本文へ移動
Harch AI Lab AI Learning & Research Mediapowered by Artiql Inc.

エージェンティックコマース(Agentic Commerce)とは・意味、仕組み・主なプロトコル・事例

最終確認日:2026年10月26日

エージェンティックコマースとは?

エージェンティックコマースとは、AIエージェントが利用者の代わりに商品を探し、比べ、購入まで済ませる商取引のこと。英語の表記は Agentic Commerce。Stripe は、AIエージェントが商品を探して比べ、買うところまでを自分で進める新しい買い物の形として、エージェンティックコマースを説明している(※1)。Google は、AIが人に代わって作業を済ませる商取引として、この語を使っている(※2)。

これまでのネット通販は、人がサイトを見て、商品を選び、会計の手順を一つずつ踏む前提で作られてきた(※1、※16)。

American Express によると、エージェンティックコマースでは、利用者が欲しいものをエージェントに伝え、決めた条件を満たしたら買ってよいと任せる(※3)。同社によると、こうした任せ方には、利用者を信頼する新しい方法が要る。利用者の意思をはっきりした範囲として示し、その範囲を実行の時に守らせる仕組みも要るという(※16)。

日本では、日経BPの日経クロストレンドが2026年5月に発表した「トレンドマップ 2026上半期」で、この語をマーケティング分野のキーワードに新しく加えた(※4)。デジタルガレージと DGビジネステクノロジーは、AIエージェントが情報の探索から推薦、購入、決済までを一続きに行う購買を、エージェンティックコマースと説明している(※5)。

エージェンティックコマースの仕組み・技術

決済会社やIT企業の説明をもとに整理すると、エージェンティックコマースを支える仕組みには、利用者の購入の意思の記録、カード番号に代わる情報での支払い、エージェントの見分け、店での注文の処理がある。

利用者の購入の意思を、確かめられる記録に残す

Google の「AP2(Agent Payments Protocol)」は、利用者の指示を、「Mandate」というデジタルの契約にする。

Mandate は暗号の署名を付け、改ざんできないようにしたものだ。利用者がその場で買う場合は、最初の頼みごとを「Intent Mandate」に記録し、エージェントが示したカートを利用者が承認すると「Cart Mandate」に署名される。

コンサートのチケットを発売と同時に買うといった、利用者がその場にいない任せ方では、価格の上限や時期などの条件を書いた Intent Mandate に、前もって署名しておく(※8)。

American Express の「Intent Intelligence」も、購入の意思を記録する仕組みだ。エージェントが買う前の段階で、利用者が承認した購入の意思をカードの発行会社に渡せる点が特徴だ。同社は、ここが今ある仕組みとの違いだとしている(※3)。American Express が示す、購入の意思を記録して受け渡す流れは、図のとおりだ。

購入の意思を記録して受け渡す流れAmerican Express の「Intent Intelligence」の説明をもとに整理
1
意思を記録して確かめるCreate Intent API が、店や予算の上限などの購入の指示と条件を記録する利用者は本人確認をして、エージェントがまとめた内容を承認する
2
意思の証明を作る利用者の意思を指す固有の識別子「Intent ID」と、条件の大枠を表す「Proof of Intent Token」を作る
3
支払いの資格情報を絞るProof of Intent Token を使って、エージェントが会計でカード番号の代わりに使う資格情報を得られる資格情報の使える範囲は、利用者が承認した意思に合わせて絞られる
4
取引の最後まで照らし合わせるIntent ID とトークンを、その後の手続きで、購入の求めが承認の内容に合っているかを確かめるのに使う不正の防止、取引を認めるかの判断、紛争の解決にも使う
出典:American Express「American Express Publishes Intent Intelligence Framework for Trusted Agentic Commerce」(2026年10月13日)

カード番号はエージェントに渡さず、トークンで支払う

決済会社の仕組みでは、利用者のカード番号をエージェントにそのまま渡さず、カード番号を別の番号に置き換えて扱う「トークン化」などの技術を使う(※6、※7、※10)。

