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エージェントID(Agent ID)とは・意味、仕組み・似たIDとの違い・事例

最終確認日:2026年10月26日

エージェントIDとは?

エージェントIDとは、AIエージェントに、人の利用者のアカウントとは別に割り当てる専用のIDのこと。会社のシステムはこのIDを使って、どのエージェントが動いたかを見分け、どのデータを使いどの操作をしてよいかという権限を決め、認証や操作を記録に残す(※1、※3)。英語では「agent identity」と書き、Microsoft は略して「Agent ID」とも書く。

Microsoft は、AIエージェント向けのIDの製品として「Microsoft Entra エージェント ID」(英語では Microsoft Entra Agent ID)を提供している。一般提供は、2026年4月に始まった(※18)。同社はこの製品を、人ではないIDとしてのAIエージェントの認証、権限の付与、管理、保護のための仕組みと位置づける(※1)。

Google Cloud は「Agent Identity」、AWS は「Amazon Bedrock AgentCore Identity」という名前で、エージェントごとのIDを扱う仕組みを用意している(※3、※4)。

Microsoft の説明では、エージェントIDは人の利用者のアカウントや従来のアプリのIDと違い、多くのエージェントをひな形からまとめて作る前提で設計されている。エージェントごとに責任者を決め、記録を残すことも前提にしている(※2、※5)。

エージェントIDの仕組み・技術

ひな形が同じでも、記録と権限はエージェントごとに分かれる

Microsoft Entra Agent ID では、「エージェント ID ブループリント」というひな形をもとに、個々のエージェントのIDを作る。エージェントのIDは、パスワードや証明書のような認証の情報を自分では持たない。ブループリントが受け取るトークンを使って認証する。

トークンは一般に、アクセスを認められたことを示す電子的なデータを指す。ブループリントに当てたアクセスの決まりは、そこから作ったすべてのエージェントのIDに適用される(※2)。

Microsoft によると、エージェントの1つ1つが自分のIDを持ち、IDごとにサインインの履歴と監査の記録が残り、与えられた権限もIDごとに分かれる。悪意のある動きをするエージェントが見つかったときは、ほかのエージェントに触れずに、そのエージェントのIDだけを止められる(※5)。

動き方の型によって、エージェントが使うIDやアカウントが変わる

Microsoft は、エージェントの動き方と認証の型として3つを挙げている。そのうち対話型のエージェントは、サインインした利用者の代わりにチャットなどで頼まれた仕事をこなし、利用者から任された権限で動く。自律型のエージェントは、人の利用者のIDではなく自分のIDで、裏で判断や操作を進める(※2)。

3つ目の型は「エージェントのユーザーアカウント」だ。エージェントのIDと1対1で組になる任意のアカウントで、メールボックスやカレンダー、Teams のチャネルなどを、人の利用者と同じように使える。Microsoft は、人の利用者の形のアカウントを求めるシステムをエージェントが使わなければならないときだけ、このアカウントを使うよう勧めている。この場合も、エージェントのIDが要らなくなるわけではなく、エージェントは両方を持つ(※2)。

Microsoft はエージェントの技術の管理と事業の責任を分ける

Microsoft は、エージェントを管理する役割として「オーナー」「スポンサー」「マネージャー」の3つを挙げ、技術の管理と事業の責任を分けている(※2)。オーナーは、エージェントの技術の設定を受け持つ。スポンサーは、エージェントの目的や、アクセスを残すかエージェントを廃止するかといった判断に責任を持つ(※2、※5)。マネージャーは、エージェントのユーザーアカウントの採用の責任者や運用の担当として指名された人を指す(※2)。

Google Cloud と AWS も、エージェントごとにIDを作って管理する

Google Cloud の Agent Identity は、エージェントを配置するときに、SPIFFE という標準に基づくIDを1つずつ割り当てる。SPIFFE は一般に、プログラムどうしが相手を確かめるためのIDの標準を指す。

エージェントには X.509 という形式の電子証明書が付く。証明書の有効期間は24時間で、Google Cloud が自動で更新する。エージェントが利用者の代わりに動いたときは、記録にエージェントと利用者の両方のIDが残る(※3)。

AWS の AgentCore Identity では、エージェントごとに、名前や作成日時などの情報を持つIDを作り、組織の中で一か所にまとめて管理できる。エージェントを呼び出す側の確認と、エージェントがほかのサービスを使うときの認証の両方を扱い、利用者の代わりに使うトークンを保管する仕組みも備える(※4)。

