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Decision Model(判断モデル)とは・意味、仕組み・主なサービス・事例・研究

最終確認日:2026年10月31日

Decision Model(判断モデル)とは?

Decision Model(判断モデル)とは、文章を生成せず、あらかじめ決めた選択肢や尺度の答えごとに確率を返す種類のAIモデルのこと。問い合わせの振り分け、スパムの検出、優先度の採点のように、答えの範囲が決まっている処理に使う(※9)。

TypeSafe AI は、2026年9月に公開した「Jev」を、新しい種類のモデル「System One Model」の最初のものと説明した(※1)。AIMultiple は、Decision Model と System One Model を同じものを指す語として扱っている(※14)。日本語では、gihyo.jp の記事が「意思決定モデル」と書いている(※16)。

チャットで使う大規模言語モデルは、トークン(文字を細かく分けた単位)を1つずつ順に生成する。TypeSafe によると、Jev はすべての出力を1回の問い合わせで生成する(※1)。Cloudflare は、分類のモデルは前からあったとしたうえで、Jev のような新しいモデルは分類の区分が増えるたびに学習し直さなくても使えると説明している(※4)。

Microsoft は、生成、推論、判断を互いに補い合う部品と位置づけている。同社が挙げる組み合わせの例では、言語モデルが返答の案を書き、Microsoft-Decision-1 がその案を基準に照らして評価する(※6)。

Decision Model の仕組み

OpenAI、Liquid AI、Baseten の説明をもとに整理すると、Decision Model の動きは図のようになる。

Decision Model の動き方OpenAI・Liquid AI・Baseten の説明をもとに整理
1
質問と答えの候補を決める開発者が、質問と許容する答えをあらかじめ定義するたとえば、問い合わせをどの担当に回すか
2
文脈を渡す問い合わせの文面などをモデルに渡すテキストのほか、画像や JSON を受け付けるモデルもある
3
確率を受け取るモデルは文章を生成せず、答えの候補ごとの確率を返す
4
アプリが次の処理を決める確信度が高ければ自動で処理し、低ければ人に回すといった分岐をプログラムで行う
出典:OpenAI「Build more responsive apps with the Decisions API」(2026年10月22日)
Liquid AI「d1-ultra: Introducing the World’s Best Decision Model」(2026年10月15日)
Baseten「The top ranked decision models in the world: mammoth-1 and elephant-1」(2026年10月21日)
以上をもとに編集部作成

Decision Model が答える問いは主に3種類

OpenAI の Decisions API は、問いの種類を3つ用意している。条件が成り立つ確率を返す predicate、選択肢から1つを選ぶ choice、順序のある段階で評価する score だ(※11)。Liquid AI と Baseten も、呼び名は少し違うものの、はい・いいえ、選択、尺度の3種類を挙げている(※7、※9)。

テキストの生成を省いて費用と時間を抑える

Liquid AI によると、d1-ultra は入力を1回の順伝播(モデルに入力を1度通す計算)で読み、トークンを生成せずに確率を返す(※7)。Baseten は、テキストの生成を省くことで、本番で動かす費用と時間を抑えられると説明している(※9)。Artificial Analysis によると、Decision Model の課金は入力トークンだけで、言語モデルは入力と出力の両方に課金される(※13)。

確信度に応じて自動処理と人の確認を分ける

アプリケーションは、返ってきた確率をもとに処理を分けられる。Baseten が挙げる例では、確信度が90%のときは問い合わせを自動で振り分け、それより低ければ人に回す(※9)。OpenAI は開発者に向けて、自分のアプリケーションの正解つきの例を使い、誤検知と見逃しの費用を踏まえてしきい値を決めるよう勧めている(※11)。

Decision Model の主なサービスと提供状況

モデル・サービス 提供会社 提供の範囲 料金(入力100万トークンあたり)
Jev TypeSafe AI 2026年9月15日に早期アクセスを開始。TypeSafe の API で使う 0.042ドル。出力は無料
Decisions API OpenAI 2026年10月22日に一般提供を開始。モデルは GPT-6 Luna 0.10ドル。キャッシュされた入力は0.01ドル。出力の課金はない
Clef・Clef-omni・Clef-flash Cloudflare Workers AI で提供。Hugging Face で Apache 2.0 ライセンスのもとに公開 Clef は0.240ドル、Clef-omni は0.150ドル、Clef-flash は0.038ドル
Microsoft-Decision-1 Microsoft 2026年10月9日の発表では、Microsoft Foundry での公開プレビュー。公開プレビューは、製品の完成前に広く試せる段階を指す 0.042ドル(米国と EU のデータゾーン)
d1-ultra Liquid AI Liquid AI の API で提供 0.042ドル。出力トークンはない
mammoth-1・elephant-1・joey-1 Baseten Baseten Model APIs で提供。Hugging Face で公開 mammoth-1 は0.10ドル、elephant-1 は0.035ドル、joey-1 は0.01ドル

