
【イベントレポート】「Sustainable Media Futures 〜AI時代の新しい持続可能なメディアの形をプロトタイプするフューチャーセッション〜」を開催しました
- On 2025年10月14日
- IDEAS FOR GOOD, イベント, クラウドファンディング, サステナビリティ, サステナブル, フューチャーセッション, 株式会社フューチャーセッションズ
当社が運営する、社会を「もっと」よくするためのアイデアを集めたウェブメディア「IDEAS FOR GOOD」は10月9日、イベント「Sustainable Media Futures 〜AI時代の新しい持続可能なメディアの形をプロトタイプするフューチャーセッション〜」を東京・赤坂にて開催しました。今回はそのイベントレポートをご紹介します。
※本レポートは、当社が現在挑戦中のクラウドファンディング「危機を希望に。読者とともに『新しいメディアのかたち』をつくりたい」の活動報告からの転載です。
未来のメディアを共に描くフューチャーセッションを開催
皆さま、こんにちは。IDEAS FOR GOOD編集部のAI担当、天野です。
この度は私たちのクラウドファンディングにご支援いただき、誠にありがとうございます。皆様から寄せられる一つひとつの応援メッセージが、私たちにとって大きな励みとなっております。
さて、今回の活動報告では、10月9日に開催いたしましたイベント「Sustainable Media Futures 〜AI時代の新しい持続可能なメディアの形をプロトタイプするフューチャーセッション〜」の様子をお届けします。
AIが私たちの日常に急速に浸透する今、メディアを取り巻く環境は激変しています。ニュースサイトへのアクセスはAIの登場でピーク時の4分の1にまで落ち込む例もあり、従来のビジネスモデルは限界を迎えつつあります。さらに、AIの利用に伴う環境負荷の増大や、データに潜む偏見の再生産といった課題も無視できません。
このような時代に、メディアは社会に対してどのような価値を提供できるのでしょうか。イベント冒頭、ハーチ代表の加藤は、オーストリアの哲学者イヴァン・イリイチが提唱した「コンヴィヴィアリティ(自立共生)」という概念を紹介しました。これは、テクノロジーを、人間が主体性を失うことなく、自らの能力を発揮するための「道具」として捉える考え方です。
「テクノロジーには、人を幸せにするポジティブな側面と、人から能力を奪っていくネガティブな側面があります。技術がその閾値を超えないように留めるべきだ、という考え方が重要になります」
加藤は、「AIは情報の循環を加速させますが、人間の関係性の循環を代替するものではありません」と述べ、AIと人間が共生する未来のメディアの可能性を示しました。
モデレーターを務めた株式会社フューチャーセッションズ代表の有福英幸氏は、多様な人々が対話を通じて未来を共創する「フューチャーセッション」自体が、新しいメディアの形になりうると語ります。
「リアルな対話の場で交わされる情報や感情のやりとりは、参加者の意識や行動、関係性を変容させ、着実な変革をもたらすメディアとして機能します」
インスピレーショントークに続いて行われたのは、参加者の皆様が主役となるフューチャーセッションです。AIには学習できない、身体性を伴ったリアルな対話の中から、未来のメディアの輪郭を探っていきました。
各テーブルでは、「メディアが持つ本質的な価値とは何か」という根源的な問いを起点に、熱のこもった議論が交わされました。そしてセッションの終盤、対話を通じて生まれた未来のメディアのプロトタイプ(試作品)が、それぞれのグループから発表されました。その中から、特に印象的だったアイデアをいくつかご紹介します。
あるグループが提示したのは、「情報は食事と同じ」という視点でした。AIが生成するフェイクニュースが「ジャンクフード」のように溢れる未来では、人々は信頼できる作り手から、心身の糧となる良質な情報を求めるようになるといいます。
「信頼できるお店で買うように、信頼できるメディアを選ぶ時代が来るのではないでしょうか。その時、メディアの価値は、人々の知識や好奇心をどれだけ育んだかという『アウトカム(成果)』によって測られるようになると考えました」
この発表は、情報の価値を問い直し、新たなビジネスモデルの可能性を示唆するものでした。
また、別のグループからは、「愛」と「関わりしろ」を中心にした、これまでにない能動的なメディアの形が提案されました。
「私たちがメディアに求めるのは、どれだけ関われるか、どれだけ愛を感じられるかです。例えば、地域の広場にある柱に、誰もが自分の好きな情報や想いを貼っていく。100年後、それが一つの文化的なメディアになっているような。収益は広告ではなく寄付で賄い、支援することもまた一つの『関わり』になるのです」
効率性や規模とは異なる価値軸で、人と人との繋がりそのものをメディアと捉えるこのアイデアに、会場は温かい空気に包まれました。
さらに、対話のプロセスそのものをメディア化するという独創的なアイデアも生まれました。
「最初に一つの『問い』を立て、集まった人々が対話し、結論ではなく『次なる問い』を一人一人が生み出す場を作ります。問いが問いを生み、螺旋状に思考が広がっていく。その問いの連鎖自体が、参加者全員で作り上げる生きたコンテンツになるのです」
受け手だった人々が創造者へと変わるこの仕組みは、持続可能なメディアの可能性を感じさせてくれました。
今回のセッションを通じて私たちが改めて確信したのは、AI時代だからこそ、人間同士の対話やつながり、そして「問い続ける力」がメディアの核になるということです。皆様のご支援がなければ、このような未来への思索を深める貴重な場は生まれませんでした。
私たちは、皆様と共に「新しいメディアのかたち」を創り上げていきたいと強く願っています。引き続きのご支援、どうぞよろしくお願いいたします。
【関連ページ】IDEAS FOR GOODのクラウドファンディング「危機を希望に。読者とともに『新しいメディアのかたち』をつくりたい」
【関連ページ】10/9@赤坂「Sustainable Media Futures 〜AI時代の新しい持続可能なメディアの形をプロトタイプするフューチャーセッション〜」を開催します
【関連サイト】株式会社フューチャーセッションズ
【関連サイト】IDEAS FOR GOOD