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仕様駆動開発(Spec-Driven Development)とは・意味、進め方・道具の違い・事例

最終確認日:2026年10月31日

仕様駆動開発とは?

仕様駆動開発とは、ソフトウェアに求める動きを先に仕様として文書にまとめ、それを基準にAIエージェントにコードを作らせて確かめる開発の進め方のこと。英語では「Spec-Driven Development」と書き、SDDと略す。情報処理推進機構(IPA)のシラバス案は、「仕様駆動開発(SDD)」と表記している(※7)。

GitHub は仕様を、コードのふるまいを取り決めた約束事と説明する。道具やAIエージェントは、この仕様を基準にコードを生成し、テストし、検証するという(※1)。

GitHub と、Amazon のAI開発環境 Kiro は、この進め方をバイブコーディングと対比して説明している(※1、※3、※5)。GitHub によると、目的を伝えてコードを受け取るやり方は手早い試作には向くことがある。一方で、失敗の許されない重要なアプリや既存のコードを扱う開発では、頼りにしにくくなるという(※1)。

2025年の時点で、語の意味は固まっていなかった。ソフトウェア開発の支援を手がける Thoughtworks は2025年11月に、定義は変化の途中だとしたうえで、構造化した機能の仕様から始め、複数の段階で小さな単位や解決策、タスクに分けていく作業の流れを一般に指すと説明した(※5)。

仕様駆動開発の進め方

Spec Kit の進め方は発表のとき4段階だった

GitHub は2025年9月の発表で、オープンソースの道具集「Spec Kit」の進め方を次の4段階で説明した(※1)。

Spec Kit の4つの段階GitHub の2025年9月の説明をもとに整理
1
仕様を書く(Specify)何をなぜ作るのかを大まかに伝え、AIエージェントが詳しい仕様を作る技術の選択ではなく、利用者の体験や成功の姿を扱う
2
計画を立てる(Plan)使いたい技術や構成、制約を伝え、AIエージェントが技術の計画を作る比べるために複数の案を出させることもできる
3
タスクに分ける(Tasks)AIエージェントが仕様と計画を、見直せる大きさの作業に分ける各タスクは単独で実装とテストができるものにする
4
実装する(Implement)AIエージェントがタスクを順に、または並行して進める人は問題ごとに絞られた変更を見直す
出典:GitHub「Spec-driven development with AI: Get started with a new open source toolkit」(2025年9月2日)

GitHub は、段階ごとに人が内容を見直し、確かめてから次へ進むものと説明している。成果物を作るのはAIで、それが正しいかを確かめるのは人だという(※1)。

仕様をどこまで使い続けるかは手法で違う

Thoughtworks の Birgitta Böckeler 氏は、2025年10月の記事で、仕様駆動開発には3つの水準があるように見えると書いた(※6)。

  • spec-first:先に練った仕様を書き、目の前の作業に使う。
  • spec-anchored:作業のあとも仕様を残し、その機能の改良や保守に使い続ける。
  • spec-as-source:仕様が長期にわたって主なソースファイル(プログラムの元になるファイル)となり、人は仕様だけを編集してコードに触れない。

同氏が見つけた手法や定義はどれも spec-first だが、すべてが spec-anchored や spec-as-source を目指しているわけではないという(※6)。

仕様駆動開発の道具の違い

GitHub の発表は Spec Kit を、Kiro の発表は Kiro 自体を、仕様駆動開発の道具として説明している(※1、※3)。Google は2025年12月の発表で、Conductor の進め方を「context-driven development」と呼んだ。同じ発表によると、Conductor でも仕様と計画を Markdown ファイルに残してから実装に進む(※11)。

Markdown は、見出しなどを記号で書く文書の形式だ。今のリポジトリの説明では、Conductor はAIコーディングエージェント向けのプラグインで、仕様駆動開発を可能にするとされている(※16)。

