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世界モデル(World Model)とは・意味、仕組み・由来・事例

最終確認日:2026年10月26日

世界モデルとは?

世界モデルとは、現実や仮想の世界がどう動くかをデータから学び、この先に起きることや、ある行動をとったときの結果を予測・模擬するAIのモデルのこと。英語の表記は「World Model」。

NVIDIA の説明では、世界モデルは、物理の法則や時間と空間の中での物の関係、環境の性質といった現実の世界の動きを理解するAIのシステムだ。NVIDIA によると、世界モデルは文章・画像・動画・音・動きなどの入力をもとに、次に何が起きるかを推論して予測する(※1)。

Google DeepMind は、世界モデルを、世界についての理解を使って世界の一部を模擬するAIのシステムと位置づけている。世界モデルがあれば、エージェントは環境がこの先どう変わるか、自分の行動が環境にどう影響するかを予測できるという(※2)。エージェントは一般に、目標に向けて自分で行動を選んで動くAIのプログラムやロボットを指す。

World Labs によると、言語モデルが文章の統計的な構造を学ぶのに対して、世界モデルは空間と時間の統計的な構造を学ぶ。光が物の表面にどう当たるか、物が力を受けたときにどう動くかといったことが、世界モデルが学ぶ対象になる(※3)。

世界モデルは、ロボットや自動運転車などの機械を動かすフィジカルAIの開発に使われている(※1)。フィジカルAIは一般に、現実の空間の状況を読み取り、機械を動かして作業をこなすAIを指す。NVIDIA の説明では、世界モデルはフィジカルAIのシステムに現実の世界でのふるまい方を教えるものだ(※1)。

世界モデルの仕組み・技術

世界モデルは物理の決まりを書き込まず、データから動きを学ぶ

NVIDIA によると、これまでのフィジカルAIの作り方は、物理の決まりをプログラムに書き込む方法が中心だった。この方法はゲームエンジンのような管理された環境ではうまく働くものの、変化や予想外の出来事がある現実の世界では通用しない。世界モデルは、現実の世界の動きをデータから学び、世界を正確に模擬することを目指す(※1)。

世界モデルの学習では、まず何を予測させるかを決める

NVIDIA によると、世界モデルの学習では、まず何を予測させるかを決める。先の映像を作らせる、隠した情報を復元させる、ある行動をとったら結果がどうなるかを予測させる、といったやり方がある。同社は、機械のふるまいが環境をどう変えるかを模擬する必要があるときは、行動を入力に加えて結果を予測させる学習がとくに重要だとしている(※1)。

World Labs は世界モデルを出力の違いで3つに分ける

World Labs は2026年6月3日の論考で、出力するものの違いをもとに、世界モデルと呼ばれているものをレンダラー、シミュレーター、プランナーに分けた(※3)。

世界モデルの出力による3つの分け方World Labs の論考による。世界モデルと呼ばれているものを、何を出力するかで分けたもの
レンダラー(renderer)人が見るための映像を出力する。見た目の自然さが最も重視される
シミュレーター(simulator)形や物理の法則に沿った世界の状態を出力する。人も、ロボットの制御などのプログラムも、その上で計算や操作ができる
プランナー(planner)見えているものと目標から、次にとる行動を出力する
World Labs は、3つの区分は根本では分かれておらず、境目がなくなりつつあるとしている。
出典:World Labs「A Functional Taxonomy of World Models」(2026年6月3日)

World Labs は、レンダラーの例に、Google DeepMind の「Genie 3」と自社のモデルを挙げている。同社はプランナーの例に、視覚と言葉に動作を加えて作業に必要な動き方を生み出すVLA(Vision-Language-Action)のモデルや、World Action Model(WAM)を挙げる。

World Action Model は一般に、先に見えるものとロボットの行動をまとめて予測するモデルを指す。

World Labs は、3つのうち最も人目にふれにくいシミュレーターこそ、最も大きな影響を持つと主張している。同社によると、自社の「Marble」は、見て回るための3次元の表現と物理の計算に使える物の形を1つのモデルから出力する。同社は、Marble がこれによってレンダラーとシミュレーターの境目をなくしているとしている(※3)。

