Human-agent Team(ヒューマン・エージェント・チーム)とは・意味、進め方・事例

最終確認日:2026年10月28日
Human-agent Teamとは?
Human-agent Team(ヒューマン・エージェント・チーム)とは、人とAIエージェントが1つのチームに加わり、共通の目標に向けて仕事を分け合う働き方のこと。英語では「human-agent team」と書く。
Microsoft は2025年4月に公表した働き方の年次報告書で、これからの組織の柱の一つにこの語を挙げた。日本マイクロソフトの日本語版の記事は、この語を「人と AI エージェントのチーム」と訳している(※1、※2)。
Anthropic によると、これまでのAIの使い方は、1人の人が1つのエージェントと組んで個別の作業を進める形だった。同社はこれを、1人で遊ぶゲームにたとえて「single-player」と呼ぶ。
ヒューマン・エージェント・チームでは、人とエージェントが同じ作業の場に集まり、チームで共有する目標のために働く。同社はこの形を大勢で遊ぶゲームにたとえ、多くの人と同時に働くエージェントを「マルチプレイヤーエージェント」(multiplayer agents)と呼んでいる(※3)。
Human-agent Teamが広まった経緯
Microsoft は新しい組織の軸の1つに人とエージェントのチームを挙げた
Microsoft は2025年4月23日に、働き方の年次報告書「2025 Work Trend Index」を公表した。同社はこの報告書で、AIを軸に組み立てた新しい形の組織を「Frontier Firm」(日本語版は「フロンティア組織」)と呼んだ。
同社によると、この組織は、必要なときに使える知能、ヒューマン・エージェント・チーム、全員が担いうる新しい役割「エージェントボス」を軸にしている。エージェントボスは、エージェントを作り、仕事を任せ、管理する人を指す(※1、※2)。
報告書は、組織がこの形に移るまでを3つの段階で示した。報告書によると、段階は一直線に進むとは限らない。多くの場合、組織は3つの段階に同時にいることになるという(※4)。
Anthropic は Slack に加わる Claude Tag を発表
Anthropic は2026年6月23日に、Slack のチャンネルに Claude をチームの一員として加える「Claude Tag」を発表した。チャンネルにいる人は誰でも Claude に仕事を頼める。1つのチャンネルでは1つの Claude が全員とやり取りするので、誰でも Claude が何に取り組んでいるかを見られる(※5)。
Anthropic は社内の試行をもとにチームの作り方を説明
翌日の6月24日、Anthropic はヒューマン・エージェント・チームの作り方を社内の試行から説明する記事を公開した。同社によると、AIはコーディングや調査、財務の分析のような長く複雑な仕事をこなす力を高めてきた。
Claude Tag のような道具が出て、人とエージェントが同じ作業の場で働けるようになったという(※3)。同社はこの記事のあと、Slack と Asana でのやり方を聞いた記事を続けて公開した(※6、※7)。
チームで働くエージェントに要る機能と管理者の設定
Anthropic は、エージェントがチームのチャンネルで役に立つには、次のような機能が要ると説明している(※3)。
- 長く続く記憶。エージェントは、これによって目標を覚えておき、目標に合わせて仕事の進め方を調整できる。
- 特定の人に結び付かない、エージェント自身の認証情報。エージェントはこれを使い、安全で予測できる範囲の中で動ける。
- 情報への広く続くアクセス。エージェントはこれによって組織の動き方を学び、チームの目標のために仕事を進められる。
Claude Tag を使うには、どのチャンネルで Claude にどの道具と情報を使わせるかを、システムの管理者が決める。Claude の記憶も、管理者が決めたチャンネルの範囲にとどまる。管理者は、使う量の上限を組織とチャンネルごとに決められる。Claude がしたことと誰がそれを頼んだかの記録も、管理者が見られる(※5)。
Anthropic が示すヒューマン・エージェント・チームの進め方
Anthropic は、社内で試した結果をもとに、ヒューマン・エージェント・チームを機能させるための教訓を挙げている(※3)。
- 仕事を公開の場で進める。エージェントは、Slack やコード、文書、会議の記録など、チームが検索できる文章だけから状況を理解する。個人あてのメッセージや廊下での立ち話、閲覧を制限した文書は、エージェントに文脈を与えられない。Anthropic は資料ごとに公開の範囲を決めず、ワークスペース全体にかける少数のセキュリティの境界を決めている。
