AI生成物、どこまで自由に使える?画像や文章の商用利用と、文化庁が示す著作権侵害の判断基準

販促のチラシに使う画像を、生成AIで作ってみた。思ったより良い画像ができたが、このまま社外に出してよいのか。生成AIで作った画像がどこかの作品に似ていたら、誰が責任を負うのか。画像の扱いに迷って、手が止まったことはないだろうか。
2026年5月、スキンケア・ヘアケア・基礎化粧品の事業などを手がける株式会社ウテナは、自社の広告について、生成AIを使った制作や既存の作品との類似性に多くの意見が寄せられたと公表した。広告の表現が既存の作品への敬意を欠いていたとして、PR動画とSNSの投稿を削除し、交通広告も撤去するとした。外部の専門家を交えたリーガルチェックを重ねて広告を公開しており、法規制の点で問題がないか、改めて第三者の指導を受けて確かめるという。
画材のサクラクレパスは2025年12月、グループの販売子会社が海外のマンガイベントで展示した販促物のイラストが、生成AIで作られていたと公表した。イラストでは自社のロゴの表記が表示の規定に反し、商品の絵も実物のデザインと異なっていたことを認めた。ロゴや商品の表記について、グループ内のデザインチェックの手順が十分でなかったとした。
AIで作ったものを、仕事でどこまで自由に使えるのか。文化庁が示す著作権侵害の考え方、著作権のほかに問われる権利、AIを提供する各社の規約は、社外に出す前に確かめておきたい。
AI生成物が著作権侵害になるかは、何で判断される?
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(以下、「考え方」)は、文化審議会の著作権分科会法制度小委員会が2024年3月15日にまとめた文書だ。法制度小委員会は、「考え方」の冒頭に、公表時点の見解で、法的な拘束力はないと書いている。
2026年6月には著作権法の改正が成立したが、文化庁の総合案内ページが挙げる改正の中身に、生成AIの項目はない。改正は、音楽CDなどが公の場で使われたときに実演家などが使用料を受け取る権利を設けるものだ。それでも文化庁は、2026年5月21日に公開した「著作権テキスト 令和8年度版」の70頁で、「考え方」と2024年7月31日の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を挙げている。その上で、AIの生成物が著作権の侵害になるかは「類似性」と「依拠性」で判断すると説明している。
元の作品を知らずにAIで作っても、侵害になることはある?
「考え方」の32頁によれば、AIで作ったものでも、人がAIを使わずに作った場合と同じく、既存の作品との類似性と依拠性の両方が認められれば著作権の侵害になる。類似性は、生成物から元の作品ならではの表現の特徴を直接感じ取れるかで判断される。依拠性は、33頁によれば、これまでの裁判例で、作った人が元の作品の表現を知っていたことや、元の作品とどこまで同じかなどから判断されてきた。作風が似ているだけか、既存の作品を入力したか、社外に公開するかなど、AIの使い方の場面によって、「考え方」での侵害の判断は分かれる。
| AIの使い方の場面 | 「考え方」の整理 | 頁 |
|---|---|---|
| 作風や画風が似ているだけ | 作風をアイデアとみれば、作風が同じというだけでは侵害にならない。特定の作り手の作品だけを追加で学習させた場合などに、その作品群の創作的な表現まで生成物から直接感じ取れれば、侵害になりうる | 「考え方」21頁 |
| 既存の作品を知っていて、その画像や題名などを入力し、その作品の創作的な表現を持つものを生成させた | 依拠性が認められ、AIの利用者による侵害が成立する | 「考え方」33頁 |
| 元の作品を知らなかったが、AIの学習データに含まれていた | 学習データに含まれていた作品に似たものが生成されれば、「通常、依拠性があったと推認され」、侵害になりうる。元の作品が学習データに含まれていなければ、生成物が似ていても偶然の一致として侵害にならない | 「考え方」34〜35頁 |
| 社内で、権利者の許諾を得て使うことを前提に、検討の過程で生成するだけ | 著作権法第30条の3(検討の過程での利用)の適用が考えられる | 「考え方」38頁(前提はチェックリスト20頁) |
| 生成物を社外に公開する・配る | 生成のときは私的使用や社内の検討などの例外の範囲内でも、公開や配布の時点で侵害になる場合がある | 「考え方」35頁 |
元の作品を知らず、故意も過失も認められないAIの利用者は、「考え方」の35頁によれば、損害賠償や刑事罰の対象にはならない。ただし、権利者は、生成物を使うのをやめるよう求める差止めを、利用者に故意や過失がなくても請求できる。元の作品を知らなかった利用者でも、使用料に相当する額などを権利者に返す義務を負うことはありうる。
