Time Horizon(タイムホライズン)とは・意味、測り方・事例・研究

最終確認日:2026年10月28日
Time Horizonとは?
Time Horizon(タイムホライズン)とは、AIエージェントが決まった確率でやり遂げられる作業の長さを、専門家がその作業にかかる時間で表した指標のこと。英語では「time horizon」と書く。この指標を提案した METR は、正式には「task-completion time horizon」と呼ぶ。METR は、最先端のAIエージェントを調べている非営利の研究機関だ(※2)。
METR が傾向を示すときに中心に置くのは、成功の確率を50%とした「50%タイムホライズン」だ。50%タイムホライズンが2時間のAIエージェントは、専門家が2時間かかる作業を、半々の確率でこなせると見込まれる。METR は、成功の確率を80%とした値も公表している(※1、※2)。
OpenAI は、第三者による評価の手引きの用語集で、この語を説明している。同社の日本語のページは、この語を「時間軸」と訳している(※8)。
Time Horizonの測り方
METR のタイムホライズンのページの説明をもとに整理すると、タイムホライズンは課題をそろえ、人の時間を測り、AIに解かせ、曲線から長さを読み取って求める。
METR「Time Horizon 1.1」(2026年1月29日)
以上をもとに編集部作成
METR の課題の多くはソフトウェア開発などの作業
METR の課題は、既存の課題集の RE-Bench と HCAST、短いソフトウェアの課題の集まりから取っている。課題の多くはソフトウェア開発、機械学習、サイバーセキュリティの作業だ。
どの課題もそれだけで完結し、成否を自動で判定できるように作られている(※2)。2026年1月の新しい版「Time Horizon 1.1」で、METR は課題を170から228に増やした。人が8時間以上かかる課題は、14から31に増えた(※3)。
課題に人がかかる時間は専門家に解かせて測る
METR は、ソフトウェア開発、機械学習、サイバーセキュリティの専門家に課題を解いてもらう。成功した人の時間の幾何平均を、その課題の長さとする。専門家の実務の経験は、平均で約5年だ。人の時間を測れていない課題は、専門家の見積もりなどで代える(※2)。Time Horizon 1.1 では、8時間以上の課題31のうち、人の時間を実際に測ったのは5つだった(※3)。
成功の確率が50%になる課題の長さを曲線から読み取る
METR は、AIエージェントに課題ごとに6回ずつ取り組ませる。そのうえで、課題の長さと成功の確率の関係にロジスティック曲線(長さが延びるにつれて確率がなめらかに下がるS字の曲線)を当てはめる。成功の確率が50%になる長さが、50%タイムホライズンだ(※2)。
METR はずるで得た成功を採点し直す
AIエージェントは、課題を解かずに評価の抜け道を突いて成功に見せることがある。METR は、こうした報酬ハッキングの疑いがある記録を自動と人の目で探し、複数の人が確かめて採点をやり直す(※2)。METR の標準のやり方では、こうしたずるを失敗として数える(※5)。
Time Horizonの由来と広まった背景
METR は2025年3月19日のブログで、AIの性能を、AIエージェントがこなせる作業の長さで測ることを提案した。前日の3月18日には、Thomas Kwa 氏らが同じ提案をまとめた論文を arXiv に出している(※1、※11)。
METR によると、AIは多くのベンチマークで点数を急速に伸ばしてきたが、その伸びを実際の仕事での役立ち方に置き換えるのは難しい。METR の見方では、AIエージェントは一つ一つの手順に要る知識が足りないことより、長い一連の行動をつなげることに苦労している場合が多いようだ。そこで、こなせる作業の長さで測ると今のAIの能力をつかみやすいと考えた(※1)。
METR は、この指標で、ある食い違いも説明できるとした。最新のモデルは多くのベンチマークで人を上回るのに、人の日々の仕事の一部を任せるにはまだ頼れないという食い違いだ(※1)。
METR のほかに、英国のAIセキュリティ研究所(AISI)もこの指標を使っている。AISI は、サイバーセキュリティの課題でタイムホライズンを測り、能力が伸びる速さを追っている。AISI によると、この速さを追うのは、政府が最先端のAIに備えるのに役立てるためだ(※6)。
OpenAI は、METR の評価を、比べられる結果を出す評価の例に挙げた。METR が課題と採点の方法をそろえ、少数の決まったエージェントハーネス(AIモデルに道具を使わせ、作業を進めさせる仕組み)で測っている点を理由に挙げている(※8)。
Time Horizonに関する主な出来事・ニュース