- 人とエージェントのそれぞれに、役割と道具を割り当てる。たとえば、あるエージェントはデータの分析を受け持ち、別のエージェントはデザインの基準を守らせ、もう1つのエージェントは調査の結果をまとめる。人は多くの場合エージェントと同じスレッドで働き、人にしか担えない役割を受け持つ。Anthropic のある開発チームは、エージェントの役割をエージェントスキルのファイルに書いて決めた。
- 目指す大きな目標は、人が決める。同社は、チームが向かう野心的な目標を「north star」と呼ぶ。この目標を決めるのは常に人だ。人は目標を文章にしてエージェントと共有し、新しい仕事を自分から提案してよいエージェントを選ぶ。
- 信頼を少しずつ築く。エージェントに任せる範囲は、確かな働きを示した分に応じて広げる。初めは人がエージェントの仕事を見直して質を確かめ、成功が続いた種類の作業から任せる範囲を広げる。作業する役のエージェントと、その結果を確かめる役のエージェントを分ける組み方は、よく「Doer-Verifier」と呼ばれる。
Anthropic は、これらのやり方はどれも人のチームでは昔から知られた習慣だとしている。同社によると、エージェントが加わると、こうした基本を省かないことがいっそう大切になる(※3)。
Human-agent Teamに関する主な出来事・ニュース
- 2025年4月23日 Microsoft「2025 Work Trend Index」を公表:Microsoft は、ヒューマン・エージェント・チームを新しい組織の柱の一つとする年次報告書を公表した。
- 2026年6月23日 Anthropic「Claude Tag」を発表:Anthropic は、チームのメンバーとして Slack に加わる Claude Tag を、Claude Enterprise と Team の利用者向けにベータ版で提供し始めた。
- 2026年6月24日 Anthropic「Lessons from Anthropic on building effective human-agent teams」を公開:Anthropic は、社内の試行から得たヒューマン・エージェント・チームの教訓を公開した。
- 2026年10月19日 ガートナー、CIOへの調査の結果を発表:ガートナーは、CIOと技術部門の幹部2,002人への調査で、人とAIエージェントがともに働く体制に向けた役割の見直しの計画を尋ねた結果を発表した。
Human-agent Teamに関する事例・調査
Anthropic の開発チームはたまった課題をエージェントと分担
Anthropic の記事によると、同社の技術者は、チームのエージェントにバグの修正500件を人の手を借りずにこなさせたことがある。ただし、初めからそこまで任せたわけではないという(※3)。
同社のある開発の責任者は、未処理の課題を多く抱えたチームを引き継いだ。この責任者は、数人の人と数体のエージェントの手を借りて課題を整理した。一方のエージェントたちは、すべての課題を読んで担当者がいるかを調べ、担当者のいない課題に難しさの点数を付けた。もう一方のエージェントたちは、その一覧から難しさが中程度と低い課題に絞り、コードの変更を作った。
初めは人がエージェントの判断をすべて見直し、人の判断が要るものに印を付けた。その後、人はエージェントに、そうした判断を直接人に回すよう教えた。チームは毎週エージェントに「lessons & missteps」(学びと失敗)を含む報告をまとめさせ、エージェントが失敗を記録して繰り返さないようにした(※3)。
Asana では役割と権限を決めたエージェントを社員が利用
チームの仕事を管理するサービスの Asana では、社員がどのプロジェクトでも、人の同僚と同じようにエージェントと働ける。同社は自社のエージェントを「AI teammates」と呼ぶ。Anthropic の記事で、Asana の最高製品責任者の Arnab Bose 氏が自社の使い方を説明した(※7)。
- エージェントは、文章を書く役や分析する役などの役割ごとに作られ、それぞれにプロフィールのページがある。ページには、名前と目的、使える人、管理者、指示、スキル、連携するサービス、権限が並ぶ。
- Asana によると、エージェントが実際に使える範囲は、エージェントを動かした人の権限の内側に限られる。
- エージェントへの意見は誰でも出せるが、長く残る記憶に書き込めるのは管理者と編集者だけだ。ほかの社員の意見は、その作業にだけ生かされる。
- 顧客の部門が作ったエージェントは、契約が更新されないおそれのある顧客について、担当者の記録をすべて読む。エージェントは毎朝そのまとめを作り、最高顧客責任者と最高収益責任者、各地域の顧客サクセスの責任者に届ける。受け取った人は、まとめについて質問したり、次から覚えておくことをエージェントに教えたりできる。
Slack の最高製品責任者が語る、人とエージェントの仕事の受け渡し