  • Stripe が発行する「Shared Payment Token」は、ChatGPT のようなアプリが購入者の支払い情報を明かさずに決済を始めるための新しいトークンだ。トークンは特定の店とカートの合計金額にひもづく(※10)。
  • Mastercard の「Mastercard Agent Pay」では、エージェントごとに固有に発行する「Mastercard Agentic Token」を取引に使う(※6、※13)。
  • Visa の「Visa Intelligent Commerce」は、カードの情報を、トークン化した資格情報(支払いに使う、カード番号の代わりの情報)に置き換え、利用者が選んだエージェントが利用者の代わりに動いてよいかを確かめる(※7)。

Visa と Mastercard は署名や登録で正当なエージェントを確かめる

Visa は、店がボットを見つける仕組みが正当なエージェントの取引まで誤って止めるおそれを、店が抱える課題に挙げている。

Visa の「Trusted Agent Protocol」は、信頼できるエージェントを、悪意のある自動のプログラムと見分けるための枠組みだ。エージェントは暗号の署名を付けて、商品を買う意思があることなどを店に伝える(※11)。Mastercard の Agent Pay は、エージェントを登録して確かめてから、利用者の代わりの支払いを認める(※6)。

当初の Instant Checkout では注文と支払いを店が扱うとされた

OpenAI が ChatGPT で始めた、チャットの中で商品を買える「Instant Checkout」では、注文や支払い、商品の発送は、店が今のシステムで扱うとされた。OpenAI は、ChatGPT が利用者と店の間で必要な情報を受け渡す役を担うと説明していた(※9)。

エージェンティックコマースの主なプロトコル

プロトコルは、AIエージェントと店、決済会社が情報をやり取りするための共通の決まりだ。主なものを、発表の日付の順に並べる。

プロトコル 主な開発元 発表 主に受け持つこと
x402 Coinbase 2025年5月6日 ウェブのやり取りの中に支払いを組み込む。2026年4月に、オープンソースの開発を支える非営利団体 Linux Foundation が、x402 を管理する x402 Foundation を立ち上げると発表した
AP2(Agent Payments Protocol) Google(決済・テクノロジーの企業と開発) 2025年9月17日 エージェントが利用者から買う権限を受けたことを、署名つきの記録で示す。カードのほか、ステーブルコイン(一般に、法定通貨と価値が連動するように作られたデジタルの通貨)や即時の口座振替にも使える
ACP(Agentic Commerce Protocol) OpenAI、Stripe 2025年9月29日 エージェントと店の間で、注文と支払いに必要な情報をやり取りする。2026年3月から、商品探しにも使う
Trusted Agent Protocol Visa(Cloudflare と協力) 2025年10月14日 店が、買う意思のある信頼できるエージェントを、暗号の署名で見分ける
UCP(Universal Commerce Protocol) Google、Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmart 2026年1月11日 商品探しから購入、購入後の対応までを受け持つ。A2A、AP2、MCP と一緒に使える
MPP(Machine Payments Protocol) Stripe、Tempo(決済向けのブロックチェーン) 2026年3月18日 エージェントなどの機械どうしが支払うときの、支払いを求める・承認する・決済するという手順を決める

※2026年10月時点。AP2 は※8、ACP は※9・※12、Trusted Agent Protocol は※11、UCP は※2、MPP は※18、x402 は※19・※20 による。

A2A は一般に、AIエージェントどうしが連携するための決まりを指す。MCP は一般に、AIのアプリと外部のデータや道具をつなぐための決まりを指す。

エージェンティックコマースが注目されるようになった背景

2025年の春には、カードの国際ブランドの大手がAIエージェントによる買い物に向けた仕組みを相次いで打ち出した。Mastercard は4月29日の発表で「agentic commerce」の語を使った。翌日には Visa が、AIエージェントが商品を探して買えるようにする取り組みを発表した(※6、※7)。Visa はこのとき、AIによる商取引を、今はまだ先の話であまり知られていない考え方だと表現していた(※7)。

2025年の秋からは、エージェントと店や決済会社をつなぐプロトコルが相次いで出た(※8、※9、※11)。Stripe は、多くのAIエージェントが出てくる中で店がエージェントごとに別々の接続を作って保つのは現実的でないと説明し、共通の決まりを作った理由に挙げている(※10)。Google は2026年1月に、エージェンティックコマースは概念から現実に変わりつつあるとした(※2)。

