エージェントハーネス(Agent Harness)とは・意味、仕組み・モデルとの違い・事例

最終確認日:2026年10月26日
エージェントハーネスとは?
エージェントハーネスとは、AIエージェントのうち、AIモデルそのもの以外の部分のこと(※1)。エージェントハーネスは、単に「ハーネス」とも呼ばれる。英語の harness は一般に、馬などに付けて動きを御すための引き具を指す語だ。
AIエージェントを作るためのソフトウェアを提供する LangChain の Vivek Trivedy 氏は、2026年3月10日の記事で「Agent = Model + Harness」(エージェント=モデル+ハーネス)という式を示した。同氏は、モデル以外のコードや設定、実行の処理はすべてハーネスにあたると定義している(※1)。
コーディングエージェント(プログラムの作成や修正を任せるAIエージェント)を作る会社も、自社の製品をこの語で説明している。Anthropic は、ターミナルなどで使う自社のコーディングエージェント Claude Code を、モデルの周りで道具を用意してモデルが見る文脈を管理する層と説明している。同社は、この層を「agentic harness」と呼ぶ(※2)。
OpenAI は、ソフトウェアの開発に使う Codex のウェブアプリ、CLI(コマンドで操作する画面)、IDE(開発用のソフトウェア)の拡張機能などが、どれも同じ「Codex harness」で動いていると説明している(※3)。コード作成の支援の道具を提供する Cursor は、日本語の記事で「エージェントハーネス」という言い方を使っている(※4)。
ハーネスをうまく設計する取り組みは、「ハーネスエンジニアリング(Harness Engineering)」と呼ばれる。LangChain の Trivedy 氏によると、ハーネスエンジニアリングは、モデルの周りに仕組みを組み、モデルを仕事に使えるものにする取り組みだ(※1)。
エージェントハーネスの仕組み・技術
LangChain の Trivedy 氏と Anthropic の説明をもとに整理すると、ハーネスは、モデルの呼び出しと道具の実行を繰り返しながら作業を進める(※1、※2)。
Anthropic「How Claude Code works」
以上をもとに編集部作成
LangChain の Trivedy 氏は指示や道具などをハーネスに含める
LangChain の Trivedy 氏は、ハーネスに含まれるものとして、次を挙げている(※1)。
- システムプロンプト(AIの役割や振る舞いをあらかじめ指定しておく指示)。
- 道具、スキル(作業に必要な手順や知識をひとまとめにして、必要なときに読み込ませる仕組み。※2)、MCP(AIを外部のサービスとつなぐための共通の規格)と、それぞれの説明。
- ファイルを置く場所、サンドボックス(外と切り離して安全にプログラムを動かす環境)、ブラウザなどの、組み込みの環境。
- サブエージェント(作業の一部を任される別のエージェント)の起動や引き継ぎ、使うモデルの振り分けなどの段取り。
- 会話の要約、作業の継続、コードの自動の点検など、決まった処理を必ず行わせるための仕掛け。この仕掛けは、フック(決まった時点で決まった処理を動かす仕掛け)やミドルウェアと呼ばれる。
Codex のハーネスは処理の反復を担い、Claude Code は機能を足せる
OpenAI によると、Codex harness の中心は、利用者とモデルと道具のやり取りを回す、エージェントループと呼ばれる繰り返しの処理だ。Codex harness は、そのほかに、スレッドと呼ばれる会話の管理と保存、設定の読み込みと認証、サンドボックスの中での道具の実行も受け持つ(※3)。
Claude Code では、組み込みの道具にスキルや MCP、フック、サブエージェントを足して、できることを広げられる。利用者がプロジェクトの決まりを書いておく CLAUDE.md というファイルは、毎回のセッションで読み込まれる(※2)。
エージェントハーネスとモデルの違い・コンテキストエンジニアリングとの関係
LangChain の Trivedy 氏は、モデルがそのままではできないことを補う層としてハーネスを説明し、今のハーネスをコンテキストエンジニアリングと結びつけている(※1)。
| 語 | 説明 |
|---|---|
| モデル | 主に文章や画像、音声などを受け取り、文章を返す。そのままでは、やり取りをまたいだ状態の保持、コードの実行、最新の情報の取得、作業の環境づくりができない |
| ハーネス | モデルがそのままではできないことを補う層。状態の保持や道具の実行、結果を返して直させる仕組み、守らせる制約を与えて、モデルをエージェントにする |
| コンテキストエンジニアリング | 一般に、モデルに渡す文脈(指示・資料・会話の履歴など)を選んで整えること。Trivedy 氏は、今のハーネスを、主によいコンテキストエンジニアリングを届けるための仕組みとしている |
ソフトウェア開発の支援をする Thoughtworks の Birgitta Böckeler 氏は、コーディングエージェントの利用者が自分の用途に合わせてハーネスを作ることを、コンテキストエンジニアリングの一つの形と位置づけている(※5)。