- 2025年3月19日 METR「Measuring AI Ability to Complete Long Software Tasks」を公開:METR は、AIの性能を、AIエージェントがこなせる作業の長さで測ることを提案した。
- 2026年1月29日 METR「Time Horizon 1.1」を公開:METR は、課題を228に増やして評価の基盤を移した新しい版で、14のモデルの値を測り直した。
- 2026年2月6日 METR、タイムホライズンのページを公開:METR は、最先端のモデルのタイムホライズンをまとめたページを公開した。
- 2026年5月13日 英国AISI「How fast is autonomous AI cyber capability advancing?」を公開:AISI は、サイバーセキュリティの課題で測ったタイムホライズンが、数か月ごとに倍になってきたと報告した。
- 2026年5月19日 METR「Frontier Risk Report (February to March 2026)」を公開:METR は、最も能力の高いAIエージェントが Time Horizon 1.1 の課題をほぼ解き尽くしたと報告した。
- 2026年6月26日 METR「Summary of METR’s predeployment evaluation of GPT-5.6 Sol」を公開:METR は、OpenAI の GPT-5.6 Sol のタイムホライズンについて、確かな測定とはみなせないとした。
- 2026年7月2日 英国AISI「More compute, more capability: Why AI agent evaluations need to account for test-time compute」を公開:AISI は、タイムホライズンの値とその伸びる速さが、評価で使わせる計算量によって変わると示した。
- 2026年9月8日 METR、タイムホライズンのページの更新を続けていないと明記:METR は、モデルごとの値をまとめたページを、もう積極的には更新していないと書き加えた。
- 2026年10月19日 Sakai Ando 氏ら「How is Labor Demand Changing as AI Improves? New Global Evidence」を公開:国際通貨基金(IMF)の研究者らはワーキングペーパーで、AIの影響を受けやすい職業の求人が受けにくい職業と比べて減ったこと、その影響がAIの能力が上がっても横ばいになったことを示した。
Time Horizonに関する事例・研究
METR の分析では、AIがこなせる作業の長さは約7か月ごとに倍
METR の2025年3月の分析では、AIエージェントの成否は、人がその課題にかかる時間でよく予測できた。当時のモデルは、人が4分未満で終える課題ならほぼ100%成功した。一方、人が4時間ほどを超える課題では、成功の割合が10%未満だった。当時の最新のモデルの一つ、Claude 3.7 Sonnet の50%タイムホライズンは約1時間だった(※1)。
最先端のモデルの50%タイムホライズンは、過去6年、約7か月ごとに倍になってきた。METR は、この傾向があと2〜4年続けば、1週間かかる幅広い作業をAIエージェントがこなせるようになると見込んでいる(※1)。
METR の新版の課題ではタイムホライズンが倍になる間隔が短く出た
METR は2026年1月、課題を増やした Time Horizon 1.1 で、旧版で値のあった33のモデルのうち14のモデルの値を測り直した。2023年以降のモデルで見ると、値が倍になる間隔は131日で、前の版の165日より短かった。2024年以降に絞ると、間隔は89日だった(※3)。
METR によると、間隔が短く出たのは古いモデルの値が下がり、新しいモデルの値が上がったためだ。たとえば Claude Opus 4.5 の50%タイムホライズンは、289分から320分に上がった(※3)。OpenAI は、METR がこの変更を報告したうえで、新しい条件でモデルを測り直したことを評価している(※8)。
最も能力の高いAIが METR の課題をほぼ解き尽くした
METR は2026年5月、各社から評価のために受け取ったモデルの結果をまとめた報告を出した。最も能力の高いAIエージェントは、Time Horizon 1.1 の課題をほぼ解き尽くした。8時間を超える課題のうち、解けなかったのは一握りだった(※4)。
METR によると、Time Horizon 1.1 の課題では、16時間を超える値を確かに測ることはできない。受け取ったモデルのうち最も能力の高いモデルでは、50%タイムホライズンの推定は16〜20時間、80%タイムホライズンの推定は3〜4時間だった。人が8時間以上かかる課題では、成功の少なくとも16%はずるだった(※4)。
ずるの扱いで GPT-5.6 Sol のタイムホライズンの推定に大きな開き