エージェントIDと似たIDとの違い

Microsoft は、人の利用者のアカウントや従来のサービスプリンシパルをAIエージェントに使うことを勧めていない(※2)。サービスプリンシパルは一般に、アプリやプログラムが Microsoft Entra ID(Microsoft のIDを管理するサービス)の中で使うIDを指す。

IDの種類 作られた目的 AIエージェントに使うときの扱い(Microsoft の説明)
人の利用者のアカウント 人がサインインして使う 人向けのアクセスの決まりが正しく当てはまらず、IDを守るための検知の働きも落ちる。IDを管理する手続きが、エージェントのアクセスを誤って外すことがある
従来のサービスプリンシパル 決まった動きをするプログラムが使う 責任者の指定を必ず求める仕組み、エージェントと分かる監査の記録、ひな形による作成から廃止までの管理がない
エージェントID AIエージェントが使う ひな形から作り、アクセスの決まりをまとめて当てられる。責任者を決め、エージェントごとにサインインや操作の記録を残す

※2026年10月時点。Microsoft の説明(※2、※5)による。

Google Cloud も、サービスアカウント(プログラムが Google Cloud を使うときのID)と比べたエージェントのIDの違いを挙げている。エージェントのIDは、初めの設定では複数のプログラムで共有されず、ほかの主体がそのIDになりすまして使うこともできない。開発者が、長く使えるサービスアカウントのキーを作ることもできない(※3)。

エージェントIDが求められるようになった背景

米国立標準技術研究所(NIST)によると、AIエージェントは、データとアルゴリズムを使って自律的に仕事をこなすソフトウェアだ(※9)。

NIST のサイバーセキュリティの拠点 NCCoE は2026年2月の概念文書で、エージェントの自律性と処理の規模が大きくなると新しい機会とともに新しいリスクが生まれると指摘した。そのうえで、識別・認証・認可というIDの基本の考え方を、エージェントにどう当てはめるかを理解する必要があるとした(※6)。

Microsoft は、2025年5月に Microsoft Entra Agent ID の公開プレビューを発表したとき、エージェントを試す会社から、人ではない動き手を把握するのが難しいという声が寄せられていると説明した。同社は、従業員のIDに使ってきた守りと管理を、AIエージェントにも当てることを目標に掲げた(※7)。

エージェントIDに関する主な出来事・ニュース

  • 2025年5月19日 Microsoft「Microsoft Entra Agent ID」の公開プレビューを発表:Microsoft は、Copilot Studio と Azure AI Foundry で作られたエージェントのIDを、Microsoft Entra の管理画面で一覧にして見られるようにした。
  • 2025年7月16日 AWS「Amazon Bedrock AgentCore」のプレビューを発表:AWS は、AIエージェントを動かすためのサービス群 AgentCore をプレビューとして発表した。その一つの AgentCore Identity は、エージェントが AWS や外部のツールを安全に使えるようにする仕組みだ。エージェントは、利用者の代わりに使うことも、利用者の事前の同意を得て自分で使うこともできる。
  • 2025年10月7日 OpenID Foundation「Identity Management for Agentic AI」を公開:IDの標準を作る団体の OpenID Foundation は、AIエージェントを安全に認証・認可し、管理と責任を保つための課題をまとめた白書を公開した。
  • 2025年10月13日 AWS「Amazon Bedrock AgentCore」を一般提供:AWS は AgentCore の一般提供を始め、AgentCore Identity に、IDに基づく認可やリフレッシュトークン(アクセスを続けるための更新用のトークン)の保管などの機能を加えた。
  • 2025年11月6日 Google Cloud「Vertex AI Agent Builder」の新しい機能を発表:Google Cloud は、エージェントに Google Cloud の中で固有のIDを与え、IAM(Google Cloud のアクセスの管理の仕組み)の主体として権限を細かく決められるようにする機能を発表した。
  • 2025年11月18日 Microsoft「Microsoft Agent 365」を発表:Microsoft はAIエージェントをまとめて管理する「Agent 365」を発表し、組織のすべてのエージェントに固有のエージェントIDを持たせればアクセスを必要な範囲に絞れるとした。
  • 2026年2月5日 NIST「New Concept Paper on Identity and Authority of Software Agents」を公表:NIST の NCCoE は、IDの標準をAIエージェントに当てはめる実証のプロジェクトを検討しているとして概念文書を公開し、2026年4月2日まで意見を募った。
  • 2026年3月16日 Okta「Okta for AI Agents」の一般提供の予定を発表:Okta は、AIエージェントの発見と登録、アクセスの標準化、アクセスの即時の取り消しを担う基盤 Okta for AI Agents を2026年4月30日に一般提供するとした。
  • 2026年4月22日 Google Cloud「Agent Identity」を一般提供:Google Cloud は、エージェントごとに暗号の技術に基づくIDを与える Agent Identity の一般提供を始めた。このIDは、エージェントを動かす資源の作成から削除までの流れと結びついている。
  • 2026年4月23日 Google Cloud「Gemini Enterprise Agent Platform」を発表:Google Cloud は、すべてのエージェントに暗号の技術で確かめられる固有のIDを与える「Agent Identity」を、エージェントを統制する機能の一つとして示した。
  • 2026年5月1日 Microsoft「Microsoft Agent 365」を一般提供:Microsoft は、AIエージェントをまとめて管理する Agent 365 の一般提供を、商用の顧客向けに始めた。
  • 2026年6月2日 Microsoft「Microsoft Scout」を発表:Microsoft は、常に動き続けるエージェント Scout を発表した。同社によると、それぞれのエージェントは共有の匿名のサービスアカウントではなく、自分の Entra のIDで動く。
  • 2026年9月25日 Microsoft「Autopilot」を発表:Microsoft によると、Scout から名前を改めた Autopilot は、組織の Microsoft 365 の環境の中に専用のID、記憶、コンピューター、作業スペースを持つ。
  • 2026年10月22日 1Password「1Password for Agents」を発表:1Password は、個人向けのAIエージェントがパスワードを見たり保存したりせずにログインできる仕組みを発表した。