世界モデルと似た技術との違い

NVIDIA は、動画を作るAIのモデルや物理の決まりを組み込んだシミュレーションのソフトと比べて、世界モデルを説明している(※1)。

技術 NVIDIA が示す役割
動画生成モデル 指示に沿って、もっともらしい映像の流れを作る
世界モデル 環境がどう変わるか、理想的には行動が先の状態にどう影響するかを表し、予測や計画、機械の制御に使える
シミュレーションエンジン はっきりと書かれた物理の決まりや規則を持ち、思いどおりに条件を操れる。NVIDIA は、世界モデルはふつうシミュレーションエンジンを置き換えるものではなく、学んだ動きや現実らしさ、場面の多様さ、予測を加えて補うものだとしている

世界モデルの由来と広まった背景

World Labs は、「world model」という言い方のもとを、人の心は現実を小さく写した模型を動かして考えるという、ケネス・クレイクの1943年の説にさかのぼれると説明している。同社によると、この言い方は1980年代の終わりから1990年代の初めまでに、ニューラルネットワークの研究に持ち込まれた(※3)。

ユルゲン・シュミットフーバー氏は、ミュンヘン工科大学の1990年の技術報告で、強化学習に使うニューラルネットワークの「world model」を論じている。強化学習は一般に、試行錯誤で得た報酬をもとに行動の選び方を学ぶ方法を指す。報告は、環境の動きを予測するモデルのネットワークと行動を決めるネットワークを組み合わせる方法を示し、環境の動きを頭の中で模擬して学ぶ使い方も検討した(※4)。

デビッド・ハ氏とシュミットフーバー氏は2018年3月27日に、論文「World Models」を公開した。論文のエージェントは、見たものを小さく圧縮する部分、先を予測する部分、行動を決める部分からなる。論文は、世界モデルが作った「夢」の環境の中だけでエージェントを訓練し、身につけた行動の仕方を実際の環境に移せることを示した(※5)。

NVIDIA は、2025年1月に発表した「Cosmos」で提供するモデルを「世界基盤モデル」と呼ぶ(※6)。世界基盤モデルは、幅広いデータで事前に学習した大きな世界モデルで、ロボットや自動運転などの用途に合わせて調整できる(※1)。NVIDIA のジェンスン・フアンCEOは Cosmos の発表で、世界基盤モデルは大規模言語モデルと同じように、ロボットと自動運転車の開発を進めるのに欠かせないと述べた(※6)。

日本の政府も、世界モデルを技術開発の施策に入れている。AIロボティクス戦略は、文章・画像・動画など複数の種類のデータを扱う国産の基盤モデルの開発の施策で、「現実の動態理解や将来状態の予測を可能とする世界モデル」を含む先端的な技術の基盤を開発するとしている(※7)。

世界モデルに関する主な出来事・ニュース

  • 2018年3月27日 ハ氏・シュミットフーバー氏「World Models」を公開:ハ氏とシュミットフーバー氏は、世界モデルの中で訓練したエージェントを実際の環境に移せることを示した論文を、論文を公開する場の arXiv に投稿した。
  • 2024年8月14日 チューリング「Terra」を発表:チューリングは、自動運転向けの生成世界モデルを開発したと発表した。
  • 2024年12月4日 Google DeepMind「Genie 2」を発表:Google DeepMind は、1枚の画像から、人やAIのエージェントが操作できる3次元の環境を作る世界モデルを発表した。
  • 2025年1月6日 NVIDIA「Cosmos」を発表:NVIDIA は、フィジカルAIの開発に使う世界基盤モデルなどをまとめた基盤を発表した。
  • 2025年6月11日 Meta「V-JEPA 2」を発表:Meta は、動画で学習した世界モデルを発表した。
  • 2025年8月5日 Google DeepMind「Genie 3」を発表:Google DeepMind は、その場で動き回れる世界を文章の指示から作る世界モデルを、一部の研究者とクリエイター向けの限定的な研究プレビューとして発表した。
  • 2025年11月12日 World Labs「Marble」の一般提供を開始:World Labs は、文章・画像・動画などから3次元の世界を作る世界モデルを、誰でも使えるようにした。
  • 2026年1月29日 Google「Project Genie」の提供を開始:Google は、Genie 3 で動く試作のウェブアプリの提供を、米国の Google AI Ultra の18歳以上の加入者に向けて始めた。
  • 2026年3月26日 AIロボティクスに関する関係府省庁連絡会議「AIロボティクス戦略」を決定:政府の関係府省庁の連絡会議は、AIロボティクス戦略をまとめた。戦略は2026年5月27日に一部が変更された。
  • 2026年5月19日 Google「Gemini Omni」を発表:Google は開発者向けの会議 Google I/O で、どんな入力からもさまざまな形式の出力を作れるとする新しいモデル「Gemini Omni」を発表し、最初のモデル Gemini Omni Flash の提供を始めた。出力は映像から始めるとしている。
  • 2026年5月19日 Google「Project Genie」の提供を世界に広げる:Google は、Project Genie の提供を、世界の対象となる Google AI Ultra の18歳以上の加入者に順次広げ始めた。米国の場所については、Street View の画像をもとに世界を作れるようにした。
  • 2026年5月31日 NVIDIA「Cosmos 3」を発表:NVIDIA は、台北で開いた技術の会議 GTC Taipei で、映像の理解と推論、世界の生成、動作の予測を1つにまとめたオープンな世界基盤モデルを発表した。
  • 2026年7月28日 World Labs「Building Worlds That Train Robots」を公表:World Labs は、現実の作業を模擬の世界に作り直し、ロボットの訓練と評価に使う仕組みの初期の結果を公表した。
  • 2026年9月1日 World Labs「Atlas」を発表:World Labs は、文章・画像・動画・3次元のデータを扱う次の世代の世界モデルを発表した。
  • 2026年10月13日 Google「Gemini 4 Argon for Robotics」を公開:Google は、生成AIのモデル Gemini 4 Argon を、ロボットの制御やシミュレーションの組み立てに使う方法を示した。

