AIフルエンシー(AI Fluency)とは・意味、由来・4つの力・事例

最終確認日:2026年10月27日
AIフルエンシーとは?
AIフルエンシーとは、AIとともに効果的・効率的・倫理的・安全に働く能力のこと。英語では AI Fluency と書く。fluency は一般に、言葉をすらすらと使いこなせることを指す語だ。
冒頭の定義は、AIフルエンシーの枠組みを作った大学教授2人によるものだ(※1)。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートや Zapier など、使う主体によって説明は少しずつ違う(※2、※9、※10)。
オハイオ州立大学の取り組みは、AIの道具を使う力だけでなく、AIを理解して問い直し新しいものを生み出す力を学生に身につけさせることを目指す。発表の当時、副学長として学務を統括していたラヴィ・ベラムコンダ氏は、学生が専攻の分野とその分野でのAIの使い方の両方に通じた「バイリンガル」になると説明した(※3)。
AIフルエンシーの由来と広まった経緯
米国のリングリング芸術デザイン大学のリック・ダカン教授と、アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・コークのジョセフ・フェラー教授は、共同研究からAIフルエンシーの枠組み「AI Fluency Framework」を作った。枠組みの最初の版は、2025年1月に公開された。2人によると、枠組みは2023〜2024年の学年度から、両大学の授業や教員向けの研修を通じて形を整えてきた(※1)。
2人と Anthropic が作った自習用の講座は、2025年6月にアイルランドの全国フォーラムが公開した(※4)。同じ講座は、Anthropic も「AI Fluency: Framework & Foundations」として無料で提供している(※1、※5)。米国の大学の教育課程や、業務の自動化のサービスを提供する Zapier の採用の条件にも、同じ年にこの語が使われた(※3、※9)。
2026年には、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートが求人のデータからAIフルエンシーへの需要の伸びを示した(※2)。
AIフルエンシーの枠組みが挙げる4つの力と3つの関わり方
ダカン教授とフェラー教授の枠組みは、AIフルエンシーを4つの力に分ける。4つの英語の名前はどれも D で始まり、枠組みはまとめて「4Ds」と呼ぶ。それぞれの力は、さらに3つの細かい力に分かれる(※1)。
| 力 | 枠組みの説明 | 細かい力 |
|---|---|---|
| Delegation(委ねる) | 目標を描き、どの作業にどのAIの道具をいつどう使うかを決める | 目標と作業の把握、道具の把握、作業の割り振り |
| Description(伝える) | 目指す成果や作業の進め方を、AIに伝わるように説明する | 成果物の説明、進め方の説明、AIの振る舞いの説明 |
| Discernment(見極める) | AIの出力の質や妥当性、偏りを評価し、AIとの協働の進め方も見直す | 成果物の見極め、進め方の見極め、AIの振る舞いの見極め |
| Diligence(責任を持つ) | 倫理や法律の面に気を配り、AIを使ったことを明らかにし、AIで作ったものに責任を持つ | 作るときの責任、公開するときの透明性、世に出す前の確かめ |
枠組みは、人とAIの関わり方も3つに分ける。AIが人の指示した作業をこなす「自動化」、人とAIが一緒に考えて作業を進める「拡張」、人が設定したAIが先々の作業を代わりに進める「エージェンシー」だ(※1)。
AIフルエンシーに関する主な出来事・ニュース
- 2025年5月21日 Zapier、すべての新規採用者にAIフルエンシーを求めると発表:Zapier は、新しく採用するすべての人に、AIフルエンシーの最低限の水準を満たすことを求めるとした。
- 2025年6月4日 オハイオ州立大学「AI Fluency」の取り組みを発表:オハイオ州立大学は、2025年秋に入学する1年生から、すべての学部生の教育課程にAIの教育を組み込むと発表した。
- 2025年6月19日 アイルランドの全国フォーラム、講座「AI Fluency: Framework and Foundations」を公開:アイルランドで高等教育の教え方と学び方の向上を担う全国フォーラムは、フェラー教授、ダカン教授、Anthropic が作った自習用の講座を公開した。
- 2025年8月21日 Anthropic、AIフルエンシーの講座を3つ追加:Anthropic は、教員と学生に向けた3つの講座を、クリエイティブ・コモンズのライセンスで公開した。
- 2026年2月23日 Anthropic「The AI Fluency Index」を公表:Anthropic は、Claude.ai での会話を分析し、AIフルエンシーに当たる行動がどのくらい見られるかを測った報告を公表した。
- 2026年5月28日 Coursera、Anthropic の無料講座5つの提供開始を発表:Coursera は、Anthropic が教員、学生、非営利団体の職員向けを含むAIフルエンシーの講座5つを、Coursera で無料で提供し始めたと発表した。
