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生成AIの社内ルール作り、どう進めると良い?活用方針やガイドライン、企業や行政の策定事例

生成AIをより本格的に活用していくために、社内ルールを作ることになった。今は人によって使い方がばらばらで、議事録や資料の下書きを任せて使いこなす同僚もいれば、何を入れてよいか分からず手を止めたままの同僚もいる。生成AIの利用を禁止にすれば安全に見えるが、仕事には生かせない。利用をどこまで認め、どう決めれば、活用が進んで守られるルールになるのだろうか――。

この記事では、生成AIの社内ルールづくりについて、国内外の行政と企業の事例をもとに、誰と作るか、何を書くか、どう浸透させていくかを考えたい。

生成AIの社内ルールの作り方の流れたたきを作成から、浸透させるまで
1
書く使ってよい範囲を、組織の規模に合う形で書く例:総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」の別添は、小さな事業者がA4一枚程度の目標から始める仮想の例を載せている。東京都は、事業を担当する職員向けの指針と、全職員向けの「生成AI利用の手引き」を分けて置いている
2
作る情報システム・法務に、人事・購買・事業部門も加えて作る例:米国の行政管理予算局は、主な省庁にAIの利用を統括する会議を置くよう求め、関係がある場合は人事や調達、事業部門の代表も加えるとした
3
試す使う人の一部に、期間を決めて試してもらう例:神戸市は職員133名に ChatGPT を3か月使ってもらい、その後ガイドラインを改定した
4
広める部署を回って使い方を聞き取り、業務ごとの使い方を書く例:日立ソリューションズ・クリエイトは、部署ごとに回って話し、その場で課題を聞き取った。LINEヤフーは、全業務の約3割を占める調査・検索、資料作成、会議の領域で、生成AIの使い方をルールにした
5
直す見直しの時期と改訂の記録を決めて直す例:英国政府は枠組みを改め、前の版から何を変えたかを文書の中に記録として残している
出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)」(2026年3月31日)
東京都デジタルサービス局「東京都AI導入・活用ガイドライン」(2026年3月)
東京都デジタルサービス局「東京都AI導入・活用ガイドラインに基づく生成AI利用の手引き Version 1.0」(2026年3月30日)
Office of Management and Budget「M-25-21 Accelerating Federal Use of AI through Innovation, Governance, and Public Trust」(2025年4月3日)
神戸市「生成AIの利活用」(2026年6月19日更新)
神戸市「神戸市生成AIの利用ガイドライン(第1.2版)」(2024年9月27日改定)
日立ソリューションズ・クリエイト「利用率約80%・年間約5.5万時間の作業時間削減に至った「生成AI全社定着」推進の舞台裏」(2026年10月19日時点)
LINEヤフー「「AIをパートナーとして共に成長する」生成AI役員、宮澤が描く未来」(2025年7月14日)
Government Digital Service「AI Playbook for the UK Government」(2025年2月10日)
以上をもとに編集部作成

生成AIの社内ルールは、まずは使ってよい範囲について明記する

総務省が全1,788自治体に聞いた調査で、生成AIの利用ガイドラインを作った自治体は2025年10月31日時点で853団体となり、未策定の737団体を上回った。

一方、生成AIのルールを作った企業において、会社が認めていないAIの利用も見受けられる。角川アスキー総合研究所は2026年4月に公表した『AI白書2026』の調査では、全社共通のガイドラインを整えた企業でも、会社が公式に認めていないAIツールを業務で使ったことがある人が46.9%おり、ガイドラインを一部だけ整えた企業に勤める人の50.0%と大きな差はなかった。全社共通のガイドラインを整えた企業に勤める人の45.1%が「ルールが現場の実態に追いついていない」と答えている。

オーストラリア政府のデジタル変革庁は機関向けの指針で、制限の強い方針のもとでは、組織の目の届かないところでの生成AIの利用が多くなると指摘している。適切な場合に生成AIを使えるようにし、職員の役割や秘密情報を扱える資格の段階に応じて使える範囲を分けるよう勧める。ファイルのアップロードの制限などの技術的な仕組みと研修、利用状況の監視を組み合わせることも勧めている。

