生成AIを使うと考える力が落ちる?AI研究を踏まえた、AIのより良い使い方や学べる講座も

生成AIに企画書の骨子やメールの下書きを頼むと、数分で形が整う。でき上がった案や資料を眺めて、自分の考えとしてうまく説明できない、と気づいて手が止まったことはないだろうか。パーソル総合研究所が2026年4〜5月に実施した調査では、業務で生成AIを週4日以上使う人のうち「AIで考えた内容を自分の考えとして整理しきれないことがある」が23.5%、「仕事の課題を、自分で考える前にまずAIに聞くことが多い」が27.6%だった。
内閣府の消費者委員会事務局が2026年2月に生成AIの利用者1,442人に尋ねた調査では、「思考力・判断力の低下(AIに頼りすぎて、自分で考えなくなること)」への不安も聞いている。「非常に不安だ」「やや不安だ」と答えた人は、合わせて57.8%いた。
生成AIをより良く使うにはどうすればよいのか。この記事では、AI研究も踏まえて、AI利用時の注意点や工夫、学び方を考える。
考える力が落ちる使い方、落ちない使い方の違いは?
AIを使って新しい技術を覚えた開発者は、AIなしの確認テストで、自分で書いた組より点が低かった。Anthropicの研究者は2026年1月に、開発者を対象にした実験を査読前の論文として公開した。Pythonの経験があるソフトウェア技術者52人が、初めて触るライブラリを使って機能を作った。半数はAIの助けを使い、半数は自分でコードを書いた。その直後、作業で使ったばかりの考え方を問うテストをAIなしで受けると、AIを使った組の点は自分で書いた組より17ポイント低かった。
差が最も大きかったのは、プログラムの不具合を見つける問題だった。自分でコードを書いた組は作業中に多くの誤りに出会い、自分で直していた。研究者は、その経験で不具合を見つける力がついたと見ている。
AIを使った組の中でも、点は使い方で分かれた。コードを書かせるだけでなく、説明を求めたり、考え方を質問したりしながら進めた人は、平均で65%以上の点を取った。書く作業をAIに任せきりにした人は、40%に届かなかった。
出典:Shen, J. H. & Tamkin, A.「How AI Impacts Skill Formation」arXiv(2026年1月公開、査読前)
Anthropic「How AI assistance impacts the formation of coding skills」(2026年10月12日時点)
AIの支援に慣れたあと、AIなしで仕事をしたときの成績が下がった専門職の例もある。ポーランドの4つの内視鏡の施設では、2021年の終わりに、ポリープを見つけるAIを導入した。AIを使わずに行った大腸内視鏡で、がんになりうるポリープを見つけた割合を導入前後の3か月ずつで比較すると、28.4%から22.4%に下がった。結果は、患者1,443人の記録を調べた研究で、2025年に医学誌Lancet Gastroenterology & Hepatologyで発表された。ただし、使われたのは生成AIではなく、画像から病変を見つけるAIだ。
反対に、AIを使わなかった場面でも成績が上がったままだった職場もある。米国の研究者が2025年に経済学誌で発表した研究の対象は、カスタマーサポートの担当者5,172人だ。導入された生成AIは、うまくいった対応とそうでない対応の記録で調整され、対応中に返答の候補を出す。1時間あたりに解決した問い合わせは平均で15%増えた。システムの障害でAIの提案が出なかった時間帯にも、担当者の成績は導入前より高かった。