世界モデルに関する事例・研究

模擬の世界でロボットを訓練し、試す

World Labs の「R2S2R」(real-to-sim-to-real)は、現実の作業を模擬の世界に作り直してロボットを訓練・評価する仕組みだ。この仕組みは、2026年7月21日に World Labs に加わったロボットとシミュレーションの会社 SceniX が開発してきたものだ(※8)。

R2S2R という名前は、現実を模擬の世界に移す流れ(real-to-sim)と、模擬の世界から現実に戻す流れ(sim-to-real)をつないだものだ。

World Labs は、ロボットやセンサー、周りの物、作業の手本を記録する。同社はそれを、ロボットからの見え方と作業の成否を決める物理的なやりとりを保ったまま、操作できる模擬の世界に組み直す。そのうえで、見た目、物の配置、散らかり具合、物理の条件、ロボットの状態、カメラの視点を変え、ロボットが学ぶ場面を増やす(※8)。

World Labs によると、現実の訓練データを使わずに模擬の世界だけで訓練したロボットの動かし方のモデル(ポリシー)が、さまざまな実物のロボットと作業でそのまま使えた。同社は、ケーブルの取り回しや試験管の移し替えなどの作業で、ロボットが人の手を借りずに1時間動き続けた例も示している。

両腕で立方体を受け渡す作業の評価では、模擬の世界で成績のよかったモデルは実物のロボットでも成績がよく、モデルどうしの順位が保たれたという(※8)。

Google は、生成AIのモデル Gemini 4 Argon を、ロボットの開発に使う例を示している。その1つでは、紙に手で描いたスケッチの写真から、Gemini 4 Argon が物理の計算ができるシミュレーションの場面を組み立てる。別の例では、映像を出力する世界モデル「Gemini Omni」の中のロボットを、Gemini 4 Argon が途中の映像を確かめながら指示を直して動かす(※9)。

世界モデルを使い、エージェントやロボットが作業をこなす

Google DeepMind の Genie 3 は、その場で動き回れる世界を文章の指示から毎秒24コマ・720pの解像度で作る。作った世界は、数分間おおむね一貫した姿を保つ(※2)。

Google DeepMind は、3次元の仮想の空間で動く自社のエージェント「SIMA」を、Genie 3 で作った世界の中で動かした。Google DeepMind によると、世界の一貫性が保たれることで、エージェントはより長い一連の行動をとってより複雑な目標を果たせるようになった(※2)。

Meta は、動画で学習させた世界モデル「V-JEPA 2」を、自社の研究所のロボットで試した。Meta によると、ロボットは V-JEPA 2 を使い、手を伸ばす、物をつかむ、物を別の場所に置く、といった作業をこなせた(※10)。

