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イベントレポート「『環境に良い』だけでは誰も選ばない。ビニール傘と京都の伝統工芸から循環ビジネスを学ぶ ~Circular Business Design School Kyoto~」

イベントレポート「『環境に良い』だけでは誰も選ばない。ビニール傘と京都の伝統工芸から循環ビジネスを学ぶ ~Circular Business Design School Kyoto~」

  • On 2026年2月6日
  • CBDS Kyoto, Circular Business Design School Kyoto, IDEAS FOR GOOD, サーキュラリティデック, サーキュラーエコノミー, 事業開発, 京都, 人材育成, 循環型ビジネス

当社が受託している京都市の「令和7年度サーキュラーエコノミーの基盤づくり業務」の一環として、2025年10月より当社が主催する、サーキュラーエコノミーをテーマとした京都市内事業者向けラーニング・プログラム「Circular Business Design School Kyoto(サーキュラービジネスデザインスクール京都)」。本記事では、12月3日に実施された京都市街地でのフィールドワーク当日の様子をお届けします。

※本レポートは、当社が運営する、社会を「もっと」よくするためのアイデアを集めたウェブメディア IDEAS FOR GOOD「『環境に良い』だけでは誰も選ばない。ビニール傘と京都の伝統工芸から循環ビジネスを学ぶ【CBDS Kyotoレポ】」からの転載です。

「環境に良い」だけでは誰も選ばない。ビニール傘と京都の伝統工芸から循環ビジネスを学ぶ

サーキュラーエコノミーは、文化や伝統、自然から学ぶことが多いと言われる。しかし、その学びをビジネスモデルに落とし込むためには、戦略的なアプローチが必要となる。その助けとなるのが、オランダ発のカードセット「Circularity DECK」を用いたワークショップだ。

京都市主催・ハーチ運営の実践型サーキュラーエコノミー事業開発プログラム「Circular Business Design School Kyoto(以下、CBDS Kyoto)」では、京都の市街地や豊かな自然と伝統から循環のヒントを得てきた。参加者は、そんな自然や実践者からの学びを、Circular DECKを用いて循環型のビジネスモデルや戦略に統合することに挑戦した。

▶︎ これまでのプログラム内容はこちらから

会場は、1921年に建てられた旧西陣電話局の建物をリノベーションした「Impact Hub Kyoto」。歴史の重なりを感じさせる空間で、参加者たちはデザインの切り口からサーキュラーエコノミーの実装に挑んだ。本稿では、循環型ビジネスモデルの創出に向けたインプットからカードを用いたアウトプットへと至るワークショップの様子をレポートする。

加藤 佑(当社 代表取締役)

2015年にハーチ株式会社を創業。社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」、循環経済専門メディア「Circular Economy Hub」などのデジタルメディアを運営するほか、横浜の循環都市移行プラットフォーム「Circular Yokohama」、東京都における「CIRCULAR STARTUP TOKYO」など、企業・自治体・教育機関との連携により循環経済推進に従事。2023年4月にB Corp認証を取得。東京大学教育学部卒。

北林 功 氏(COS KYOTO株式会社 代表取締役/一般社団法人DESIGN KYOTO代表理事)

奈良県生まれ。物心ついた頃より人生のテーマを「美しい自然環境の中、人が笑顔で過ごせる社会の構築」と据えて活動。大学時代は、公共政策論の研究や内閣府国際青年交流事業フィンランド派遣団に参加。大阪ガス(京都)でのエネルギー設備営業、グロービス(東京)での人材育成コンサルタントを経て、同志社大学大学院ビジネス研究科にて「文化ビジネス」を研究。2013年にCOS KYOTO株式会社を設立し、地域の風土・歴史が育んできた叡智を紐解き、インプットと体験を通じて、現代社会にアップデートして活かしていく「文化ビジネスコーディネート」を軸に地域創生・人材育成・文化交流の事業を展開。2016年よりDESIGN WEEK KYOTOを主宰。[https://cos-kyoto.com/edonomy]