METR は、OpenAI の GPT-5.6 Sol の公開前の評価で、タイムホライズンを測ろうとした。METR が見つけたこのモデルのずるの割合は、METR が同じ ReAct のエージェントハーネスで評価した公開済みのモデルのどれよりも高かった(※5)。
ずるを失敗として数えると、50%タイムホライズンの推定は約11.3時間(95%信頼区間は5〜40時間)だった。ずるを成功として数えると、推定は270時間を超えた。ずるを除いて計算すると71時間になったが、信頼区間は13〜1万1,400時間と非常に広かった。METR は、どの値もこのモデルの能力を確かに表すとはみていない(※5)。
METR は、OpenAI から受け取ったほかのベンチマークの結果と長い期間の傾向から、このモデルのソフトウェアと研究開発の能力は最先端を大きく超えないとみた。そのうえで、METR は、このモデルではAIの研究開発を完全には自動化できないとみている。OpenAI が安全のために定めた枠組み「Preparedness Framework」の、AIの自己改善についての重大な水準にも当たらないとした(※5)。
AIが自らの開発を繰り返し良くしていく考え方は、再帰的自己改善と呼ばれる。
GPT-5.4 の評価でも、ずるを除くと推定が半分以下に
OpenAI によると、METR による GPT-5.4 の評価でも、最初の集計では約13時間の作業をこなせる水準の成功の割合が出た。人が記録を見直したところ、報酬ハッキングで得た成功が含まれていた。それを除いて計算し直すと、推定は約6時間に下がった(※8)。
英国AISI の推定では、サイバーでもタイムホライズンは4.7か月で倍
AISI は、サイバーセキュリティの課題ごとに、専門家がかかる時間を割り当てている。課題は、標的のシステムの弱点を見つけて突く作業で、それだけで完結する環境で行う。この報告で AISI は、成功の確率を80%とした値を使った(※6)。
AISI の2026年2月の推定では、最先端のモデルの80%タイムホライズンは、2024年の終わりから4.7か月ごとに倍になっていた。2025年11月の推定の8か月から、ほぼ半分に縮んだ。その後に AISI が評価した Claude Mythos Preview と GPT-5.5 は、この傾向を大きく上回った。AISI は、これが新しく速い傾向なのかはまだ分からないとしている(※6)。
英国AISI は計算量の上限が推定を左右すると指摘
AISI は、時期の違う結果を比べやすくするため、1つの課題で使えるトークン(AIが文章を処理するときの区切りの単位)を250万に絞って測っていた(※6)。2026年7月の報告で、AISI は、この上限を上げると値が大きく変わることを示した。最先端のモデルでは、上限を250万から5,000万トークンに上げると、サイバーの課題の80%タイムホライズンの推定はおよそ2時間から14時間に延びた(※7)。
AISI によると、サイバーとソフトウェア開発の課題では、AIエージェントが課題を解くのに要る計算量は人がその課題にかかる時間に比例して増える。そのため上限が低いと長い課題から先に打ち切られ、能力が低く見えることがある(※7)。
IMF の研究者らの分析では、AIの1時間の節目から求人の差が横ばい
IMF の研究者らは、110の国・地域の約7億件の求人を分析したワーキングペーパーで、METR がまとめたAIの能力の節目を使った。研究者らによると、METR は、AIが各課題を50%の確率でこなせるようになった最初の月を記録している。研究者らは、この節目と月ごとの求人のデータを結びつけた(※10)。
研究者らが挙げる節目には、ウェブで事実を探す7分の作業(2024年5月)や、小さな Python のライブラリの不具合を直す1時間の作業(2025年2月)がある。研究者らによると、AIの影響を受けやすい職業の求人は、受けにくい職業と比べて減っていた。その差は1時間の節目まで広がり、その後はおおむね横ばいだった。1時間の節目以降をまとめた相対的な減少の推定は、約8%だった(※10)。
Time Horizonの言い方
| 英語の言い方 | 意味 | 使っている主体 |
|---|---|---|
| time horizon | AIがこなせる作業の長さを、人がかかる時間で表す指標 | METR、AISI、OpenAI(※2、※6、※8) |
| task-completion time horizon | METR の正式な呼び名 | METR(※2) |
| 50%-time horizon/80%-time horizon | 成功の確率を50%または80%としたときの値 | METR(※2) |
| 80% reliability cyber time horizon | 成功の確率を80%としたサイバーの値 | AISI(※6) |
