのものの社会的な意義、社会的に大事な事業をどのように経済的メリットのある事業に育てていくか、事業計画の中に数字ベースで組み込んでいくことが、将来的に経済的メリットが得られる第一歩になります。
いかがでしたでしょうか。社内浸透においては、従業員それぞれの価値基準で納得感を持ってもらう機会をいくつか用意し、取り組みを継続させることの重要性を感じるイベントだったかと思います。あまり関心のない従業員に対しても興味を持ってもらえるような導入イベントを開催しつつ、すでに関心の高い従業員に対してはさらに理解を深めてもらえるような取り組みを実施したいですね。
IDEAS FOR GOOD Business Design Labとは?
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※この記事は、IDEAS FOR GOOD Business Design Lab「先進企業2社に学ぶ。サステナビリティの社内浸透を加速させる従業員体験をどうデザインする?【イベントレポート】」を転載したものです。