- 2026年9月29日 マッキンゼー・グローバル・インスティテュート、米国の仕事と技能に関する報告書を公表:同研究所は、働き手が変化に適応し続けるための技能の一つに、AIフルエンシーを挙げた。
AIフルエンシーに関する事例・調査
Zapier は採用の条件にAIフルエンシーを加え、水準も引き上げた
Zapier は、2025年5月に、AIフルエンシーを新しく採用するすべての人の条件にした。同社によると、どの職種でも深い技術の知識が要るわけではない。求めるのは、AIへの好奇心と試してみる意欲、AIで仕事をどう伸ばせるかを戦略的に考える力だ(※9)。
同社は、AIフルエンシーを4つの水準で評価する。AIの道具に抵抗があり価値を疑う「Unacceptable」、目的を持ってAIの道具を使ったことがある「Capable」、AIを使って日々の仕事を高めている「Adoptive」、AIの戦略を率いて仕事の流れを作り直す「Transformative」だ(※9)。
2026年3月の第2版で、Zapier は最低限の水準である「Capable」を引き上げた。新しい水準では、候補者が中心の業務にAIを組み込んでいることを求める。一度きりのプロンプトではなく繰り返し使える仕組みを作り、質や効率に目に見える効果を出していることも求める(※10)。
同社は、応募、最初の選考、技能の試験、役員の面接の4つの場面で、AIへの姿勢、戦略、作る力、責任の4つの要素を評価している(※10)。
オハイオ州立大学は2029年卒から全員がAIに通じた状態を目指す
オハイオ州立大学は、2029年に卒業する学年から、すべての卒業生がAIに通じ、自分の分野でAIを責任を持って使えるようにするとしている。2025年秋からは、すべての学部生が必修のゼミで生成AIの基礎に触れ、1年生向けの必修科目にも生成AIの研修を組み込む(※3)。
Anthropic はAIフルエンシーの講座を公開し、対象を広げた
「AI Fluency: Framework & Foundations」は12回の講座で、学ぶのに3〜4時間ほどかかる。約70分の動画と多くの演習があり、技術やサービスに偏らない内容になっている(※4)。講座を終えると最終の試験を受けられ、修了証を受け取れる(※5)。
Anthropic は2025年8月に、教員向け、学生向け、AIフルエンシーを教える人向けの3つの講座を加えた。
3つとも、ほかの教育機関が手直しして使えるライセンスで公開している(※6)。2026年10月には、小規模事業者、製品開発に携わる人、創作をする人、幼児から高校までの教員などに向けた講座を Coursera で公開した。このうち小規模事業者、製品開発、創作の講座について、Anthropic は先に「AI Fluency: Framework & Foundations」で基本を学ぶよう勧めている(※8)。
2025年12月に出た枠組みの文書(第1.1版)によると、枠組みに基づく4つの講座の Anthropic Academy 版への受講の登録は、合わせて9万件を超えていた(※1)。Anthropic は2026年8月20日の発表で、講座をまとめた学びの場を「Claude Academy」として案内した。同社は、自社の新入社員の研修でも、この枠組みを教えているという(※12)。
米国の求人でのAIフルエンシーの需要は4年で約11倍という報告
マッキンゼー・グローバル・インスティテュートによると、米国の求人で、AIフルエンシーへの需要は2022年から2026年に約11倍になった。同じ期間に、学ぶ意欲や回復力、好奇心への需要は約3倍、適応力への需要は約5倍だった(※2)。
報告書は、AIフルエンシーを、変化に適応し続けるための5つの技能の一つに位置づける。AIフルエンシーは、ほかの4つの技能よりはるかに多くの職業で求められているという。ほかの4つへの需要がAIフルエンシーへの需要に追いつかなければ、雇う側は今のAIの道具は使えても次の変化に備えられない働き手を抱えるおそれがある、と報告書はみる(※2)。
やり取りを重ねる会話はAIフルエンシーの行動が多いという分析
Anthropic は、自社の Claude.ai の利用者の会話のうち、2026年1月20〜26日に何度もやり取りした9,830件を分析した。ダカン教授とフェラー教授の枠組みから24の行動を定め、そのうち会話に表れる11の行動があるかどうかを調べた(※11)。
分析した会話の85.7%で、利用者は最初の答えで終わらず、やり取りを重ねて結果を磨いていた。こうした会話では、ほかのAIフルエンシーの行動が平均2.67個見られ、やり取りを重ねない会話の1.33個のおよそ2倍だった。AIの考え方を問い直す行動は、やり取りを重ねる会話で5.6倍見られやすかった(※11)。
Anthropic の分析では、成果物を作る会話は確かめる行動が少ない
Anthropic が分析した会話のうち、コードや文書、アプリなどの成果物を作った会話は12.3%だった。こうした会話では、成果物を作らない会話より、利用者が目標をはっきり示す、形式を指定する、例を示すといった行動が多かった(※11)。