※2026年10月時点。Jev は※1・※2、Decisions API は※10、Clef は※4・※5・※17・※18、Microsoft-Decision-1 は※6、d1-ultra は※7、mammoth-1 と elephant-1 は※9・※8、joey-1 は※19・※8 による。

Decision Model の由来と広まった背景

TypeSafe AI は、2026年9月15日の発表で「System One Model」という語を使った。同社によると、この名前は Daniel Kahneman 氏の著書『Thinking, Fast and Slow』にある、速く直感的な「System 1」の考え方から取った(※1)。

Decision Model という呼び方も、同じ9月に見られる。ソフトウェア開発者の Simon Willison 氏は9月21日、自身のサイトの記事で、Maggie Appleton 氏と同じく「decision models」のほうがよい名前だと考えると書いた(※15)。10月に入ると、Cloudflare、Microsoft、Liquid AI、Baseten が、自社の発表でこの語を使っている(※4、※6、※7、※9)。

OpenAI と Microsoft が挙げる背景は、アプリケーションの中に小さな判断が数多くあることだ。OpenAI は、入力の分類や振り分け先の選択は1つずつなら単純でも、規模が大きくなると待ち時間と費用が積み重なると説明している(※10)。Microsoft も、AIアプリケーションのすべての段階に、返答を生成する大規模言語モデルが要るわけではないとしている(※6)。

Decision Model に関する主な出来事・ニュース

Decision Model に関する事例・研究

OpenAI の顧客は Decision Model で処理が速くなったと報告

OpenAI の発表には、顧客企業の担当者のコメントが載っている。ここでの数字は、各社がそれぞれの条件で測ったものだ(※10)。

  • Box は保険証明書30件で評価し、振り分け先の選択が OpenAI の生成用の Responses API の約5倍速く、精度は同じだったとしている。確信度の低いものは担当者の確認に回す。
  • Datadog は、エージェントが生成したコマンドを実行する前に、そのリスクの採点に使っている。同社によると、利用できるフロンティアモデル(最先端の大規模なモデル)と比べて精度は同程度で、p95 の応答時間(遅いほうから5%にあたる値)は40倍速かった。
  • 語学学習の Speak は、音声の GPT-Live と連携させた自社のテストで、次の動作までの時間が1.4秒から0.13秒に縮んだとしている。

Microsoft と Cloudflare は社内の分類に Decision Model を利用

Microsoft によると、Xbox Research は1万件を超える自由記述の意見を、研究者が決めたテーマに分類するのに Microsoft-Decision-1 を使った。Xbox Research は、品質が GPT-5 に引けを取らず、処理は80〜100倍速かったと報告している(※6)。

Cloudflare で攻撃の情報を分析する脅威インテリジェンスのチームは、Webサイトのドメインの分類で Clef を試した。同社の例では、同じ流れの処理に Clef は2.2秒、同社で最も速い汎用の言語モデル gpt-oss-120b は4.7秒かかった(※4)。同社は10月9日の発表で、このチームが悪意のあるドメインの検出を助けるために Clef を使っていると書いている(※17)。

査読前の論文で Decision Model と分類器や言語モデルを比較

Amir Rafe 氏と Subasish Das 氏は arXiv で公開した査読前の論文で、Decision Model を、学習させた分類器や生成型の言語モデルと比べた。

正解のラベルで学習できる場合、調整した分類器 DeBERTa-v3-large の精度が、ラベルつきのベンチマークのうち1つを除くすべてで最も高かった。ラベルがない場合、ワークフローと意図の分類で Jev より有意に精度の高い Decision Model は見られなかった。ただし生成型の Gemma-4-31B は、費用と待ち時間は大きいものの、ワークフローで Jev と並び、ベンチマークの CLINC-150 では Jev を上回った(※12)。

同じ論文は、typed-decisions という評価で、判断の基準の文を変えずに「はい」と「いいえ」の名前だけを入れ替える試験も行った。Jev は100問あたり50.5問で答えが反転した。試した生成モデルはいずれも16.8問以上で、調整を加えた4つの Decision Model は多くても6.5問だった(※12)。