エージェントハーネスが注目されるようになった経緯
「ハーネスエンジニアリング」の語を使った記事は、2026年2月に相次いだ。開発者の Mitchell Hashimoto 氏は2026年2月5日のブログで、エージェントが誤るたびに同じ誤りを二度と起こさない仕組みを作る取り組みを、自分は「harness engineering」と呼ぶようになったと書いた(※7)。OpenAI も、2026年2月11日に、この語を題にした記事を公開した(※8)。
Böckeler 氏は、2026年2月17日にハーネスエンジニアリングについての最初のメモを公開した(※18)。
Böckeler 氏は2026年4月2日の記事で、AIエージェントのうちモデル以外のすべてを指す短い呼び方として、harness という語が使われるようになったと書いている(※5)。
国の資格試験のシラバス案にも、この語が入った。IPA のデータマネジメント試験(仮称)のシラバス案は、小分類「AIエージェント利活用」の用語例に、ガードレール(AIの動きに歯止めをかける決まりや仕組み)などと並べて「ハーネスエンジニアリング」を挙げている。IPA は、このシラバス案は公表の時点の検討状況に基づくもので、内容が変わる可能性があるとしている(※12)。
エージェントハーネスに関する主な出来事・ニュース
- 2025年9月29日 Anthropic「Claude Agent SDK」に名前を改める:Anthropic は、Claude Code を動かすエージェントハーネスはほかの種類のエージェントにも使えるとして、Claude Code SDK の名前を改めた。
- 2025年11月26日 Anthropic「Effective harnesses for long-running agents」を公開:Anthropic は、いくつものセッションにまたがる長い作業をエージェントに進めさせるための、ハーネスの組み方を公開した。
- 2026年2月4日 OpenAI「Unlocking the Codex harness」を公開:OpenAI は、Codex の各製品に共通する Codex harness と、ほかの製品からそれを使うための App Server の作りを公開した。
- 2026年2月5日 Mitchell Hashimoto「My AI Adoption Journey」を公開:Hashimoto 氏は、AIエージェントを使うようになるまでの段階をブログにまとめ、5番目の段階を「Engineer the Harness」(ハーネスを作り込む)とした。
- 2026年2月11日 OpenAI「Harness engineering」を公開:OpenAI は、Codex にすべてのコードを書かせてソフトウェア製品の社内ベータ版を作ったチームの取り組みを、ハーネスエンジニアリングの事例として公開した。
- 2026年2月17日 LangChain「Improving Deep Agents with harness engineering」を公開:LangChain は、モデルを変えずにハーネスだけを変えて、自社のコーディングエージェントのベンチマークの点数を上げた方法を公開した。
- 2026年3月10日 Vivek Trivedy 氏「The Anatomy of an Agent Harness」を公開:LangChain の Vivek Trivedy 氏は、同社のブログで、ハーネスの定義と主な部品を示した。
- 2026年3月24日 Anthropic「Harness design for long-running application development」を公開:Anthropic は、計画、作成、評価の3つのエージェントでアプリを作るハーネスを公開した。
- 2026年4月8日 Anthropic「Claude Managed Agents」を公開:Anthropic は、クラウドで動くエージェントを作って動かすための API の組み合わせを、パブリックベータとして公開した。
- 2026年4月30日 Cursor「エージェントハーネスを継続的に改善する」を公開:Cursor は、自社のエージェントハーネスの改良の進め方と、モデルごとの調整の方法を公開した。
- 2026年5月19日 Google「All the news from the Google I/O 2026 Developer keynote」を公開:Google は、開発者向けの基調講演の発表をまとめた。Google は、新しい Antigravity SDK を使うと、エージェントを使った開発の基盤 Antigravity のエージェントハーネスをプログラムから操作できるようになるとした。
- 2026年6月17日 AWS「AgentCore harness」の一般提供を開始:AWS は、エージェント向けのサービス Amazon Bedrock AgentCore で、AWS が運用を受け持つ形のエージェントハーネスの一般提供を始めた。