世界モデルの英語での言い方・略語

英語の言い方 意味 使っている主体
World Model 世界の動きを学び、先の状態を予測・模擬するAIのモデル NVIDIA、Google DeepMind、World Labs、Meta など(※1、※2、※3、※10)
World Foundation Model(WFM) 幅広いデータで事前に学習し、用途に合わせて調整して使う大きな世界モデル NVIDIA(※1、※6)
generative world model 生成型の世界モデル World Labs(※8)
World Action Model(WAM) 先に見えるものと行動をまとめて予測し、環境の理解とロボットの動き方の生成をつなぐモデル NVIDIA、World Labs(※1、※3)

世界モデルの今の限界と語が指すものの違い

NVIDIA によると、世界モデルは見た目はもっともらしくても物理としては不完全な結果を出すことがある。同社は、世界モデルが長い時間のうちに誤りを積み重ねたり、まれな場面や安全を左右する場面で失敗したりすることもあるとしている。そのため NVIDIA は、実際に使う仕組みには分野ごとのデータや予測の不確かさの見積もり、ガードレール、人による確認などが必要だとする(※1)。

ガードレールは一般に、AIの動きが安全や規則の範囲を外れないように歯止めをかける仕組みを指す。

個人が試せる世界モデルにも、限界がある。Google DeepMind は2025年8月の発表で、Genie 3 の限界を挙げている。挙げた限界には、実在の場所を地理的に完全に正確には模擬できないことや、続けて操作できるのが数分にとどまることなどがある(※2)。

Google は、Genie 3 で動く「Project Genie」の提供を2026年1月に始めた時点で、改善が要る点も示していた。その中には、作られた世界が現実の物理に必ずしも沿わないことや、生成が60秒までであることなどがある(※11)。

World Labs は、コンピュータービジョン、ロボット工学、強化学習、生成AIの各分野が、それぞれかなり違う意味で「world model」という語を使っていると指摘している(※3)。世界モデルという名の付いた製品や研究の発表を読むときは、映像を作るものか、物理の状態を模擬するものか、ロボットの行動を決めるものかを確かめると、中身をつかみやすいだろう。

世界モデルに関する出典

※1 NVIDIA「What Is a World Model? | NVIDIA Glossary」
※2 Google DeepMind「Genie 3: A new frontier for world models」(2025年8月5日)
※3 World Labs「A Functional Taxonomy of World Models」(2026年6月3日)
※4 Jürgen Schmidhuber「Making the World Differentiable: On Using Self-Supervised Fully Recurrent Neural Networks for Dynamic Reinforcement Learning and Planning in Non-Stationary Environments」(Technical Report FKI-126-90、ミュンヘン工科大学、1990年)
※5 David Ha、Jürgen Schmidhuber「World Models」(2018年3月27日、arXiv)
※6 NVIDIA「NVIDIA Launches Cosmos World Foundation Model Platform to Accelerate Physical AI Development」(2025年1月6日)
※7 AIロボティクスに関する関係府省連絡会議「AIロボティクス戦略 ~社会実装を加速し、巨大市場を切り拓く~」(2026年3月26日決定、5月27日一部変更)
※8 World Labs「Building Worlds That Train Robots」(2026年7月28日)
※9 Google「Gemini 4 Argon for Robotics」(2026年10月13日)
※10 Meta「Our New Model Helps AI Think Before it Acts」(2025年6月11日)
※11 Google「Project Genie: Experimenting with infinite, interactive worlds」(2026年1月29日)
※12 チューリング「チューリング、日本初の自動運転向け生成世界モデル「Terra」を開発、リアルな運転シーンを自在に生成、より安全かつ効率的な自動運転開発を加速」(2024年8月14日)
※13 Google DeepMind「Genie 2: A large-scale foundation world model」(2024年12月4日)
※14 World Labs「Marble: A Multimodal World Model」(2025年11月12日)
※15 内閣官房「AIロボティクスに関する関係府省庁連絡会議」
※16 Google「I/O 2026: Welcome to the agentic Gemini era」(2026年5月19日)
※17 Google「Simulate real-world places with Project Genie and Street View」(2026年5月19日)
※18 NVIDIA「NVIDIA Launches Cosmos 3, the Open Frontier Foundation Model for Physical AI」(2026年5月31日)
※19 World Labs「Atlas: A World Model for Spatial Intelligence」(2026年9月1日)