エージェントIDに関する事例

Microsoft は新しく作るエージェントに自動でIDを付ける

Copilot Studio は、Microsoft のエージェントを作るツールだ。2026年5月より前の Copilot Studio は、エージェントを作るたびに、アプリの登録という従来の形のIDを作っていた。

2026年5月からは、Copilot Studio で新しく作るすべてのエージェントに Microsoft Entra Agent ID が自動で付き、付けない設定は選べない。

対象は、Copilot Studio の標準のエージェントハーネス(AIモデル以外の、エージェントを動かす部分。英語では standard harness)で動くエージェントだ。エージェントを公開すると、外部のサービスとつなぐ部品の Power Platform のコネクターのうち、そのエージェントが使うものが、エージェントのIDの権限として表示される。そのため管理者は、Power Platform の管理センターを開かなくても、そのエージェントに何ができるかを確かめられる。

Copilot Studio でエージェントを消すと、そのIDも消える(※15)。

Microsoft の開発の基盤 Foundry では、エージェントごとに Entra のエージェントIDが発行され、作った時点で、エージェントをまとめて管理する Microsoft Agent 365 に登録される。

2026年6月3日に公開プレビューとして発表された「autopilot agents」は、自分のIDで動き、さらに仕事用のライセンス付きのユーザーアカウントを持つ。このアカウントで、エージェント自身のメール、カレンダー、OneDrive、Teams を使い、組織図にも載る(※16)。

Microsoft は Windows 上のエージェントを人と見分けられるようにする

Microsoft は2026年6月2日、Windows がエージェントに、端末の中のIDか、Entra に基づいてクラウドで用意するIDを割り当てると説明した。エージェントを隔離して動かす仕組みの中で起きたことは、すべてそのIDの動きとして扱われ、人とエージェントの動きをはっきり区別できるという(※17)。

Microsoft は2026年10月7日、Entra が Windows 上のエージェントの動きを利用者の動きと見分けられるようにする機能を、Microsoft Agent 365 で近く提供するとした。同社によると、この機能が入ると、エージェントが乗っ取られたり決まりに反したりしたときに、従業員のアクセスは止めずにエージェントのアクセスだけを止められるようになる(※13)。

エージェントの認証と権限を管理するときの注意

エージェントが自分のIDで動く場合も、任せる範囲は人が決める必要がある。Microsoft の説明では、Scout のエージェントがアクセスできるのは承認された資源と接続先だけで、重要な操作の前に人の承認を求める形にもできる(※11)。利用者が見ていない間も動く常時稼働エージェントを使うときは、どの操作の前に承認を求める設定になっているかを確かめておくと良いだろう。

