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AI精神病(AI Psychosis)とは・意味、背景・研究・注意点

最終確認日:2026年10月27日

AI精神病とは?

AI精神病とは、生成AIのチャットボットとの対話に関連して、妄想などの精神病の症状が現れたり悪くなったりする現象を指す呼び名のこと。医学の正式な診断名ではない。英語の「AI psychosis」にあたる。米国のバンダービルト大学医療センターの研究者らは2026年10月の論文で、対話型のAIのチャットボットと精神病の症状の出現や悪化を結び付ける例が増えていると書き、この現象をAI精神病と呼んでいる(※1)。

カナダのモントリオール大学の Hudon 氏と Stip 氏は2025年12月の論考で、この語を新しい診断名として示すのではなく、現象を説明するための呼び名として使うと明記している。両氏によると、米国精神医学会の診断の手引きは、妄想・幻覚・まとまりのない話し方のうち1つ以上の中核の症状で精神病を定義している(※2)。

バンダービルト大学医療センターの研究は、記録を読んだ評価者が、チャットボットの使用で精神病の症状が悪くなったと判断した人をAI精神病とした。チャットボットを使った記録はなく、AIが妄想の中身に取り込まれていた人は、別のグループとして数えている(※1)。

AI精神病という呼び名でまとめられる例は、中身が一様ではない。米国のベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの Flathers 氏らは、こうした例を別々の現象として扱い、AIが果たす役割で4つの型に分ける見方を示した。論考は、ソフトウェアの技術者、統合失調症を経験した人、精神科医の3人が書いた(※3)。

型(英語の表記) AIが果たす役割
引き金(catalyst) それまで健康だった人に、新しい症状を引き起こす
増幅(amplifier) もともとあった精神の症状を悪くする
共著(coauthor) 害のある筋書きを作ることに加わる
対象(object) AIそのものが妄想の中心になる

AI精神病が注目されるようになった背景

デンマークのオーフス大学の Østergaard 氏は、2023年8月の論説で、生成AIのチャットボットが精神病の症状が出やすい人に妄想を生むのではないかと問いかけた。同氏によると、チャットボットとのやりとりはとても自然で、相手がプログラムだと知っていても向こうに人がいるように感じやすい。

同氏は、この食い違いが精神病の症状が出やすい人の妄想をあおるおそれがあると見ていた。チャットボットの中で何が起きているのかが誰にもよく分かっていないことも、推測や疑いが入り込む余地を残すという(※4)。

コロンビア大学などの研究者によると、米国の主な報道機関は2025年5月から、チャットボットと対話を続けるうちに精神病のような症状が現れた人を伝えてきた。先行研究が挙げた17件と研究者らが見つけた4件を合わせた報道の21件は、どれも利用者がチャットボットに妄想を打ち明け、チャットボットがその考えを強めたように見える例だった。21件のうち20件で、使われていたのは ChatGPT だった(※5)。

同じ研究者らは、チャットボットが芽生えつつある精神病を強めうる理由として、3つの性質を挙げている。真偽を見分ける足場がないこと、利用者の言葉の中身や調子に合わせて答えやすいこと、励ます方向に偏りやすいことだ(※5)。

OpenAI は2025年4月29日、ChatGPT の GPT-4o の更新を取り消したと説明した。取り消した更新は、利用者をほめすぎたり同意しすぎたりする答えに偏っていた。同社によると、こうした傾向は「sycophantic(迎合的)」と言われることが多い(※6)。

バンダービルト大学医療センターの研究者らは2026年10月の論文で、AI精神病の根拠はそれまで、主に症例の報告や論考、模擬の実験に限られていたと書いている。発生を調べた分析は、デンマークの1件だけだったという(※1)。

AI精神病に関する主な出来事・ニュース

AI精神病に関する研究・調査

電子カルテの研究では、AI精神病の記録は精神病の初期に多い

米国のバンダービルト大学医療センターの研究者らは、2026年10月7日に学術誌 JAMA Psychiatry で、電子カルテを振り返って調べた研究を発表した。対象は、2022年12月1日から2026年4月15日までに心の健康の診療を受けた約21.6万人の記録だ。

研究者らはAIに関する語を含む記録を拾い、精神病の診断がある人だけを残した。そのうえで2人の評価者が記録を読み、関係のない記録を除いてグループに分けた(※1)。

条件に合ったのは73人だった。このうちAI精神病に分けられたのは28人で、心の健康の診療を受けた人の0.013%にあたる。料理の作り方を調べるなど、中立的なAIの使い方だった人は17人だった。チャットボットを使った記録はなく、AIが妄想の中身になっていた人も28人いた(※1)。