著作権のほかに、商標権や、顔や声のパブリシティ権も問われうる
生成AIで作った画像に他社の透かしが出れば、著作権のほかに商標権も問われうる。英国の高等法院は2025年11月、画像生成AIの出力に iStock や Getty Images の透かしが出たことについて、提供元の Stability AI による商標権の侵害を一部認めた。商標権の侵害を認めたのは、旧版のモデルだけだった。裁判官は、認定の範囲がごく限られるとし、作品を保存も再現もしないモデルは著作権を侵害する複製物に当たらないとした。
有名人本人だと分かるほど似せた顔や声を広告に使えば、パブリシティ権が問われうる。パブリシティ権は、人の氏名や肖像が持つ、客を引きつける力を独占して使う権利のことで、法律に明文の規定はなく、判例で形づくられてきた。法務省が2026年8月に公表した検討会の取りまとめ報告書(副題「生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針」)には、パブリシティ権の保護の対象に人の声も含まれると明記されている。報告書は、テレビやウェブサイトの広告への肖像の掲載を典型例とし、SNSのなりすまし広告やナレーションへの声の利用も、侵害になりうる広告での使い方に挙げている。
生成AIサービスの規約に、利用者を守る補償はある?
文化庁のチェックリストの18頁には、著作権を侵害するおそれのある使い方をAIサービスの規約が禁じたり制限したりしていないか、AIを使う前に確かめることも入っている。2026年10月19日に、生成AIを提供する各社の公式ページで読んだ規約を、商用利用と補償の点で比較した。Microsoft の「Copilot 補足使用条件」と OpenAI の「利用規約」は、個人向けに書かれている。比較した規約のうち、提供元が利用者を守る補償を定めているのは、OpenAI の Service Terms(API と ChatGPT Enterprise・Edu・for Healthcare が対象)、Google Cloud の契約に組み込まれる規約、Anthropic の消費者向けではないとする規約だ。Microsoft も、個人向けの規約とは別の Product Terms で、Azure OpenAI や GitHub Copilot などの出力をめぐる第三者の知的財産権の請求の一部から顧客を守る。Azure OpenAI などでは、顧客が所定の対策を入れていることが、Microsoft に守られる条件になる。
| 規約 | 商用利用と補償について書かれていること |
|---|---|
| Microsoft「Copilot 補足使用条件」(個人向け、2026年8月18日発効) | 補足使用条件は、職場や学校のアカウントでの利用には適用されない。Copilot は個人的な使用のためにのみ使える。Microsoft は、応答が他者の著作権や商標権などを侵害しないことは約束できない。応答を公開・共有する場合の責任は利用者が負う |
| OpenAI「利用規約」(個人向け、2026年1月1日発効) | OpenAI との間では、法律で認められる範囲で、出力は利用者のものになり、入力と出力への責任は利用者が負う。ただし、ほかの利用者が同じような出力を受け取る場合がある |
| OpenAI「Service Terms」(API と ChatGPT Enterprise・Edu・for Healthcare、2026年10月16日更新) | OpenAI は、出力が第三者の知的財産権を侵害するという請求から利用企業を守る。侵害を知っていた・知るべきだった、出力を加工した・ほかの製品と組み合わせた、商取引での利用で商標の侵害を問われた、などの場合は補償の対象外 |
| Google Cloud「Service Specific Terms」(生成AIの項) | 補償は、Google が補償の対象として一覧に載せたサービスを有料で使い、Google のモデル(またはそれを調整したモデル)だけで生成した、加工していない出力が対象。侵害のおそれを知っていた・知るべきだった、権利者から通知を受けた後も使った、商取引での利用で商標の権利を問われた、などの場合は補償の対象外 |
| Anthropic「Commercial Terms of Service」(2025年6月17日発効) | 補償は有料の利用が対象。出力を変更した・ほかの技術や素材と組み合わせた、権利の侵害を知っていた・知るべきだったのに使った、商取引での利用で商標の侵害を問われた、などの場合は補償の対象外 |
※2026年10月時点
補償を定めた規約でも、チラシに合わせて画像を加工する、商品名やロゴと組み合わせて広告に使う、といった使い方は、除外の条件に入りうる。各社の規約は変わるので、生成AIを使う時点の版を読む。
日本では、AI生成物も著作物として守られる?
