KYA(ノウ・ユア・エージェント/Know Your Agent)とは・意味、仕組み・KYCとの違い・取り組み

最終確認日:2026年10月26日
KYAとは?
KYA(ノウ・ユア・エージェント)とは、AIエージェントの身元を確かめ、そのエージェントに責任を持つ人や組織と結びつけて、どんな操作や取引を任されているかを確かめる仕組みのこと(※1)。KYAは、英語の「Know Your Agent」の略だ。
金融機関などが人や会社を確かめる本人確認は、KYC(Know Your Customer)と呼ばれる。KYAの技術を提供する Skyfire によると、KYCが確かめるのは人や会社で、KYAが確かめるのはその人や会社の代わりに動くAIエージェントだ。Skyfire は、KYCとKYAは互いを補うもので、どちらかを選ぶのではなく両方が要る手続きもあるとしている(※1)。
決済の会社も、この語を使っている。Mastercard は、AIエージェントによる支払いの仕組み「Mastercard Agent Pay」の特徴に「Know your agent」を挙げ、登録したエージェントだけが取引できるとしている(※2)。同社によると、Agent Pay はKYAの信頼の枠組みの上に作られている。
AIエージェントは、身元を識別され、登録され、確かめられた意思を示し、認証を受けたあとに取引できる(※3)。
KYAの仕組み
KYAの作り方は、会社によって違う。Skyfire は、KYAの確かめ方を、おおむね3つのつながった働きで説明している(※1)。
エージェントと責任を持つ開発者や組織などを結びつける
Skyfire が挙げる最初の働きは、エージェントを、責任を持つ相手と結びつけることだ。相手には、エージェントを作った開発者、エージェントを使っている組織、顧客である企業、利用者などがある。法令などでKYCが求められる手続きでは、KYCで相手が誰かを確かめ、KYAでエージェントとその相手の関係を確かめる、という分け方ができる(※1)。
Ant International、Mastercard、Visa の3社の協力も、エージェントを結びつけることを柱の一つにしている。3社は、1つ1つのエージェントを、確かめた運営者、カードの会員、または事業者や組織と結びつけ、ネットワークをまたいでエージェントの動きが誰のものかを分かるようにするとしている(※4)。
サービスはエージェントの示す情報で身元や任された範囲を確認
Skyfire が挙げる2つめの働きでは、エージェントが機械で読める証明の情報やトークンをサービスに示す。サービスは、その情報が本物かを確かめ、エージェントの身元や発行元、任された範囲などを見る。Skyfire によると、確かめるときに使う情報には開発者の識別、今ある認証の手段、これまでのやり取りや取引の履歴が含まれることがあり、どの情報を使うかは提供する会社によって違うことがある(※1)。
身元を確かめても、操作を許すかは別に判断する
3つめの働きは、操作を許すかの判断だ。Skyfire によると、身元を確かめることと、操作を許すことは同じではない。
サービスは、求められた操作を許すかを決めるとき、任された範囲、作業の内容、金額、支出の管理、リスクの兆し、証明の情報が今も有効かなどを考えに入れることがある。判断は登録のときの結果をずっと使うのではなく、続けて行うことも、慎重な扱いが要る取引のたびに行うこともできる。
Skyfire は、エージェント、エージェントに責任を持つ人や組織、求められた操作のどれかが方針に合わなくなったときには、証明の情報や権限を取り消せるようにしておく必要があるとしている(※1)。
Ant International、Mastercard、Visa の3社は協力の柱に、エージェントがセキュリティと振る舞いの共通の要件を満たすかの評価と、身元と取引の情報を組み合わせた継続的な監視も挙げている(※4)。
KYAとKYCなど似た仕組みとの違い
Skyfire の説明では、KYAはすでに使われている確認や管理の仕組みに置き換わるものではなく、それらに足して使うものだ(※1)。OAuth は一般に、パスワードを渡さずに、決まった範囲の操作を別のサービスに許す仕組みを指す。IAM は、IDとアクセスの管理を指す。
| 仕組み | 主に確かめる・決めること(Skyfire の説明) |
|---|---|
| KYC(本人確認) | 人や会社が誰かを確かめる。それだけでは、エージェントに任せる権限は決まらない |
| OAuth | 任せる操作の範囲を決める |
| IAM | 組織のアクセスの決まりを守らせる |
| KYA | どのエージェントが、誰の代わりに動いているかを確かめる。自律した操作について、エージェントならではの身元の情報と、許すかの判断を足す |
KYAの由来と広まった背景
Skyfire の Craig DeWitt 氏は2024年9月5日、Substack の自身のブログで、AIエージェントのための新しい身元確認の仕組みとしてKYAを紹介した(※5)。
Skyfire の最高経営責任者の Amir Sarhangi 氏は、Mastercard のサイトに載った Sophie Hares 氏の記事で、KYAの考えが生まれた経緯を語っている。
Sarhangi 氏によると、KYAの考えは、エージェントがウェブサイトに入って取引するときに困ることについて開発者やウェブのセキュリティの会社と話す中で生まれた。同氏によると、店のサイトは人が使う前提で作られ、セキュリティの仕組みは悪意のある自動のプログラムを締め出すようにできていた。
今は悪意のないエージェントも現れたが、そうしたエージェントは、サイトに入るための身分証を持っていないという(※6)。
AIエージェントは、商品を勧める役から、利用者の代わりに購入まで済ませる役に広がりつつある(※4)。こうしたAIエージェントによる商取引は、エージェンティックコマースと呼ばれる。Mastercard によると、エージェンティックコマースが広がるにつれて銀行や店が知る必要があるのは、取引にエージェントが関わっているか、エージェントが何を頼まれたか、その動きが正当かだ(※7)。
シンガポール金融管理局(MAS)は2026年7月3日、主要な金融機関やフィンテックの会社とともに、業界の白書として枠組み「SAFR(Safeguards for Agentic Finance at Runtime)」を公表した。SAFR は、金融の仕事をするAIエージェントを、金融機関の決めた権限や方針、リスクの範囲の中で動かすための枠組みだ(※8)。
Ant International、Mastercard、Visa は SAFR をもとに、AIエージェントの確認・責任の所在・リスクの管理についての共通の取り組み方を、シンガポールの決済の分野で進めるとしている。3社は、MAS が招集した業界の場「BuildFin.ai」を通じて協力する(※4)。