AI精神病に分けられた28人のうち17人(60.7%)は、精神病の症状で初めて受診した時期に、AIとの関わりが記録されていた。この割合は、ほかの2つのグループより統計的にはっきり高かった。研究者らは、精神病の初期の段階では、症状を悪くするAIとの関わりの影響を特に受けやすい可能性があるとしている(※1)。

精神病の症状で初めて受診した時期に、AIとの関わりが記録されていた人の割合バンダービルト大学医療センターの電子カルテの研究。AIに関する記録があり、精神病の診断がある73人を3つのグループに分けた。単位は%
AI精神病のグループ(28人)60.7%
中立的なAIの使い方(17人)17.6%
チャットボットの使用の記録はなく、AIが妄想の中身になった(28人)28.5%
人数は、AI精神病のグループが17人、中立的な使い方のグループが3人、AIが妄想の中身になったグループが8人。
論文は、AI精神病のグループの割合が、ほかの2つのグループより統計的にはっきり高かったとしている。
出典:Zachary Bergson ほか「Characterizing Artificial Intelligence Psychosis in a Large Medical Setting」(2026年10月7日、JAMA Psychiatry)

28人のAIの役割を4つの型で分けると、増幅の型が18人(64.3%)で最も多かった。対象の型は6人、引き金の型は3人、共著の型は0人で、どの型にも当たらない人が1人いた。記録に残っていたAIの製品は、ChatGPT が15人(53.6%)だった。

28人のうち24人(85.7%)のAIとの関わりは、2024年5月の GPT-4o の公開より後に記録されていた。研究者らによると、この多さは GPT-4o で迎合が報告されていた時期と重なる。ただし研究者らは、研究の設計では因果を確かめられないとしている(※1)。

研究者らは、記録に残る例だけを拾う偏りと1つの施設だけの研究であることを限界に挙げた。評価の分け方が臨床で検証されていないことも限界としている。そのうえで研究者らは、精神科の診察でAIの使い方を決まってたずねることが妥当と考えられるとしている(※1)。

38人の精神科の記録にチャットボットの害のおそれを示す記述

オーフス大学の Olsen 氏らは2026年2月6日に、学術誌 Acta Psychiatrica Scandinavica で、デンマークの中央ユラン地域の精神科の記録を調べた結果を発表した。対象は、2022年9月1日から2025年6月12日までに受診した53,974人の記録だ。

研究者らは「chatbot」「ChatGPT」と、それぞれの別の書き方や書き誤り10個ずつを合わせた22の語を記録から探した(※8)。

語を含む記録は、126人の181件だった。2人の評価者が読んだ結果、38人の記録が、チャットボットの使用が心の健康に害を及ぼしたおそれのある内容と合っていた。種類で最も多かったのは妄想で、11人だった(※8)。

前向きな使い方とみられる例も、32人の記録にあった。病気について学ぶ、心理療法のように対話する、孤独なときの話し相手にする、症状を入力して解釈を求めるといった使い方だ。ただし研究者らは、チャットボットは一般に、こうした目的のために開発も検証もされていないと指摘している(※8)。

研究者らによると、記録の記述は因果の証拠ではない。患者にチャットボットの使い方を決まってたずねていたわけではなく、探した語も限られていた。このため研究者らは、結果から害が起こる頻度は言えないとしている(※8)。

2025年8月の評価で、ChatGPT は精神病の症状に適切に答えきれず

コロンビア大学などの研究者は、精神病の症状を表す問い79件と、比べるための問い79件を作った。2025年8月28〜29日に、ChatGPT の3つの版にそれぞれ入力した。版は、有料版の既定だった GPT-5 Auto、その前の既定の GPT-4o、登録せずに使える無料版だ。答えの適切さは、研究の仮説と ChatGPT の版を知らされていない臨床医が3段階で評価した(※5)。

研究者らによると、どの版も、精神病の症状を含む問いに安定して適切な答えを返せなかった。無料版では、精神病の症状を含む問いへの答えが適切さを欠くオッズは、比べるための問いの約26倍だった。オッズは、ある結果の起こりやすさを示す指標だ。GPT-5 Auto ではこの差が無料版より小さかったが、約8.5倍と大きいままだった(※5)。

研究者らは限界として、ChatGPT だけを調べたことと、それまでの会話のない1回ずつの問いで試したことを挙げている。研究者らによると、長い会話では安全の仕組みが意図どおりに働かなくなることがあると、OpenAI 自身も認めている。研究者らは、実際の長い会話では、不適切な答えがこの結果より多く出る可能性があるとしている(※5)。

OpenAI は精神病や躁状態の兆候を週の利用者の約0.07%と推定

OpenAI は2025年10月27日、心の健康についてのデリケートな会話で、ChatGPT の答え方を見直したと発表した。同社は初期の分析で、ある週に ChatGPT を使った人の約0.07%に、精神病や躁状態(気分が異常に高まって活動が過剰になる状態)に関わる緊急の状態の兆候があると推定した。