侵害とは別に、自分がAIで作ったものを他人に無断で使われたとき、著作物として守られるかという問題もある。
「考え方」の39〜40頁によれば、AIへの指示が「表現に至らないアイデアにとどまる」場合、生成物は著作物と認められない。AIで生成した回数が多いことや、いくつかの候補から選んだこと自体は、「創作的寄与の判断に影響しないと考えられる」。AIに創作的な表現まで細かく指示した場合や、出てきたものを見て指示を直しながら作り直した場合は、生成物が著作物と認められる可能性がある。生成物に人が創作的な表現といえる書き足しや修正を加えた部分は、通常、著作物と認められる。
日本の「考え方」とは異なり、米国著作権局は2025年1月の報告書で、今の一般的な技術では、プロンプトだけでは表現を十分にコントロールしたことにならず、プロンプトを何度直してもそれは変わらないと結論づけた。米国でも、人が生成物に加えた創作的な修正や、生成物に含まれる素材の創作的な選び方・並べ方は保護されうる。
生成AIで作った画像や文章は、社外に出す前に似た作品を探す
AIで作ったものを社外に出す前に確かめることを、文化庁のチェックリストが挙げる点に、AIを提供する各社の規約と著作権以外の権利を加えてまとめた。
| 確かめること | 社外に出す前にすること |
|---|---|
| 既存の作品に似ていないか | 画像検索や文章検索で、似たものがないかを探す(文化庁のチェックリスト20頁) |
| 既存の作品を入力していないか | 既存の作品の画像や題名、キャラクター名をAIに入れたかを確かめる。既存の作品を入れると依拠性が認められやすくなる(同21頁) |
| 作った過程が残っているか | プロンプトと、直した経過を保存する。保存した記録は、依拠性がないことの説明にも、著作物性の説明にも使える(同21頁) |
| 規約で使えるか | 使っているプランが商用で使えるか、補償の対象と除外の条件は何かを読む |
| 著作権以外に問題はないか | 生成物が有名人の顔や声、他社のロゴや透かしに似ていないか、自社のロゴや商品が正しく描かれているかを見る |
| 社内の流れに沿っているか | 社内のルールと、問題が起きたときの対応を確かめる(同19頁) |
社外に出してよいか判断に迷ったときは、似た作品を探した結果と、AIで作った過程の記録を持って、社内の法務や知的財産の担当に相談したい。ただ、法的なチェックを重ねていても、広告や販促物の公開を続けられなくなる場合はある。広告や販促物がどう受け取られるかも、公開の前に社内で話し合っておきたい。
【参照元】
- 株式会社ウテナ「ウテナ モイスチャーの広告に関するお詫びとご報告」(2026年5月6日)
- 株式会社サクラクレパス「第一報 該当販促物についての正式見解」(2025年12月9日)
- 株式会社サクラクレパス「第二報 当該販促物に関する事実確認の結果」(2025年12月11日)
- 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)
- 文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日)
- 文化庁著作権課「著作権テキスト 令和8年度版」(2026年5月21日)
- 文化庁「著作権施策に関する総合案内ページ」(令和8年特別国会 著作権法改正について、2026年10月19日時点)
- U.S. Copyright Office「Copyright and Artificial Intelligence, Part 2: Copyrightability」(2025年1月29日)
- High Court of Justice「Getty Images v Stability AI」[2025] EWHC 2863 (Ch)(2025年11月4日)
- 法務省「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会 取りまとめ報告書―生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針―」(2026年8月)
- 法務省民事局「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会 取りまとめ報告書―生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針―【概要資料】」(2026年8月)
- Microsoft「Microsoft Copilot 補足使用条件」(2026年8月18日発効、2026年10月19日時点)
- Microsoft「Customer Copyright Commitment Required Mitigations」(2026年10月21日時点)
- OpenAI「利用規約」(2026年1月1日発効、2026年10月19日時点)
- OpenAI「Service terms」(2026年10月16日更新、2026年10月19日時点)
- Google Cloud「Service Specific Terms」(2026年10月19日時点)
- Anthropic「Commercial Terms of Service」(2025年6月17日発効、2026年10月19日時点)