会社でエージェントを管理する立場の人は、IDを消す手順にも気を配る必要がある。Google Cloud によると、エージェントを消しても、そのIDに与えた権限の設定は残る。設定は使われないまま残るので、エージェントを廃止するときに手で外す必要がある(※3)。

Microsoft Entra Agent ID は、Microsoft Entra を使うすべての顧客が使える。ただし、条件に応じてアクセスを許すかどうかを決める「条件付きアクセス」など、Microsoft Entra のセキュリティの機能をエージェントにも当てるには、Microsoft Agent 365 が必要になる。

Agent 365 は Microsoft 365 E7 に含まれ、Microsoft E5 などには追加で契約できる(※1)。

エージェントIDに関連する用語

  • 常時稼働エージェント:利用者が話しかけていない間も、任された仕事を進め続けるAIエージェント。Microsoft の Autopilot などがある。
  • KYA(ノウ・ユア・エージェント):一般に、AIエージェントの身元を確かめ、そのエージェントに責任を持つ人や組織と結びつけて、どんな操作や取引を任されているかを確かめる仕組みを指す。英語の「Know Your Agent」の略。
  • 封じ込め:AIモデルやAIエージェントが届く範囲をAIの外側の仕組みで区切り、AIが意図しない動きをしても影響が外に及ばないようにする安全対策。Microsoft は、Windows でエージェントをより安全に動かし管理するための機能として、封じ込めやエージェントのID、アクセスの統制や動きの監視の機能を挙げている(※13)。
  • ガーディアンエージェント:ほかのAIエージェントの動きを見張り、目標や許された範囲から外れそうなときにその行動や権限を調整したり止めたりするAI。
  • 暴走エージェント:与えられた役割や許された範囲から外れ、人が意図しない行動をとるAIエージェント。

エージェントIDに関する出典

※1 Microsoft「Microsoft Entra エージェント ID とは」
※2 Microsoft「Microsoft Entra Agent ID key concepts」
※3 Google Cloud「Agent Identity overview」
※4 AWS「Introducing Amazon Bedrock AgentCore Identity: Securing agentic AI at scale」(2025年8月15日)
※5 Microsoft「Build AI agents for production with secure identities from day one」(2026年6月2日)
※6 NIST「Accelerating the Adoption of Software and AI Agent Identity and Authorization(Concept Paper)」(2026年2月)
※7 Microsoft「Announcing Microsoft Entra Agent ID: Secure and manage your AI agents」(2025年5月19日)
※8 Microsoft「Microsoft Agent 365: The control plane for AI agents」(2025年11月18日)
※9 NIST「New Concept Paper on Identity and Authority of Software Agents」(2026年2月5日)
※10 Google Cloud「Introducing Gemini Enterprise Agent Platform, powering the next wave of agents」(2026年4月23日)
※11 Microsoft「Introducing Microsoft Scout: Your always-on personal agent」(2026年6月2日)
※12 Microsoft「Introducing the new Copilot with Home, Code and Autopilot」(2026年9月25日)
※13 Microsoft「Microsoft Execution Containers: Policy-driven containment for AI agents」(2026年10月7日)
※14 1Password「1Password for Agents Launches as the Trust Layer for Personal AI Agents」(2026年10月22日)
※15 Microsoft「Microsoft Entra Agent IDs for Copilot Studio agents」
※16 Microsoft「From Building Agents to Working with Them: Enterprise Agent Distribution in Microsoft Foundry」(2026年6月3日)
※17 Microsoft「Build 2026: Furthering Windows as the trusted platform for development」(2026年6月2日)
※18 Microsoft「Microsoft Entra releases and announcements」
※19 Microsoft「Microsoft Agent 365, now generally available, expands capabilities and integrations」(2026年5月1日)
※20 AWS「Introducing Amazon Bedrock AgentCore: Securely deploy and operate AI agents at any scale (preview)」(2025年7月16日公開、2026年5月12日更新)
※21 AWS「Amazon Bedrock AgentCore is now generally available」(2025年10月13日)
※22 Google Cloud「More ways to build, scale, and govern AI agents with Vertex AI Agent Builder」(2025年11月6日)
※23 OpenID Foundation「New whitepaper tackles AI agent identity challenges」(2025年10月7日)
※24 Google Cloud「IAM release notes」
※25 Okta「Okta announces new blueprint for the secure agentic enterprise」(2026年3月16日)

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