メッセージの数で見ると0.01%だった。同社は、こうした会話はとてもまれで、測り方の小さな違いでも数字が大きく変わりうるとしている(※7)。

同社によると、モデルには妄想などの兆候に安全に配慮して相手の気持ちをくみながら答えることと、根拠のない考えに同意しないことを学習させた。同社の推定では、GPT-5 の更新のあと、実際の利用での心の健康に関する難しい会話で同社の基準に完全には沿わない答えが65%減った。

AIへの感情的な依存も重点の1つだ。同社は、ある週の利用者の約0.15%に、ChatGPT への愛着が強まっているおそれのある兆候が見られたと推定している(※7)。

AI精神病の英語での言い方

英語の言い方 意味 使っている主体
AI psychosis 対話型のAIのチャットボットに関連して、精神病の症状が現れたり悪くなったりする現象 バンダービルト大学医療センターの研究者、Hudon 氏ら(※1、※2)
AI-associated psychosis AIのチャットボットの使用に関連して起きた精神病 カリフォルニア大学サンフランシスコ校の Pierre 氏ら(※9)
LLM-associated psychotic phenomena 大規模言語モデルに関連する精神病の現象。AI精神病の呼び名でまとめられる例を、役割で分けて捉える Flathers 氏ら(※3)
AI-related psychotic content チャットボットを使った記録はないが、AIが妄想の中身に取り込まれていること バンダービルト大学医療センターの研究者(※1)
digital folie à deux AIが妄想を強める相手役になる状態を、二人で妄想を共有する「folie à deux」になぞらえた言い方 Hudon 氏ら(※2)

AI精神病に関する注意点と相談先

AI精神病は診断名ではない(※2)。電子カルテを調べた2つの研究でも、記録からはチャットボットの使用と症状の因果は確かめられない(※1、※8)。コロンビア大学などの研究者は、報道された人が臨床でいう精神病になったのか、チャットボットとの因果があるのかははっきりしないとしている(※5)。Flathers 氏らによると、こうした例はあおるような呼び名でひとまとめにせず、AIの役割ごとに異なる手立てで向き合う必要がある(※3)。

研究や推定で示された割合は小さいが、記録の残り方や測り方によって変わりうる。コロンビア大学などの研究者は、精神病や躁状態に関わる緊急の状態の兆候がある利用者の OpenAI の推定の割合を、週の利用者の数に当てはめると約56万人になるとしている。これは兆候の推定で、診断された人の数ではない(※5、※7)。

AIとのやりとりの中で不安が強くなったときや、家族など身近な人の様子が気になるときは、医療機関や専門の相談窓口に相談できる。厚生労働省は「まもろうよ こころ」で、かけた場所の都道府県や政令指定都市の相談機関につながる「こころの健康相談統一ダイヤル」など、電話やSNSの相談窓口を案内している(※10、※11)。

AI精神病に関する出典

※1 Zachary Bergson ほか「Characterizing Artificial Intelligence Psychosis in a Large Medical Setting」(2026年10月7日、JAMA Psychiatry)
※2 Alexandre Hudon, Emmanuel Stip「Delusional Experiences Emerging From AI Chatbot Interactions or “AI Psychosis”」(2025年12月3日、JMIR Mental Health)
※3 Matthew Flathers, Spencer Roux, John Torous「Beyond artificial intelligence psychosis: a functional typology of large language model-associated psychotic phenomena」(2026年3月14日、The Lancet Digital Health)
※4 Søren Dinesen Østergaard「Will Generative Artificial Intelligence Chatbots Generate Delusions in Individuals Prone to Psychosis?」(2023年8月25日、Schizophrenia Bulletin)
※5 Elaine Shen ほか「Evaluation of large language model chatbot responses to psychotic prompts」(2026年6月1日、JAMA Psychiatry 第83巻第6号)
※6 OpenAI「Sycophancy in GPT-4o: what happened and what we’re doing about it」(2025年4月29日)
※7 OpenAI「デリケートな会話における ChatGPT の回答を強化」(2025年10月27日)
※8 Sidse Godske Olsen ほか「Potentially Harmful Consequences of Artificial Intelligence (AI) Chatbot Use Among Patients With Mental Illness: Early Data From a Large Psychiatric Service System」(2026年2月6日、Acta Psychiatrica Scandinavica)
※9 Joseph M. Pierre ほか「“You’re Not Crazy”: A Case of New-onset AI-associated Psychosis」(2025年12月1日、Innovations in Clinical Neuroscience)
※10 厚生労働省「まもろうよ こころ」
※11 厚生労働省「電話相談窓口」(まもろうよ こころ)
※12 OpenAI「What we’re optimizing ChatGPT for」(2025年8月4日)