エージェンティックコマースに関する主な出来事・ニュース

エージェンティックコマースに関する事例・調査

Mastercard が国内初とする本番の取引でエージェントが車を予約

Mastercard が日本で初めてとする本番の取引では、Evonet が提供するAIエージェント「Agenzo」が送迎サービスの ELife を通じて、銀座へ向かう車を予約した(※13)。支払いには、三菱UFJニコスなどが発行した Mastercard のカードを使った。

本人の確認とデータの保護には、Mastercard のパスキーの仕組み「Mastercard Payment Passkeys」で認証したトークンを使ったという(※13)。

デジタルガレージなどはECのエージェント対応の機能を一括で提供

デジタルガレージと DGビジネステクノロジーの「DG Agentic One」は、商品の情報をAIが理解しやすい形に整える機能、GEO(AI検索最適化)の対策、AIエージェントとECサイトをつなぐ入り口、ECのシステム、開発中の決済の機能を組み合わせる。GEOは、ChatGPT などのAIの検索で、自社の商品が薦められるようにする対策を指す(※5)。

両社は、この基盤を国内初としている。両社によると、国内初とは、データのAI向けの変換と生成、GEOの対策、UCP・ACP などの規格への対応、ECのカートのシステムを一続きで提供するサービスとしての意味だ。2026年8月13日時点で、両社がWebで調べた結果だという(※5)。

米国では Meta の Muse にカード情報を渡さず支払いを任せられる

Stripe のデジタルウォレット「Link」を Meta のAIエージェント「Muse」につなぐと、米国の消費者は Link に保存した支払いの手段で、Muse に支払いを任せられる。

Link に対応していない店では、利用者が前もって承認した金額だけに使える、使い捨ての仮想カードが発行される。どちらの場合も最後の金額は利用者がチャットの画面で承認し、Muse はカードの情報などの決済のデータに直接は触れられない設計だという(※1)。

OpenAI は Instant Checkout を改め、店の会計の画面を使う方式へ

OpenAI の Instant Checkout は、2025年9月の開始の時点で、1回に1つの商品の購入だけに対応していた(※9)。OpenAI は2026年3月24日、Instant Checkout の最初の版は、目指す柔軟さに届かなかったと説明した。そのうえで、店が自社の会計の画面を使えるようにし、自社は商品探しに力を注ぐとした(※12)。

Visa の調査では、米国の買い物客の47%が買い物にAIを利用

Visa は2025年12月、Morning Consult と2025年10月14〜16日に12の国・地域の成人を対象にオンラインで行った調査の結果を示した。Visa によると、米国の買い物客の47%が、価格の比較や好みに合わせたおすすめなど、買い物の作業の少なくとも1つにAIの道具を使っている(※14)。

エージェンティックコマースの英語での言い方・略語

英語の言い方 意味 使っている主体
agentic commerce AIエージェントが利用者の代わりに買い物を進める商取引 Google、OpenAI、Mastercard、American Express など(※2、※3、※6、※9)
agentic payments AIエージェントによる支払い Mastercard(※6)、Google(※8)
AI commerce AIが関わる商取引 Visa(※7)
agentic shopping AIエージェントによる買い物 Google(※2)
agent-led payments エージェントが主導する支払い Google(※2、※8)
conversational commerce 会話を通じた買い物 Google(※2)

エージェンティックコマースに、店はどう備えるか

ECやマーケティングの仕事では、商品の情報を、AIエージェントが読み取りやすい形で渡す準備が求められつつある。Google は、検索の AI モードや Gemini などの会話の画面で見つけてもらうために、Merchant Center に新しい商品データの項目を数十設けると発表した。項目には、よくある質問への答えや、一緒に使える付属品などが含まれる(※2)。

Merchant Center は、店が Google に商品の情報を登録する管理の画面だ。OpenAI も、ACP を ChatGPT での商品探しにも広げ、店がこの仕組みで商品の情報を ChatGPT に渡せるようにした(※12)。

プロトコルは1つにまとまっていない。OpenAI の ACP に対し、Google は UCP を進め、2026年10月に米国で提供を始めた「Universal Cart」の会計も UCP で動かしている(※2、※9、※17)。

Visa は2026年4月、Trusted Agent Protocol、ACP、UCP、MPP といった主なプロトコルで始まった支払いを、店が1回の接続で受けられるようにする仕組み「Intelligent Commerce Connect」を発表した。発表の時点では、一部の企業との試験運用の段階だった(※15)。