道具 提供元 段階 残すもの
Spec Kit GitHub 最小の流れでは、原則を定める「constitution」をプロジェクトごとに1回作る。残りの手順は機能ごとに行い、specify、plan、tasks と進めたあと、implement と converge を収束するまで繰り返す(※12) 仕様、計画、タスクなど(※2)
Kiro Amazon(※5) 要件(不具合の修正では不具合の分析)、設計、タスクの3段階(※4) requirements.md(または bugfix.md)、design.md、tasks.md(※4)
Conductor Google 2025年12月の発表では、文脈の設定、仕様と計画の作成、実装の順(※11) 製品や技術の構成などの文脈、仕様、計画の Markdown ファイル(※11)

※2026年10月時点。Conductor の段階と残すものは2025年12月の発表による。

仕様駆動開発が広まった背景

Kiro は2025年7月の発表で、指示を重ねて動くアプリができても、本番に出すには足りないと述べた。Kiro はその問題として、モデルが何を前提にしたのかが分からないこと、判断が記録に残らないこと、要件があいまいなことなどを挙げた(※3)。GitHub も、あいまいな指示ではモデルが書かれていない要件を推測するしかなく、一部は誤った推測になると説明している(※1)。

Spec Kit の文書は、仕様駆動開発を可能にし必要にもしている動きとして、AIの能力の向上、ソフトウェアの複雑化、要件の変化の速さの3つを挙げている(※2)。

Thoughtworks は2025年11月に、多くの開発者がこのやり方を取り入れているのを見てきたと書いた(※5)。同社は2026年4月の技術動向の報告 Technology Radar Vol. 34 でも、コーディングエージェントを使うチームのあいだで、仕様駆動開発の作業の流れの採用が増えているとしている(※17)。

Kiro は2026年7月の記事で、仕様駆動開発をAIのコーディングの道具に持ち込んだのは自社が最初だと述べている(※15)。

仕様駆動開発に関する主な出来事・ニュース

  • 2025年7月14日 Kiro「Introducing Kiro」を公開:Kiro は、spec-driven development を打ち出すAIの開発環境を発表した。プレビューの間は、制限つきで無料とした。
  • 2025年9月2日 GitHub「Spec Kit」を公開:GitHub は、仕様駆動開発のためのオープンソースの道具集を公開した。
  • 2025年11月5日 Thoughtworks「Technology Radar」に掲載:Thoughtworks は、仕様駆動開発を、企業への影響を理解するために探る価値があるとする「Assess」に位置づけた。
  • 2025年11月17日 Kiro、一般提供を開始:Kiro は一般提供を始め、端末で使う Kiro CLI や、作業を前の状態へ戻すチェックポイントなどの新しい機能を公開した。
  • 2025年12月17日 Google「Conductor」を発表:Google は、Gemini CLI の拡張機能 Conductor をプレビューとして公開した。Gemini CLI は、Google のAIを文字の命令で使う道具だ。
  • 2026年9月30日 IPA、基本情報技術者試験などのシラバス案を掲載:IPAは、基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験のシラバス案を掲載した。IPAはあわせて、プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)と情報処理安全確保支援士試験の科目A-1(共通知識)のシラバス案も載せた。

仕様駆動開発に関する事例・研究

OTTO は社内で仕様からMVPを作る実験を2週間行った

ドイツの小売企業 OTTO の Nina Braunger 氏は、2026年7月の記事で社内の2週間の実験を報告した。目標は社内向けの画面をMVP(必要最小限の機能を備えた製品)まで作ることで、コードを1行も手で書かず、バイブコーディングも避けるという条件を付けた(※14)。

OTTO の例では、要望を整理してから計画、実装、見直しの順に進めた。チームが返品サービスの一部を定義しなかったため、選択欄にも一部しか出なかった。自動のテストがない間は、動かないボタンや入力の確認の抜けといった不具合が見逃された。同氏は仕様の質が結果の質を大きく左右すると結論づけ、開発が速くなったなどの変化を挙げているが、数値は示していない(※14)。

Google の研究者らはテストの生成で仕様の効果を比較

Google の Michele Tufano 氏らは、2026年8月に公開した論文で、AIエージェントにテストのコードを書かせる前に仕様を書かせる方法を試した。アプリ全体の開発ではなくテストの生成に絞った研究で、モデルは Gemini 3 Flash を使った。比べる相手は、同じモデルで仕様を書かせないエージェントだ(※13)。