Slack の最高製品責任者の Jaime DeLanghe 氏に聞いた Anthropic の記事は、ヒューマン・エージェント・チームの基本の流れを、仕事の受け渡しの繰り返しと説明している。エージェントが下書きや要約、見守り、準備を受け持ち、結果を人に渡す。人は見直して決め、方向を直してから、次の作業をエージェントに戻す(※6)。
月曜の朝、DeLanghe 氏のもとには、エージェントが作った毎日の報告が届いている。前の週の製品のワークショップのまとめや対応を急ぐ案件、その日の会議の資料なども、同氏の見直しを待っている。DeLanghe 氏は、これから始める組織に向けて、少人数を Claude のいる共有のチャンネルに集め、同じ資料を渡して働かせることを勧めている(※6)。
ガートナーの調査では、役割の見直しに明確な計画があるCIOは4%
ガートナーは2026年5〜7月に、2,002人のCIOと技術部門の幹部に調査した。同社は、事業の成果でよりよい実績を上げ、最高経営責任者から見たAIの価値も高いと答えたCIOを「vanguards」(先頭集団)と呼ぶ。
人とAIエージェントがともに働く体制(原文では「human-agent workforce」)に向けて役割を設計し直す明確な計画がある組織は、先頭集団に入る割合が2.4倍だった。それでも、そうした計画があると答えたCIOは4%にとどまった(※8)。
Human-agent Teamで人が受け持つことと注意点
各社の説明には、人が受け持つことにいくつかの共通点がある。Anthropic によると、同社では常に人が目標を決める。エージェントに任せ始めたときは、その仕事を人が見直して質を確かめる。
先に紹介した開発の責任者のチームでは、判断の難しい場面に必ず人が関わるようにした(※3)。Microsoft は、人とエージェントの比率を作業ごとに決める必要があるとする。重い結果を招く製品や財務の判断のように、社会が人に責任を求める場面も考える必要があるという(※1)。
人の時間と注意にも限りがある。同じ開発の責任者は、エージェントが自分で動けるようになると、人への質問をまとめて一度に聞き、一度に人に見せる項目の数を絞るよう教えた。Anthropic の記事によると、エージェントが1日にする仕事の量に上限を設ける人もいる。人が大切な技能を保ち、見直す項目の数を続けられる範囲にとどめるためだという(※3)。
ここで紹介した進め方と事例は、AIの製品を提供する Anthropic が自社での試行と、Slack・Asana の幹部に聞いた両社での使い方をもとに説明したものだ。Microsoft の段階や比率の考え方は、同社の調査をもとにした見方だ。どれも、第三者がほかのやり方と効果を比べた結果ではない。自分の職場に取り入れるときは、仕事の中身や扱う情報の公開の範囲に合わせて考える必要がある。
Human-agent Teamに関連する用語
- ヒューマン・イン・ザ・リード:人がAIを道具として統制し、物事を決める主導権と価値を生み出す主導権を持つという考え方。
- エージェントID:AIエージェントに、人の利用者のアカウントとは別に割り当てる専用のID。
- エージェントスキル:仕事の手順や専門の知識をファイルにまとめ、AIエージェントが必要なときに読み込んで使えるようにする仕組み。
Human-agent Teamに関する出典
※1 Microsoft「The 2025 Annual Work Trend Index: The Frontier Firm is born」(2025年4月23日)
※2 日本マイクロソフト「2025 Work Trend Index を公開: 新たな組織概念 “フロンティア組織”の誕生」(2025年4月24日)
※3 Anthropic「Lessons from Anthropic on building effective human-agent teams」(2026年6月24日)
※4 Microsoft「2025: The year the Frontier Firm is born」(2025年4月23日)
※5 Anthropic「Introducing Claude Tag」(2026年6月23日)
※6 Anthropic「Turning conversation into knowledge: how Slack builds human-agent teams」(2026年8月19日)
※7 Anthropic「Agents you can coach: how Asana builds human-agent teams with Claude」(2026年9月29日)
※8 Gartner「Gartner Survey Finds Only 13% of CIOs Say Their Enterprise Has Realized Significant or Transformational Value from AI」(2026年10月19日)