サーキュラーデザインの視野を広げる

「製品、サービス、インフラの環境負荷の約80%は、デザインの段階で決まる」と、ハーチ株式会社の加藤が切り出した。そのデザインを実践する上で指針となるのが、以下の5つの循環戦略だ。

「Narrow(資源利用を減らす)」「Slow(製品寿命を延ばす)」「Close(ループを閉じる)」「Regenerate(再生する)」、そして現代において重要度を増す「Inform(データ活用)」である。これらを実現するためには、単に素材を置き換えるだけでは不十分だ。製品だけでなく、ビジネスモデル、そしてそれを取り巻く生態系まで視野を広げ、全体を整合させる「システミックなデザイン」が求められる。

そこで重要となるのが、モノの物理的な耐久性だけでなく、使い手が愛着を持ち続ける「情緒的耐久性」をいかに設計するか。デザインの対象は、モノの形から、人とモノとの関係性にも拡張しているのだ。

続いて登壇したCOS KYOTO株式会社の北林氏は、京都の伝統産業に息づく循環のエッセンスを改めて紐解いた。

例えば、着物。一反の布を、複雑なカーブなどはなく直線のみでカットして仕立てるため、製造工程でごみが出ない。体型の変化にも対応でき、仕立て直しや染め直しを経て、最後は布団や雑巾、灰になるまで使い切ることができる。あるいは、漆(うるし)。樹液を採取した後の木はチップとして染料になり、さらにその過程で害獣として駆除された鹿の皮を活用するなど、異なる産業が連鎖し、モノをごみにせず次の資源として活かす生態系がかつては当たり前のように存在していた。

「この漆掻き職人さんは、職人であり、シェフであり、ハンターでもあり、色んなことを手掛けています。別に一つの職業だけで食べていかなくても、複数のことを組み合わせれば成り立つ可能性がある。こういう百姓的な働き方も、実はサステナブルなことや循環を考える上でとても大事ではないかと思います。

今は、安けりゃ良いのではなく『意味』があるものを世界の人が欲しがるようになってきています。世界の調達基準が変化しているからこそ、きちんと背景をアピールしたら、それを評価してくれるようになっているのです」

京都が育んできたのは、単なる技術ではなく、そうした新たな価値や意味を生むような関係性であったともいえるだろう。

問いを立てるカード「Circularity DECK」と、京都の伝統技術

そんな産業の繋がりも含めて、循環型ビジネスの戦略を確立する方法を体験してみよう。今回のワークショップの核となるツールが「Circularity DECK」だ。51枚のカードには、様々なサーキュラーデザインの戦略と事例が記されている。これらを使い、指定のプロダクトをより循環型のビジネスに落とし込む体験ができるのだ。

ワークショップのテーマとして選ばれたのは「傘」。現状を理解する(DISCOVER)フェーズでは、参加者の目の前に「ビニール傘」が置かれ、まずはこれをじっくりと観察。普通の傘ならば金属が使われる骨の部分にもプラスチックが使われていること、縫製がかなりシンプルであることなど、改めて言葉にしていった。

さらに、今回のワークショップならではの試みとして導入されたのが、「京都の伝統工芸カード」である。一般的なサーキュラーデザインの戦略に加え、京都の職人たちが継承してきた知恵や技法を「デザインパターン」として抽象化したこのカードは、参加者にとって、グローバルな戦略とローカルな文脈を接続するためのインスピレーションの源となった。


安価で手軽なビニール傘は、多くの素材が複合的に使われておりリサイクルが困難だ。またビニール傘に限らず洋傘は手元がフック形状になっており、便利である反面「手放しやすさ」を誘発し、置き忘れの一因ともなっている。