Decision Model の比較指標は分類や道具の呼び出しなどを評価

Decision Model を比べる指標も公開されている。Artificial Analysis Decision Index は、知識とハルシネーション(事実でない内容を答えること)、推論、道具の呼び出し、分類の4つの評価を25%ずつ組み合わせている(※13)。

AIMultiple の AIM System One Index は、1,655問の分類と64問の偏り、50問のブラウザ操作の結果を指標に入れている。同社のページは、2026年10月時点で60の Decision Model を試したと書いている(※14)。

Decision Model を選ぶときの注意点と紛らわしい語

OpenAI は、抽出した項目や文章の説明を生成するときは Decisions API ではなく、指定した形式で出力を生成する Structured Outputs を使うよう案内している(※11)。

速さや安さの数字には、発表元や顧客が測ったものがある。TypeSafe はホームページに、System One のタスクのワークフローで言語モデルより193.6倍速く444.6倍安いという数字を載せている。同社は、この数字を実際に得られる効果の中では高い側とみている。同社は、評価を作ったのが自社の担当者なので偏りがありうるとも書いている(※1、※2)。

確信度も、そのまま信じず確かめる必要がある。Liquid AI は、大半の Decision Model は答えに自信を持ちすぎているとの見方を示している(※7)。Microsoft は、確信度を自動処理や確認のしきい値に使うなら、開発者が自分のデータで確かめるよう勧めている(※6)。

TypeSafe は、Jev がハルシネーションを起こすことはないと説明している。同社によると、グラフに載せたハルシネーションの割合0%は実測の値ではなく、出力が決めた形に必ず合うことを根拠にしている(※1)。一方で Artificial Analysis は、Decision Model の指標に知識とハルシネーションの評価を入れている(※13)。

Baseten も、モデルを選ぶ観点の1つに、難しい例を含めた判断の正しさを挙げている(※9)。

Willison 氏は、答えの理由が見えにくい点を指摘している。同氏によると、Jev が返すのは数値だけで、どの内容が判断を左右したかは分からない。同氏は偏りへの懸念を挙げ、採用の応募者の順位づけには使ってほしくないと書いている(※15)。

Decision Model という語には、別の意味もある。標準化団体の Object Management Group が定めた「Decision Model and Notation(DMN)」は、業務の判断とルールを記述するための言語と記法で、ここで紹介したAIモデルの種類とは別のものだ(※3)。

Decision Model に関連する用語

  • ガーディアンエージェント:ほかのAIエージェントの動きを見張り、許された範囲から外れそうなときに行動や権限を調整したり止めたりするAI。
  • オープンウェイト:学習を終えたAIモデルの重みが公開され、手に入る状態のこと。

Decision Model に関する出典

※1 TypeSafe AI「Introducing System One Models & Jev」(2026年9月15日)
※2 TypeSafe AI「Home – TypeSafe AI」
※3 Object Management Group「Decision Model and Notation (DMN)」
※4 Cloudflare「Introducing Clef: our open-source decision models, and new RL fine-tuning platform」(2026年10月1日)
※5 Cloudflare「Pricing · Cloudflare Workers AI docs」
※6 Microsoft「Introducing Microsoft-Decision-1 in Microsoft Foundry for decision and classification workloads」(2026年10月9日)
※7 Liquid AI「d1-ultra: Introducing the World’s Best Decision Model」(2026年10月15日)
※8 Baseten「Baseten Pricing」
※9 Baseten「The top ranked decision models in the world: mammoth-1 and elephant-1」(2026年10月21日)
※10 OpenAI「Build more responsive apps with the Decisions API」(2026年10月22日)
※11 OpenAI「Decisions | OpenAI API」
※12 Amir Rafe、Subasish Das「Benchmarking System One decision models against trained classifiers and language models for automated decision gates」(2026年9月29日、10月6日改訂、arXiv)
※13 Artificial Analysis「Artificial Analysis Decision Index」
※14 AIMultiple「AIM System One Index」
※15 Simon Willison「Jev introduces a new shape of LLM—System One, aka Decision Models」(2026年9月21日、Simon Willison’s Weblog)
※16 gihyo.jp「Cloudflare、オープンソースのマルチモーダル意思決定モデル「Clef」と「Clef-flash」をリリース」(2026年10月2日)
※17 Cloudflare「Introducing Clef-omni with full multimodality, plus a faster Clef and a cheaper Clef-flash」(2026年10月9日)
※18 Cloudflare「Cloudflare/clef-omni · Hugging Face」
※19 Baseten「Decisions for a penny: introducing joey-1, our fastest decision model」(2026年10月29日)