一方で、足りない情報に気づく行動は5.2ポイント、事実を確かめる行動は3.7ポイント、AIに理由の説明を求める行動は3.1ポイント、成果物を作らない会話より少なかった。Anthropic は、AIがよくできて見える出力を出したときこそ、立ち止まって正しさや抜けを確かめるよう勧めている(※11)。
AIフルエンシーの定義の違いと調査の限界
AIフルエンシーの定義は、使う主体によって違う。
| 主体 | AIフルエンシーの説明 |
|---|---|
| ダカン教授とフェラー教授の枠組み | 人とAIの新しい関わり方の中で、効果的・効率的・倫理的・安全に働く能力。4つの力に分ける(※1) |
| マッキンゼー・グローバル・インスティテュート | AIの道具や知的なシステムとうまく働く能力(※2) |
| Zapier | AIへの好奇心、試してみる意欲、AIで仕事をどう伸ばせるかを戦略的に考える力。4つの水準で評価し、2026年3月の説明では、AIへの姿勢、戦略、作る力、責任の4つの要素を見るとしている(※9、※10) |
講座の案内や求人で「AIフルエンシー」とあるときは、どの定義を使い、どの水準を求めているのかを確かめると良いだろう。Zapier のように、同じ会社でも求める水準を引き上げることがある(※10)。
Anthropic の分析にも限界がある。同社によると、分析した利用者は、AIに慣れた早い時期からの利用者に偏っている可能性がある。対象は1週間の Claude.ai での会話だけで、24の行動のうち会話の外で起きる13の行動は測っていない。行動どうしの関係は相関で、どちらが原因かは分からない(※11)。
AIフルエンシーに関連する用語
- 認知的オフローディング:頭を使う負担を減らすために、体の動きや外の道具を使って、課題に必要な情報の処理を変えること。AIに考える手間を任せる使い方の研究でも使われる語だ。
- エージェントスキル:仕事の手順や専門の知識をファイルにまとめておき、AIエージェントが必要なときに読み込んで使えるようにする仕組み。Anthropic が2026年10月に Coursera で公開した講座の一つも、この使い方を扱う(※8)。
- ケイパビリティ・オーバーハング:AIがすでにできることと、多くの人や企業、国がAIを実際に広く使って得ている価値の間にある差。
AIフルエンシーに関する出典
※1 Rick Dakan、Joseph Feller「The AI Fluency Framework: A Descriptive and Normative Model of Human-AI Interaction for Higher Education(Version 1.1)」(2025年12月、Higher Education Authority)
※2 McKinsey Global Institute「Workforce in motion: Skills and pathways to future jobs in the United States」(2026年9月29日)
※3 The Ohio State University「Ohio State launches bold AI Fluency initiative to redefine learning and innovation」(2025年6月4日)
※4 National Forum for the Enhancement of Teaching and Learning in Higher Education「Launch of New Open Course: AI Fluency – Framework and Foundations」(2025年6月19日)
※5 Anthropic「AI Fluency: Framework & Foundations」
※6 Anthropic「Anthropic launches higher education advisory board and AI Fluency courses」(2025年8月21日)
※7 Coursera「Anthropic launches five free courses on Coursera to help build AI fluency」(2026年5月28日)
※8 Coursera「10 free Anthropic AI courses launch today on Coursera, with more coming each month to help learners stay current」(2026年10月5日)
※9 Zapier「From AI-friendly to AI-first: How Zapier is transforming hiring and onboarding」(2025年5月21日)
※10 Zapier「One year later: Raising the AI fluency bar for every Zapier hire」(2026年3月31日)
※11 Anthropic「Anthropic Education Report: The AI Fluency Index」(2026年2月23日)
※12 Anthropic「Anthropic’s approach to teaching and learning AI」(2026年8月20日)