研究者は、担当者がAIの提案を確かめながら使ううちに、成績のよい担当者のやり方を身につけたと見ている。担当者は、AIを使い始めて1か月後の障害では対応の速さが導入前とほとんど変わらなかったが、3か月後の障害では、AIなしでも導入前より速く対応できていた。使い始めの1か月に提案をよく取り入れていた人は、障害の時間帯も対応が速かった。最初の1か月に提案をあまり取り入れなかった人は、何か月たっても障害の時間帯の対応の速さが導入前と変わらなかった。
開発者の実験で点が低かったのは、書く作業や不具合の修正をAIに任せきりにした人だった。カスタマーサポートの担当者は、提案を1つずつ見て使うかを決めながら、同じ種類の問い合わせに何か月も向き合っていた。AIの答えを手本として確かめ、同じ仕事で繰り返し使えば、力が身につきうる。
生成AIに答えを聞く前に、自分の考えを書き出しておく
カーネギーメロン大学とMicrosoft Researchの研究者らは2025年、ChatGPTやCopilotなどを週1回以上仕事で使う知識労働者319人の調査を発表した。936件の実例についての答えでは、AIを使うと批判的に考える作業が楽に感じられていた。AIを信頼している人ほど、批判的に考えたと答えることが少なかった。AIを使った仕事を、AIなしでもこなせると思っている人ほど、批判的に考えたと答えることが多かった。
回答からは、考える作業の中身が、情報を集めることから確かめることへ、自分で問題を解くことからAIの答えを組み込むことに移り変わっている様子が見える。
考える力を養う方法の一つは、AIに答えを聞く前に、自分の考えを一度書き出しておくことだ。企画なら骨子を、メールなら返信の要点を先に書き、AIにはそれへの反論や抜けを挙げてもらう。
先にAIの案を見て書くと、書き手どうしの作品が似通いやすい。DoshiとHauserが2024年に発表した実験では、GPT-4のアイデアを使えた書き手の短い物語は創造的と評価されたが、物語どうしは似ていた。案の数を早くそろえたいときにAIに案を出させることは有効だが、そうして作る人が増えると、全体として生まれる案の幅は狭まりやすいことを念頭に置いておきたい。
AIを壁打ち相手として使うなら、たとえば「以下は私が考えた企画の骨子です。反論、抜けている観点、前提が誤っているかもしれない所を挙げてください」と頼む。メールなら「この返信案で、相手が誤解しそうな所と、答えていない質問を挙げてください」などと頼んでみると良いだろう。
プロンプトの最初に「答えはすぐに出さず、質問を重ねて私に考えさせてください。私の案が固まってから、足りない所を指摘してください」と書いておく方法もある。ChatGPTとGeminiには、答えをすぐに出さず質問で導くモードもあり、英語の案内ではそれぞれ「study mode」「Guided Learning」と呼ばれている。
AIで仕上げた資料の要点を、自分で説明できるか確かめる
AIに書かせる仕事が多い人は、AIで仕上げた資料や企画を1つ選び、AIを閉じて、その要点を紙に書き出すか、口頭で説明してみる。詰まった所は、自分の考えや言葉にできていない所なので、次にAIに頼む前に、そこを自分で書いてみる。
AIで済ませてよい仕事と、ときどきAIなしでやり直す仕事も分けておく。目安は、自分が説明の責任を負う仕事か、この先も何度も繰り返す仕事か。どちらかに当たる仕事は、たまに自分で組み立ててからAIの案と並べると、自分の案に何が足りないかが見える。
経済産業省は2023年8月の文書で、生成AIへの頼りすぎが仕事の経験を積んで育つ機会を奪いうるとし、新卒など経験の浅い人ほど影響が大きいと見ている。
部下や後輩に仕事を任せている立場の人は、上がってきた資料がAIで仕上がっていたときに、その要点と、部下や後輩が自分で手直ししたい箇所と理由を、本人に説明してもらう。説明が止まった所から、次に本人に組み立ててもらう部分を決められる。
生成AIは、独学のほかにどんな講座で学べる?