同庁は2025年10月、職員が一般向けの生成AIを使うときの暫定の指針を、新しい指針に置き換えた。新しい指針では、職員は ChatGPT や Gemini、Claude のような誰でも使えるサービスでも、所属する機関の方針の範囲なら、機密扱いにならない業務の情報を入れて使ってよいとし、個人情報は入れないとした。

会社で生成AIのルールを作る場合も、最初の版は「何を禁止するか」より「どのような場合に使ってよいか」から書くことを検討したい。例えば「公開済みの情報の調べ物や、自分で書いた文書の手直しには使ってよい。顧客の個人情報と社外秘の資料は入れない」のように、生成AIを使ってよい範囲を先に示すと良いだろう。

小さな会社と大きな組織で、社内ルールの書き方はどう変わる?

中小企業から都庁まで、5つの組織の規模・体制と、生成AIのルールの書き方を挙げる。

組織 規模・体制 生成AIのルールの書き方
中外製薬 社員約7,800名 生成AIが登場する前からAIのアルゴリズムをリスク評価で分類して管理し、利用ポリシーやガイドライン、評価の仕組みを継続して整える
LINEヤフー 従業員約11,000人 活用ルールには業務の進め方を書く(「まずはAIに聞く」「ゼロベースの資料作成は行わない」など)。全員に ChatGPT Enterprise のアカウントを配り、必須のeラーニングの試験に合格することを利用の条件にする
中小企業の例(奈良県) 外部の支援業者と連携 生成AIへの過度な恐れで活用が進まないことを避け、最低限のルール(個人情報を入力しない、オプトアウトの設定を必ず行うなど)を周知する。社内で使っていない新しいツールは、その都度支援業者にも相談しながら導入の可否を検討する
神戸市 市職員約2万人(教員を含む) 生成AIのルールとして、条例、情報セキュリティポリシー、ガイドラインを重ねる。生成AIは許可したものだけを使い、全職員が使える Microsoft Copilot には非公開情報以外を入れてよいと定める。市民の権利や利益に重大な影響を与えうるAIの使い方は、48項目のワークシートを使って情報セキュリティポリシーの担当部門が審査し、それ以外は所属長がチェックシートで確認する
東京都 都庁全体 AI戦略の下に、事業を担当する職員向けの指針と、全職員向けの「生成AI利用の手引き」を分けて置く(2026年3月)。許可されていない生成AIを業務で使うことは、東京都サイバーセキュリティポリシーで禁じられている。2023年8月には「文章生成AI利活用ガイドライン」を作り、文章生成AIを全局で使い始めていた

※2026年10月時点

国の「AI事業者ガイドライン」の別添には、AIガバナンスを小さく始める仮想の企業と、既存の規程に足して作る仮想の企業の実践例が載っている。AIの開発を始めたばかりの小さな事業者の例では、経営層と従業員が実際に起きたインシデントを共有しながら、A4一枚程度のAIガバナンスの目標を定めた。開発から利用までを自社で担う会社の例では、既存のセキュリティやプライバシーのポリシーはそのままに、AIに特有のリスクを管理項目に足して、ガバナンスの枠組みを作った。

A4一枚の目標から始める形も、既存の規程に足す形も、AIを使う側の社内ルールの作り方に使える。生成AIの社内ルールは、最初の版の形を、自分の組織に近い規模の例から決めたい。人の少ない会社は、AIに入れてはいけない情報などの最低限の数行と、新しいツールを使いたいときの相談先を書くところから始められる。部署が多い組織には、生成AIの利用について全社の原則を置き、部署や役割ごとの手引きに分ける形が合う。

社内ルールは、情報システムと法務だけで決めない

米国の行政管理予算局は2025年4月の通達で、主な省庁に、AIの利用を調整し統括する会議を置くよう求めた。会議の議長を副長官級とし、ITやデータ、法務などの担当を入れ、関係がある場合は人事や調達、事業部門の代表も加えるとしている。