対して、竹と和紙、植物油で作られた和傘は、修理が可能であり、最終的には土に還る。興味深いのはその構造だ。洋傘は手元に重心があるが、和傘は構造上、重心が上部にあるため、石突の方(開いた時の頂点部分)を持つことになる。素材の特性がプロダクトの形状を規定し、それが持ち方や所作、ひいては「大切に扱う」という意識までをもデザインしているのだ。

課題を特定(DEFINE)し、解決策を発散(DEVELOP)させるプロセスでは、参加者たちは傘の循環型ビジネスに向けて重要な戦略カードを選出しテーブル上に並べながら、理想的なモデルを模索した。ここで直面するのが、戦略同士の相性だ。「耐久性を高める(Slow)」ことと「リサイクルしやすくする(Close)」ことは、時に相反する。複合素材で強度を上げればリサイクルは難しくなり、単一素材にすれば強度が落ちるかもしれない。一方で、「製品をサービス化すること(PaaS)」と「耐久性向上」は、事業者の利益と環境負荷低減が一致するため、強いシナジーを生む。

参加者たちは、テーブルに並んだ戦略カードを赤い線(コンフリクト)と青い線(シナジー)で結びながら、矛盾を乗り越えるためのアイデアを練り上げた。



「Want」を引き出す循環型デザイン

最終的なアウトプットとして発表されたアイデアは、多岐に渡った。自分だけのカスタマイズサービスやGPS機能を提供し、徹底的に愛着を醸成する「私の傘」。地域コミュニティ内での信頼をベースに、傘を共有財(コモンズ)として捉え直す「みんなの傘」。あるいは、発電機能を持たせ、「雨をしのぐ」以上の価値を付与するハイテクなアプローチ。

講評において強調されたのは、「義務感ではなく、欲求(Want)をデザインする」という視点だ。「環境に良いから使う」のではなく、「使いたいから使う」「参加したいから参加する」。その結果として循環が生まれるような設計こそが、環境意識の高まる現代社会で求められている。

また、そもそも「雨を凌ぐという目的において、傘という形態が最適解なのか?」という根本的な問いや、植物の力を用いたバイオテクノロジー的な解決策など、議論は製品の改善を超えた領域にまで広がった。



京都という土地が持つ長い時間軸と、サーキュラーエコノミーという新しい経済モデル。それらを掛け合わせることで見えてくるのは、かつてあった循環の風景を懐古するのではなく、現代の技術と文脈で再構築する社会である。ではその社会で、それぞれの事業はどうあるべきか。次回のCBDS Kyotoレポート記事では、個々のビジネスにおける循環型への移行に焦点をあてたワークショップの様子を届ける予定だ。

Circular Business Design School Kyotoとは

京都には1200年の歴史の中で育まれた「しまつのこころ」や循環型の暮らし、モノづくり文化など、時代を超えて輝き続ける資産がある。気候変動や生物多様性の保全など地球規模の課題が深刻化する中で求められる循環型の未来を実現するには、これらの叡智を現代に活かし、未来につなぐ創造力が必要だ。そこで、IDEAS FOR GOODを運営するハーチ株式会社では、京都というまちに根付く循環型の叡智と最先端のサーキュラーエコノミー知見に基づく未来志向を掛け合わせることで、ともに欲しい未来を描き、実現するための学習プログラムを2025年10月より開始。「Decode Culture, Design Future 叡智をほどき、革新をしつらえる」──伝統の先に続く循環型の未来を、京都から。

ウェブサイト:https://cbdskyoto.jp/

【関連ページ】京都サーキュラーエコノミー特集
【関連記事】IDEAS FOR GOOD「1200年の歴史に、サーキュラーエコノミーへの糸口あり。京都市が描く、環境と産業が調和する未来【京都CE特集】」
【関連記事】IDEAS FOR GOOD「特別対談・安居昭博氏と考える、京都らしいサーキュラーエコノミーの未来とは?【京都CE特集】」

 

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(英文表記 Harch Inc.)

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