KYAに関する主な出来事・ニュース
- 2024年9月5日 Craig DeWitt 氏「Know Your Agent (KYA)」を公開:Skyfire の Craig DeWitt 氏は、Substack の自身のブログで、AIエージェントの身元を確かめる仕組みとしてKYAを説明した。
- 2026年4月30日 Experian「Agent Trust」を発表:Experian は、新しい「Know Your Agent」の枠組みで、確かめた利用者とAIエージェントを結びつけるサービス「Agent Trust」を発表した。
- 2026年9月10日 Ant International・Mastercard・Visa、KYAの相互運用で協力を開始:3社は、カードやデジタルウォレットなどのネットワークをまたいで、エージェントの登録と識別をしやすくするKYAの枠組みづくりで協力を始めた。
- 2026年9月30日 Mastercard、Agent Pay の信頼と分析の新しいサービスを発表:Mastercard は、Agent Pay を広げる新しいサービスを発表し、KYAの技術を提供する Skyfire と組むことも明らかにした。
KYAに関する主な取り組み
Mastercard と Skyfire は信頼できるエージェントの判別を支援へ
Mastercard は2026年9月30日、Agent Pay に、AIエージェントが始めた取引について、より多くの手がかりを示す新しいサービスを加えると発表した。最初のサービスは、取引をAIエージェントが始めた可能性の高さを示すスコアで、米国で試験のために提供される。同社は、Skyfire と組み、金融機関や店が信頼できるエージェントを見分け、取引を認めるかの判断に役立てられるようにするとしている(※7)。
Hares 氏の記事によると、Skyfire は、エージェントが誰で誰の代わりに動いているかを確かめるKYAトークンを作る。KYAトークンは、エージェントが使ってよい金額の支払いの情報と組み合わせることもできる。たとえば、スニーカーを買いに来たエージェントは店のサイトでKYAトークンを示して購入し、商品を利用者の住所に届けさせることができるという。
Sarhangi 氏は、KYAは店がすでに使っているセキュリティや不正対策の道具で読み取れるため、多くの店はサイトを作り直さずに信頼できるエージェントを受け入れ始められると話している(※6)。
Visa など決済の3社は相互に使えるKYAの枠組みを探る
Visa、Mastercard、Ant International は、エージェントによる取引のための仕組みをそれぞれ出している。Visa の「Trusted Agent Protocol」、Mastercard の「Verifiable Intent」、Ant International の「Agentic Mobile Protocol」だ。3社は今後、共通の原則に向けて取り組む機会を探るとしている(※4)。
3社は、相互に使えるKYAの枠組みによって、サービスを提供する会社やエージェントの基盤、マーケットプレイスでの取引が簡単になると見込んでいる。3社によると、この取り組みはつなぎ込みの複雑さと、エージェントの身元を重ねて確かめる手間を減らす助けになる(※4)。
KYAの確認で保証されないことと取り組みの今の段階
Skyfire によると、エージェントを人や会社と結びつけても、その人や会社を確かめる必要はなくならない。同社は、KYAの証明の情報を、セキュリティや法令の順守、支払いのあらゆる確認を通った証しとして扱わないよう注意を促している(※1)。
Ant International、Mastercard、Visa の協力は、共通の原則に向けて動き始めた段階だ。3社によると、確認や判断の手順は、各ネットワークが自分のものを持ち続ける(※4)。決済や金融の仕事でKYAを扱う人は、各社の最新の発表を確かめると良いだろう。
KYAに関連する用語
- エージェントID:AIエージェントに、人の利用者のアカウントとは別に割り当てる専用のID。会社のシステムは、このIDでエージェントを見分け、権限を決め、記録を残す。
- エージェンティックコマース:AIエージェントが利用者の代わりに商品を探し、比べ、購入まで済ませる商取引。Ant International、Mastercard、Visa は、KYAの協力の目的に、エージェンティックコマースを広げることを掲げている(※4)。
KYAに関する出典
※1 Skyfire「Know Your Agent (KYA)」(2024年9月5日の記事。本文は2026年4月30日以降の内容を含む)
※2 Mastercard「Mastercard Agent Pay: secure, scalable and trusted agentic AI」
※3 Mastercard「Mastercard completes Moldova’s first payments executed by an AI agent with maib and Moldindconbank」(2026年7月8日)
※4 Ant International「Ant International, Mastercard and Visa Initiate Collaboration on Know-Your-Agent Interoperability to Scale Agentic Commerce」(2026年9月10日)
※5 Craig DeWitt(Skyfire)「Know Your Agent (KYA)」(2024年9月5日、Substack)
※6 Sophie Hares「An age-old question for the AI era: Can I see some ID?」(2026年10月8日、Mastercard のサイト)
※7 Mastercard「Mastercard advances agentic commerce with new trust and intelligence services」(2026年9月30日)
※8 Monetary Authority of Singapore「MAS Partners Industry to develop Safeguards for AI Agents in Finance」(2026年7月3日)
※9 Experian「Experian Announces Agent Trust to Power Trusted AI Driven Commerce」(2026年4月30日)