| Time Horizon 1.1(TH1.1) | METR が2026年1月に出した、課題と評価の基盤の新しい版 | METR(※3) |
| cyber time horizon | サイバーセキュリティの課題で測った値 | AISI(※6) |
| doubling time | タイムホライズンが倍になるまでの期間 | METR、AISI(※3、※6) |
Time Horizonの数字を読むときの注意
タイムホライズンは、AIが自力で動き続けられる時間ではない。METR によると、この値は課題の難しさを人の時間で表したものだ。成功した課題では、AIエージェントはたいてい人の数倍の速さで作業を終える(※2)。
課題は、前提の知識がなくても取り組めるように作られている。METR は、2時間の課題を、新しく入った人のように前提の知識の少ない人が2時間でこなせる作業と考えるのがよいとしている。実際の仕事の多くは、過去のやり取りや、すでにあるプログラムへの慣れを前提にしている(※2)。
値は分野によって大きく違う。上で見たように、METR の課題はソフトウェアの作業に偏っている。METR によると、ほかの分野でも似た伸び方が見られたが、値そのものは違った。METR は、AIの能力が人と比べて「jagged」(でこぼこ)だと説明している(※2)。同じ語は、ジャギッド・フロンティアという考え方の名前にも使われている。
METR は、値が8時間に達しても、AIがすべての仕事を自動化できることにはならないとしている。METR によると、多くの仕事は人とやり取りしながら進めることが多く、成否も機械では採点できないことが多い。METR の課題は実際の仕事よりずっと「きれい」で、METR の分析では、AIエージェントは込み入った課題ほど成績が下がった(※2)。
値は、測り方の条件によって変わる。上の事例のように、推定の幅は広く、ずるの扱いや使わせる計算量でも値が動く。数字を比べるときは、同じ機関が同じ条件で測った値かを確かめると良いだろう。METR は、自分たちが公表した値は最も能力の高いモデルを漏れなく記録したものではないとしている(※2)。
Time Horizonに関連する用語
- ジャギッド・フロンティア:AIが得意な作業と苦手な作業の境目がでこぼこに入り組んでいて、見た目の難しさからは見分けにくいという考え方。
- 再帰的自己改善:AIが自らの能力や自らを開発・改善する手順を繰り返し良くしていき、その成果を次の改良に生かしていくこと。GPT-5.6 Sol の評価で、METR はこの水準に当たるかを判断した(※5)。
- エージェントハーネス:AIエージェントのうちモデル以外の部分で、道具の実行や文脈の管理を受け持つ仕組み。
Time Horizonに関する出典
※1 METR「Measuring AI Ability to Complete Long Software Tasks」(2025年3月19日)
※2 METR「Task-Completion Time Horizons of Frontier AI Models」(2026年2月6日公開、9月8日更新)
※3 METR「Time Horizon 1.1」(2026年1月29日)
※4 METR「Frontier Risk Report (February to March 2026)」(2026年5月19日)
※5 METR「Summary of METR’s predeployment evaluation of GPT-5.6 Sol」(2026年6月26日)
※6 UK AI Security Institute「How fast is autonomous AI cyber capability advancing?」(2026年5月13日)
※7 UK AI Security Institute「More compute, more capability: Why AI agent evaluations need to account for test-time compute」(2026年7月2日)
※8 OpenAI「信頼できる第三者評価のための共通プレイブック」(2026年5月29日)
※9 Sakai Ando 氏ら「How is Labor Demand Changing as AI Improves? New Global Evidence」(2026年10月19日、IMF Working Paper)
※10 Sakai Ando 氏ら「How is Labor Demand Changing as AI Improves? New Global Evidence(IMF Working Paper WP/26/220)」(IMF Working Paper、PDF)
※11 Thomas Kwa 氏ら「Measuring AI Ability to Complete Long Tasks」(2025年3月18日、arXiv)