著者らは、Google の過去の不具合から、修正が1つの本番用ファイルにとどまるものなど条件で絞った90件を選んだ。

5回の実行で不具合を見つけた割合は、仕様を書かせない場合の53.4%に対し、書かせた場合は63.2%だった。一方で、トークン(AIが処理する文字のまとまり)の消費量は38.0%増えた。不具合はすべて Google のコードから集めたものなので、著者らはこの環境に照らして数字を読むよう求めている(※13)。

仕様駆動開発の限界とシラバス案での扱い

小さな修正では仕様の文書が過剰になるという報告

Böckeler 氏は2025年10月の記事で、Kiro に小さな不具合の修正を頼んだところ、要件の文書が4つのユーザーストーリー(利用者の視点で書いた要望)と16の受け入れ基準(満たせば完成とみなす条件)に膨らんだと報告した。

Spec Kit でも、確かめる Markdown ファイルが多く、問題の大きさに対して過剰だと感じたという。同氏は、9月に試したあとで道具が変わっている可能性があるとも書いている(※6)。

Thoughtworks も2025年11月に、道具によっては長い仕様のファイルができて見直しにくいことがあると指摘した(※5)。Kiro の今の文書には、よく分かっている機能向けに3つの文書を承認なしで一度に作る Quick Spec がある(※4)。

仕様を書いてもAIが従うとは限らない

Böckeler 氏は同じ2025年10月の記事で、ファイルやチェックリストをそろえても、エージェントが指示のすべてには従わない場面をたびたび見たと書いている。同氏は、先に大量の仕様を作ることには強い疑いを示す。その一方で、まず仕様を書くという基本の考え方は、多くの場面で価値があるとしている(※6)。

IPAの試験のシラバス案に「仕様駆動開発」が入った

IPAが2027年度から始める予定の新しい試験制度で、基本情報技術者試験のシラバス案は、「AI 駆動開発」の項目に「仕様駆動開発(SDD)」を挙げている(※7、※10)。プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)の科目A-1(共通知識)と、同(システム)試験のシラバス案にも同じ語がある(※8、※9)。IPAは、シラバス案の内容は変わる可能性があるとしている(※10)。

仕様駆動開発に関連する用語

仕様駆動開発に関する出典

※1 GitHub「Spec-driven development with AI: Get started with a new open source toolkit」(2025年9月2日)
※2 GitHub「Specification-Driven Development (SDD)」
※3 Kiro「Introducing Kiro」(2025年7月14日)
※4 Kiro「Specs – Features – Docs – Kiro」(2026年10月15日更新)
※5 Thoughtworks「Spec-driven development | Technology Radar」(2025年11月5日)
※6 Birgitta Böckeler「Understanding Spec-Driven-Development: Kiro, spec-kit, and Tessl」(2025年10月15日、martinfowler.com)
※7 情報処理推進機構「基本情報技術者試験 シラバス(案)Ver.0.1」(2026年9月30日掲載)
※8 情報処理推進機構「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)及び情報処理安全確保支援士試験 科目A-1(共通知識)シラバス(案)Ver.0.1」(2026年9月30日掲載)
※9 情報処理推進機構「プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(仮称)シラバス(案)Ver.0.2」(2026年6月30日掲載、7月31日更新)
※10 情報処理推進機構「新試験制度のシラバス案について」(2026年6月30日公開、10月30日更新)
※11 Google「Conductor: Introducing context-driven development for Gemini CLI」(2025年12月17日)
※12 GitHub「github/spec-kit」
※13 Michele Tufano ほか「Grounding AI Agents in Contracts: An Empirical Evaluation of Spec-Driven Test Generation」(2026年8月17日、8月21日改訂、arXiv)
※14 Nina Braunger「From Prompt to Product: Spec-Driven Development with Agent Workflows」(2026年7月15日、OTTO のブログ)
※15 Kiro「One year of Kiro: a look back, and a look ahead」(2026年7月14日)
※16 gemini-cli-extensions「Conductor Plugin」
※17 Thoughtworks「Feedback flywheel | Technology Radar」(2026年4月15日)
※18 Kiro「Kiro is generally available: Build with your team in the IDE and terminal」(2025年11月17日)

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