- 2026年7月22日 Microsoft「Microsoft Agent Framework Harness」を正式に公開:Microsoft は、エージェントを作るための枠組み Agent Framework で、Python と .NET から使えるエージェントハーネスを正式に公開した。
- 2026年8月31日 IPA「データマネジメント試験(仮称)シラバス(案)Ver.0.1」を公開:情報処理推進機構(IPA)は、データマネジメント試験(仮称)のシラバス案を掲載した。
エージェントハーネスに関する事例
LangChain はハーネスだけを変えてベンチマークの点数を上げた
LangChain は、自社のコーディングエージェント deepagents-cli の点数を、Terminal Bench 2.0 で52.8%から66.5%に上げたと公表した。使ったモデルは OpenAI の GPT-5.2-Codex のままで、変えたのはハーネスだけだった。
Terminal Bench 2.0 は、機械学習やデバッグ(不具合の原因を探して直すこと)などの分野の89の課題で、エージェントのプログラミングの力を測るベンチマーク(性能を比べるための試験)だ(※9)。
LangChain は、システムプロンプト、道具、ミドルウェアに絞って手を入れた。たとえば、エージェントが作業を終える前に割り込み、課題の仕様と見比べて確かめる手順を促す仕組みを足した(※9)。
Anthropic は作る役と評価する役を分けて出来を高める
Anthropic は2026年3月24日の記事で、計画、作成、評価の3つのエージェントに分けたハーネスを示した。評価役のエージェントは、動いているアプリを利用者と同じように操作して、不具合を探す。Anthropic によると、エージェントに自分の作業を評価させると、人から見て明らかに平凡な出来でも自信を持って褒めがちだ。同社は、作る役と評価する役を分けることを、この問題への強い手立てとしている(※11)。
Anthropic は同じ記事で、同じ指示を使い、Claude Opus 4.5 を1つのエージェントだけで動かした場合と、3つのエージェントのハーネスで動かした場合を比べている。1つのエージェントでは20分で9ドル、ハーネスでは6時間で200ドルかかった。Anthropic によると、ハーネスの費用は20倍を超えたが、出来の違いはすぐに分かるほどだった(※11)。
OpenAI のチームはコードを書く代わりに Codex が働く環境を整備
OpenAI のチームは、空のリポジトリ(コードを置く場所)から、手で書いたコードが0行のまま、ソフトウェア製品の社内ベータ版を作った。2025年8月下旬の最初のコミット(変更の記録)から5か月で、コードは約100万行になった。
最初は3人の技術者が Codex を動かしていた。OpenAI によると、このチームの技術者の主な仕事は、コードを書くことではなくなった。チームの主な仕事は、Codex のエージェントが確かな仕事をできるよう、環境を設計し、意図を示し、結果を返して直させる仕組みを作ることになった(※8)。
OpenAI によると、当初は作業の進みが思ったより遅かった。原因は Codex の力不足ではなく、道具や内部の構造など、Codex が働くための環境が足りていなかったことにあったという。チームは、約100行の AGENTS.md(エージェントへの指示を書くファイル)を目次のように使い、詳しい知識は別の文書に分けて置いた(※8)。
Cursor はモデルごとにハーネスを合わせる
Cursor は、新しいモデルを公開前に使えるときは、数週間をかけ、そのモデルの得意なことや癖に応じてハーネスを作り込んでいる。
Cursor によると、ファイルを書き換える方法は、モデルの会社によって学習のさせ方が違う。パッチを当てる形式を OpenAI のモデルが、文字列を置き換える形式を Anthropic のモデルが学習している。Cursor のハーネスは、それぞれのモデルに、学習のときに使っていた形式の道具を渡す(※4)。
Cursor は、ハーネスを変えた結果をベンチマークで確かめるだけでなく、実際の利用の場で2つ以上の版を同時に動かして比べる試験(A/Bテスト)でも確かめている(※4)。
エージェントハーネスの英語での言い方・略語
| 英語の言い方 | 意味 | 使っている主体 |
|---|---|---|
| agent harness | AIエージェントのうち、モデル以外の実行の仕組み | Anthropic、LangChain、Cursor、Google(※1、※6、※14、※16) |
| agentic harness | Claude Code の説明での呼び方 | Anthropic(※2) |
| Codex harness | Codex の各製品に共通する、エージェントループとその周りの処理 | OpenAI(※3) |
| harness engineering | ハーネスを設計し、改良し続ける取り組み | Mitchell Hashimoto 氏、OpenAI、LangChain(※7、※8、※9) |
| outer harness / user harness | コーディングエージェントの利用者が、自分の用途に合わせて外側に作るハーネス | Birgitta Böckeler 氏(※5) |