American Express は、エージェントが行った取引をめぐる紛争を減らすことを課題としている。同社によると、利用者の承認の後にエージェントがカートの中身を変えて買ってしまうおそれや、利用者が自分で承認した取引に異議を申し立てるおそれがある。取引の前に、認証された購入の意思をカードの発行会社が受け取れば、紛争のおそれを見極めやすくなるという(※16)。

仕組みを選ぶ前に、決済会社やプラットフォームの最新の説明を確かめておくと良いだろう。

エージェンティックコマースに関連する用語

  • 常時稼働エージェント:利用者が話しかけていない間も、任された仕事を自分で進め続けるAIエージェント。項目では、Meta の Muse を含む各社の製品を紹介している。
  • KYA(ノウ・ユア・エージェント):一般に、AIエージェントの身元を確かめ、責任を持つ人や組織と結びつけて、任された操作や取引の範囲を確かめる仕組みを指す。
  • MCP(Model Context Protocol):AIのアプリと外部のデータや道具をつなぐための共通の決まり。Google は、UCP を MCP と一緒に使えるとしている。

エージェンティックコマースに関する出典

※1 Stripe「Stripe のデジタルウォレット「Link」で、Meta の新たな AI エージェント「Muse」の決済が可能に」(2026年9月8日)
※2 Google「New tech and tools for retailers to succeed in an agentic shopping era」(2026年1月11日)
※3 American Express「American Express Publishes Intent Intelligence Framework for Trusted Agentic Commerce」(2026年10月13日)
※4 日経BP「日経クロストレンド「今後伸びるビジネス」2026年上半期ランキングを発表。「AI(人工知能)」関連キーワードがスコア上位を占有。期待から実装フェーズへ」(2026年5月15日、PR TIMES)
※5 デジタルガレージ・DGビジネステクノロジー「デジタルガレージとDGビジネステクノロジー、国内初となる、エージェンティックコマース最適化を実現する統合プラットフォーム「DG Agentic One™」を提供開始」(2026年8月13日、PR TIMES)
※6 Mastercard「Mastercard unveils Agent Pay, pioneering agentic payments technology to power commerce in the age of AI」(2025年4月29日)
※7 Visa「Find and Buy with AI: Visa Unveils New Era of Commerce」(2025年4月30日)
※8 Google「Powering AI commerce with the new Agent Payments Protocol (AP2)」(2025年9月17日)
※9 OpenAI「Buy it in ChatGPT: Instant Checkout and the Agentic Commerce Protocol」(2025年9月29日)
※10 Stripe「Stripe、OpenAI と共同開発の Agentic Commerce Protocol (ACP) を公開 ChatGPT の Instant checkout 機能を支援 ~ChatGPT 内での直接購入が可能に~」(2025年9月29日)
※11 Visa「Visa Introduces Trusted Agent Protocol: An Ecosystem-Led Framework for AI Commerce」(2025年10月14日)
※12 OpenAI「Powering Product Discovery in ChatGPT」(2026年3月24日)
※13 Mastercard「Mastercard、日本市場で初となる本番環境でのエージェンティック取引を実施」(2026年5月20日)
※14 Visa「Visa and Partners Complete Secure AI Transactions, Setting the Stage for Mainstream Adoption in 2026」(2025年12月18日)
※15 Visa「Visa Opens the Door to AI-Driven Shopping for Businesses Worldwide」(2026年4月8日)
※16 American Express Technology「Intent Intelligence: Building Trust in Agentic Commerce」(2026年10月13日)
※17 Google「Google’s new Universal Cart launches today in the U.S.」(2026年10月15日)
※18 Tempo「Tempo Mainnet Is Live: Build on Tempo Today」(2026年3月18日)
※19 Coinbase「Introducing x402: a new standard for internet-native payments」(2025年5月6日)
※20 Linux Foundation「Linux Foundation is Launching the x402 Foundation and Welcoming the Contribution of the x402 Protocol」(2026年4月2日)
※21 PayPal「PayPal Launches Agentic Commerce Services to Power AI-Driven Shopping」(2025年10月28日)
※22 Visa「Visa Partners with OpenAI to Power the Next Generation of AI Commerce」(2026年6月10日)

エージェンティックコマースに関連する記事