以下では、無料で受けられるマナビDXの講座と、提出した課題にフィードバックを受けられる有料の講座を紹介する。学べる内容やフィードバックの形から使い分けたい。
経済産業省とIPAが審査した講座を無料で受けられる「マナビDX」
マナビDXは経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営するサイトで、両者がスキル標準への対応を審査し、合格した講座だけを載せている。
トレノケートの「Copilot for Microsoft 365入門!」は、オンラインセミナーを録画した1時間32分の講座で、申し込むと視聴用のURLをメールで受け取れる。Copilotへの指示の書き方とWordでの使い方に加え、出てきた答えの信憑性など、使うときの注意点を学べる。
CARTA ZEROの「実務で使えるAI活用術を学べるeラーニング」は、31講座・4時間17分を無料で受けられ、前提知識は要らない。AIを使うときのリスクとセキュリティの考え方から、ChatGPT・Gemini・Copilot・NotebookLMの使い方、ChatGPTを使ったビジネス文章のトレーニングまでを扱う。
提出した課題にフィードバックしてもらえる「クラウドワークス アカデミー 生成AI入門講座」
クラウドワークス アカデミーの生成AI入門講座では、3週間のあいだに、動画で学んで課題を出すことを3回繰り返す。1週目は生成AIの仕組みと仕事での得意・不得意、情報漏洩を防ぐための注意点、2週目はプロンプトの組み立て方と、思った答えが出ないときにAIと対話して直すやり方を学ぶ。3週目には、学んだことを使って自分の業務の課題を解くカスタムAIを設計する。提出した課題には、3週目の設計も含めて、メンターからフィードバックしてもらえ、受講期間中はチャットでいつでも質問できる。講座で使うChatGPTは無料版で足りる。
受講料は税込39,600円の一括払い。期ごとの開講で、2026年10月13日時点の次の期は12月1日〜21日だ。動画はいつでも見られ、課題も期間内なら自分のペースで進められる。学習時間は1日平均1時間以上が勧められている。申し込む前に、30分の無料個別相談で講座のことを1対1で質問できる。
クラウドワークス アカデミー 生成AI入門講座の詳細を見る クラウドワークス アカデミーのサイトを見る
職種別のコースとライブゼミを月額で受けられる「DMM 生成AI CAMP 学び放題」
DMM 生成AI CAMPの学び放題は月額制で、約1,000レッスンを受けられる。営業・マーケティング・人事など職種別のコースがあり、営業コースは全7レッスンで、自習が約21.5時間、課題が約11.5時間の分量だ。生成AIの知識がない人も受けられる基礎マスターコースでは、議事録やメールの作成、商品のアイデア検討などへの使い方を、課題に手を動かして学び、課題にはAIチューターからフィードバックをもらえる。定期的に開催される相談会で、メンターにも相談できる。
会員は、講師がライブで教えて公開で添削する3か月のライブゼミにも追加料金なしで参加でき、出られなかった回は録画で見られる。ゼミには生成AI基礎マスターゼミやMicrosoft 365 Copilotマスターゼミなどがあり、定期的に募集がある。受講料は月額プランで税込16,280円、最低契約期間はなく、ゼミの3か月に合わせて続けると48,840円になる。申し込む前に、60分の無料セミナーで中身を聞ける。
DMM 生成AI CAMP 学び放題の詳細を見る DMM 生成AI CAMPのサイトを見る
有料の2つの講座は、受講料が原則として返金されない
| 講座 | 料金(税込、2026年10月13日時点) | 申し込む前に知っておきたい条件(2026年10月7日〜13日に公式サイトで確認) |
|---|---|---|
| マナビDXの2講座 | 無料 | 完全オンライン。Copilotの講座は申し込むと視聴用のURLがメールで届く。CARTA ZEROの講座の無料プランの登録は1人1つまで |
| クラウドワークス アカデミー 生成AI入門講座 | 39,600円(一括) | 支払いはクレジットカードのみで、決済後の返金はない。次の期の申込期限は2026年11月26日。教材は講座が終わってから1週間まで見られる。動画はスマホでも見られるが、AIの操作と課題づくりにはパソコンが強く勧められている。SlackとGoogleのツールを使う。個人向けの給付金・補助金の案内はない。運営会社は法人向けに別の訪問型の「AI活用研修」(1名176,000円、人材開発支援助成金の案内あり)を設けている |
| DMM 生成AI CAMP 学び放題 | 月額16,280円(最低契約期間なし) | 支払いはクレジットカードのみ。契約は自動更新で、止めるには契約が終わる日の前日までに退会を申請する。返金は原則なく、例外は契約開始から8日以内でアカウントがまだ発行されていない場合だけで、返金手数料が差し引かれる。アカウントは入金の確認から3営業日以内に発行される。月額プランでは、ゼミに同時に参加できるのは1つまで。メンターへの相談はオンラインのイベントで、1対1の指導は別料金。無料体験の案内はない。パソコンが前提の教材がある。一部の教材ではAPI利用料やChatGPT Plusなど外部サービスの料金が自己負担。個人向けの給付金・補助金の案内はなく、法人向け(20名から)には人材開発支援助成金の案内がある |