エージェントハーネスの比べ方と手を入れるときの注意
Claude Code、Codex、Cursor のようなコーディングエージェントを比べるときは、使うモデルの名前だけでなく、どの製品のハーネスで動くかにも目を向けると良いだろう。
利用者も、ハーネスの一部を自分で作れる。Hashimoto 氏によると、エージェントが間違ったコマンドの実行や間違ったAPI(ほかのソフトウェアの機能を呼び出す窓口)の利用を繰り返したら、AGENTS.md に書き足す。同氏は、画面の撮影や対象を絞ったテストの実行などのスクリプトも、道具として用意するという(※7)。
Anthropic が比べた例のように、ハーネスを作り込むと、費用や時間が増えることがある(※11)。LangChain によると、1つの課題に合わせすぎた変更は、ほかの課題の結果を悪くすることがある(※9)。Anthropic によると、ハーネスの部品の一つ一つは、モデルが自分ではできないことについての想定の上に成り立っている。同社は、モデルが良くなって要らなくなった部品を外した例も紹介している(※11)。
エージェントハーネスに関連する用語
- コンテキストエンジニアリング:AIモデルが答えを作るときに読む情報の全体(コンテキスト)を、作業の段階ごとに選んで整える技術。
- MCP(Model Context Protocol):AIのアプリを外部のデータや道具、決まった作業の手順とつなぐための、オープンソースの共通の規格。
- エージェントスキル:仕事の手順や専門の知識をファイルにまとめておき、AIエージェントが必要なときに読み込んで使えるようにする仕組み。
- エージェンティックエンジニアリング:AIエージェントにコードを書かせて動かし、人は計画と指揮と結果の点検を受け持つソフトウェア開発のやり方。
エージェントハーネスに関する出典
※1 Vivek Trivedy「The Anatomy of an Agent Harness」(2026年3月10日、LangChain のブログ)
※2 Anthropic「How Claude Code works」
※3 OpenAI「Unlocking the Codex harness: how we built the App Server」(2026年2月4日)
※4 Cursor「エージェントハーネスを継続的に改善する」(2026年4月30日)
※5 Birgitta Böckeler「Harness engineering for coding agent users」(2026年4月2日、martinfowler.com)
※6 Anthropic「Building agents with the Claude Agent SDK」(2025年9月29日)
※7 Mitchell Hashimoto「My AI Adoption Journey」(2026年2月5日)
※8 OpenAI「Harness engineering: leveraging Codex in an agent-first world」(2026年2月11日)
※9 LangChain「Improving Deep Agents with harness engineering」(2026年2月17日)
※10 Anthropic「Effective harnesses for long-running agents」(2025年11月26日)
※11 Anthropic「Harness design for long-running application development」(2026年3月24日)
※12 情報処理推進機構「データマネジメント試験(仮称)シラバス(案)Ver.0.1」(2026年8月31日掲載)
※13 情報処理推進機構「新試験制度のシラバス案について」(2026年6月30日公開、9月30日更新)
※14 Cursor「Continually improving our agent harness」(2026年4月30日)
※15 Anthropic「Claude Managed Agents: get to production 10x faster」(2026年4月8日)
※16 Google「All the news from the Google I/O 2026 Developer keynote」(2026年5月19日)
※17 AWS「AgentCore harness is now generally available」(2026年6月17日)
※18 Birgitta Böckeler「Harness Engineering – first thoughts」(2026年2月17日、martinfowler.com)
※19 Microsoft「The Microsoft Agent Framework Harness is now released」(2026年7月22日)
エージェントハーネスに関連する記事
- データマネジメント試験(仮称)とは・意味、出題形式・シラバス案・似た試験との違い(2026.10.25)




