ヒューマン・イン・ザ・リード(Human in the lead)とは・意味、似た考え方との違い・国の計画での位置づけ

最終確認日:2026年10月26日
ヒューマン・イン・ザ・リードとは?
ヒューマン・イン・ザ・リード(Human in the lead)とは、人がAIを道具として統制し、物事を決める主導権と価値を生み出す主導権を持つという考え方のこと。2026年7月14日に閣議決定された第Ⅱ期の人工知能基本計画は、脚注でこの考え方を「AIをツールとして統制し、人が意思決定や価値創出の主導権を握る仕組み」と説明している(※1)。
計画は日本語版でも英語のまま「Human in the lead」と書いており、ヒューマン・イン・ザ・リードは、その読みをカタカナにした表記だ。
計画は、Human in the loop、Human on the loop と並べて、人の責任の考え方として今議論されているものの一つにこの語を挙げている(※1)。この語は、Accenture の会長兼CEO、Julie Sweet 氏の発言では、「in the loop」ではなく「in the lead」だという対の形で使われている(※2)。
ヒューマン・イン・ザ・リードが人工知能基本計画に入るまでの経緯
世界経済フォーラムによると、2026年1月の年次総会(ダボス会議)で、Sweet 氏が「human in the lead, not human in the loop」と述べた(※2)。
日本では、人工知能基本計画を改める議論の中で、人の関わり方が論点になった。
内閣府が2026年4月に示した議論のたたき台には、AI時代の人間力の向上を検討する作業部会の中間とりまとめの案が載っている。案は、意思決定や行動をAIエージェントが担うほど、人が判断に加われるか、実際に加わるかが焦点になるとした。そのうえで、Human in the loop の形では、責任を取るためだけに人が流れの中に置かれるおそれがあると指摘していた(※3)。
6月に意見募集にかけられた計画の素案で、Human in the lead を含む3つの考え方を並べた脚注が示され、7月に閣議決定された計画にもそのまま残った(※1、※4)。
ヒューマン・イン・ザ・リードに関する主な出来事・ニュース
- 2026年1月23日 世界経済フォーラム、ダボス会議でのAIの議論をまとめた記事を公開:世界経済フォーラムは、年次総会のセッション「Scaling AI: Now Comes the Hard Part」の議論をまとめた記事で、AIの活用を広げる議論とあわせて Julie Sweet 氏の発言を紹介した。
- 2026年6月19日 内閣府「人工知能基本計画(素案)」の意見募集を開始:内閣府は、Human in the loop・Human on the loop・Human in the lead の3つを脚注に並べた素案について、6月23日まで意見を募った。
- 2026年7月14日 政府、改めた人工知能基本計画を閣議決定:政府は、2025年12月23日に閣議決定した最初の計画を改め、新しい人工知能基本計画を閣議決定した。
ヒューマン・イン・ザ・リードと似た考え方との違い
人工知能基本計画は、人の責任の考え方として議論されている3つを、同じ脚注で書き分けている(※1)。
| 考え方 | 人工知能基本計画の説明 |
|---|---|
| Human in the loop | AIが作業を実行する流れに、人が直接関わる |
| Human on the loop | 作業の実行はAIに任せ、流れの全体の設計と監視を人が受け持つ |
| Human in the lead | AIを道具として統制し、意思決定と価値の創出の主導権を人が握る |
国の計画と戦略でのヒューマン・イン・ザ・リードの位置づけ
人工知能基本計画は、人とAIが協働する新しい社会を目指している。そのために、エージェント型AIが使われることを前提として社会の制度や枠組みを根本から見直し、人が意思決定への責任を持ちつつAIで課題を解けるようにするとしている。3つの考え方を並べた脚注は、この「責任」の語に付いている。
計画は、エージェント型AIを「目的の達成に向け、AIが自ら計画を立て、実行、検証、修正を繰り返す」ものと説明している(※1)。
計画は、「人間力」を高める取り組みの中核に、判断の責任を果たす「人的主体性(Human Agency)」を置く。人的主体性の構成要素には、課題を設定する力、判断力と批判的思考のほか、説明責任を意味するアカウンタビリティ、非認知能力や自己価値感などが挙がっている(※1)。
内閣府の「バーティカルAI領域別戦略 中間とりまとめ」は、エージェント型のものを含むバーティカルAIの適用に合った制度・運用を進めるとしている。その際に重んじるのは、人が意思決定の責任を持ちながらバーティカルAIを使い、課題を解く点だ。中間とりまとめも、計画と同じ3つの考え方を注に示した(※5)。バーティカルAIは一般に、製造や医療など特定の業界・領域に特化したAIを指す。
決まっていない使い分けの基準と、人が判断に加わるときの国の手引き
Human in the loop など3つの考え方のうち、どれをどの場面で当てるかの基準は、人工知能基本計画には書かれていない(※1)。
素案への意見募集では、人がどのタイミングでどれくらいの頻度で関与する必要があるのかを、それぞれの考え方について今後のガイドラインなどで定めてほしいという意見が寄せられた。内閣府は結果の概要でこの意見に答え、自律的に動くAIを含め、AIを使うときはリスクに応じた人の関与・監督・責任の明確化が重要だとした。そのうえで、人による監督の形や責任の分け方の整理について、この意見を今後の議論の参考にするとしている(※6)。
人がAIの判断を確かめる場面については、総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)が手がかりになる。
ガイドラインは、AIの出力が公平さを欠かないよう、適切なタイミングで人の判断を挟む使い方を検討するとしている。その際は、自動化された仕組みを信じすぎたり頼りすぎたりする「自動化バイアス」に、人の判断が左右されない対策が要るという。対策の例として、AIの判断を人が承認するときは、承認する理由や根拠を自分で考えてから承認することが挙がっている(※7)。
ヒューマン・イン・ザ・リードに関連する用語
- 人工知能基本計画:AI法に基づいて政府が定める、AIの研究開発と活用を進めるための基本の計画。2026年7月14日に閣議決定した第Ⅱ期の計画が、脚注でヒューマン・イン・ザ・リードを挙げている。
- バーティカルAI:一般に、製造や医療など特定の業界・領域に特化したAIを指す。バーティカルAI領域別戦略の中間とりまとめが、同じ3つの考え方を注に示している。
- 承認疲れ:AIエージェントなどから操作の許可を何度も求められるうちに、人が中身をよく確かめずに承認するようになること。
ヒューマン・イン・ザ・リードに関する出典
※1 内閣府「人工知能基本計画 ~日本AX、より強く、より豊かに~」(2026年7月14日閣議決定)
※2 World Economic Forum「Davos 2026: Leaders on why scaling AI still feels hard – and what to do about it」(2026年1月23日)
※3 内閣府「人工知能基本計画の改定に向けて(議論のたたき台)」(2026年4月、人工知能戦略専門調査会の第4回の資料1)
※4 内閣府「人工知能基本計画(素案)に関する御意見の募集について」(2026年6月19日)
※5 内閣府「バーティカルAI領域別戦略 中間とりまとめ」(2026年7月10日、人工知能戦略本部の第5回の資料2-2)
※6 内閣府「「人工知能基本計画(素案)」に関する意見募集の結果概要」(2026年6月26日、人工知能戦略専門調査会の第6回の資料1-1)
※7 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編」(2026年3月31日)
※8 内閣府「人工知能基本計画」(2026年7月14日閣議決定の計画の掲載ページ)