※2026年10月時点
※DMM 生成AI CAMP 学び放題には、6ヶ月プラン(一括90,530円、税込)と12ヶ月プラン(一括162,800円、税込)もあり、参加できるゼミの数に制限はない。どちらも一括払いで、公式のよくある質問では、途中で退会しても残りの期間分は返金されない。特定商取引法の特定継続的役務(パソコン教室など。期間2か月超・金額5万円超)に当たる契約なら、クーリング・オフと中途解約の定めが法律にあるが、公式の表記からは、この講座が当たるかどうか判断できない。一括のプランを選ぶ前に、運営会社に問い合わせておきたい。
※料金・講座の内容・開講日・申込期限は2026年10月13日に公式サイトとマナビDXの講座ページで、返金・自動更新などの条件は2026年10月12日に公式サイト、利用規約、特定商取引法に基づく表記で、DMM 生成AI CAMPの支払い方法・相談の形・教材の前提・途中退会の扱いは2026年10月7日に公式のよくある質問で確認した内容による。
【参照元】
- パーソル総合研究所「AI環境における人材とマネジメントに関する定量調査」(2026年7月22日公表、調査は2026年4〜5月)
- 内閣府 消費者委員会事務局「生成AI利用者の利用実態に関するアンケート結果」(2026年6月4日公表)
- Shen, J. H. & Tamkin, A.「How AI Impacts Skill Formation」arXiv(2026年1月公開、査読前)、Anthropic「How AI assistance impacts the formation of coding skills」(2026年10月12日時点)
- Budzyń, K. ほか「Endoscopist deskilling risk after exposure to artificial intelligence in colonoscopy: a multicentre, observational study」Lancet Gastroenterology & Hepatology(2025年8月12日公開)
- Brynjolfsson, E., Li, D. & Raymond, L.「Generative AI at Work」Quarterly Journal of Economics(2025年2月4日公開)
- Cruces, G. ほか「Does Generative AI Narrow Education-Based Productivity Gaps? Evidence from a Randomized Experiment」NBER Working Paper 34851(2026年2月公開、5月改訂、査読前)
- Lee, H.-P. ほか「The Impact of Generative AI on Critical Thinking: Self-Reported Reductions in Cognitive Effort and Confidence Effects From a Survey of Knowledge Workers」CHI ’25(2025年4月公開)
- Liu ほか「Borrowed or kept? How self-generation-first and direct-adoption AI workflows shape immediate unaided reasoning」Frontiers in Psychology(2026年9月14日公開)
- Bastani, H. ほか「Generative AI without guardrails can harm learning: Evidence from high school mathematics」PNAS(2025年6月25日公開)
- Doshi, A. R. & Hauser, O. P.「Generative AI enhances individual creativity but reduces the collective diversity of novel content」Science Advances(2024年7月12日公開)
- 経済産業省「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」(2023年8月7日公表)
- OpenAI「Using study mode in ChatGPT」(2026年10月12日時点)
- Google「Guided Learning in Gemini: From answers to understanding」(2025年8月6日公開)