会社でも、AIの利用について決める場には、情報システムと法務に加えて、研修を担う人事、ツールの契約を担う購買、使い方を知る現場の事業部門も最初から呼びたい。

神戸市は2023年6月、ChatGPT の試行を始める直前にガイドラインの第1版を作り、職員133名に ChatGPT を3か月使ってもらった。試行の目的には、検証用のガイドラインを磨くことも含まれていた。その後、全職員が Microsoft Copilot を使えるようになった2024年2月に、ガイドラインを第1.1版に改定している。

自社でも、生成AIの社内ルールの最初の版は、決める場に呼んだ部署で作り、使う人の一部に期間を決めて試してもらってから全体に広げる順番で進めるとよい。

社内ルールを作ったら、生成AIの使い方をどう広める?

2026年4月1日時点で社員4,168名の日立ソリューションズ・クリエイトは、2023年に全員が使える生成AIの環境を用意したが、効果や使い方が社内で十分に知られておらず、当初の利用は一部にとどまった。そこで2024年に生成AIの専門の部署を置き、全社メールや大きな説明会ではなく、部署ごとに回って話し、その場で課題を聞き取った。生成AIの利用率は、2024年度上期の39%から半期ごとに上がり、2025年度下期には全社員の約80%になったと発信している。

神戸市で全職員が Copilot を使えるようになってから7か月後の2024年9月に約1,800名が答えたアンケートでは、Copilot を使ったことがある職員は約3割の551名で、Copilot を使わない理由では「使い方が分からない」が48.2%と最も多かった。

LINEヤフーは、全員が生成AIを使える環境を整えた上で、2025年7月に業務での生成AIの活用を義務とする働き方を始め、使い方をルールにした。LINEヤフーがまずルールの対象にしたのは、過去に工数を調べた結果、全業務の約3割を占めると分かった調査・検索、資料作成、会議の領域だ。ルールを設けてから約7か月後の2026年2月の発表では、業務の性質上AIを使いにくい人を除き、ほぼ100%の従業員が業務で使っているとした。

自分の会社で生成AIの社内ルールを周知するときは、全社への通知だけで終わらせず、部署を回って使い方の分からないところを聞き取ると良いだろう。ルールには、時間のかかっている業務を選んで、そこでの生成AIの使い方を書くことを検討したい。

生成AIの社内ルールは、時期を決めて見直し続ける

英国では、政府が2024年1月に公務員向けの「Generative AI Framework for HMG」を出し、公表の時点で、まだ完全ではなく変わり続ける枠組みだと明記した。公表から13か月後の2025年2月、英国の政府デジタルサービスは枠組みの対象を生成AI以外の技術にも広げて「AI Playbook for the UK Government」に改めた。前の版から何を変えたかを文書の中に記録として残している。

生成AIの社内ルールの下敷きにしたひな形が、使うサービスの入力の扱いが今と異なっていたころに書かれていることもある。日本ディープラーニング協会の「生成AIの利用ガイドライン」は、「AI事業者ガイドライン」の別添でも、仮想の企業が社内ルールを作るときに沿ったものとして挙がっている。ただ、日本ディープラーニング協会の資料室に載っている版は、2026年10月19日に確かめた時点で、2023年10月に公開した第1.1版のままだ。

日本ディープラーニング協会のひな形は、対象のサービスを ChatGPT と置き、個人情報の条項も入力が学習に使われる前提で書き、例外は但し書きに回している。今は東京都のように、使うサービスが入力を学習のために残さないと確かめてから使う組織もある。社内ルールのひな形は、社名や対象のツール名を差し替えたあと、条項も自社が使うサービスの入力の扱いに合わせて書き直すと良いだろう。

見直す時期と、何を変えたかを残す改訂の記録の欄は、生成AIの社内ルールの最初の版から入れておきたい。社内ルールの見直しは、半年ごとや、使うサービスが変わったときなどと決めておくことで、現場での実務に沿った最新版にバージョンアップをしていけるだろう。

【参照元】